余命1日の花嫁①

「熊谷さん、うちの娘と結婚してくれないか?」

「え?」

 急なことで訳が分からなかった。


「すまんすまん、娘が君のことがものすごく好きなんだ」

「は、はぁ…」

 自分は公園のベンチに座っているといきなりそんなことを言われたのだった。

正直何がなんだかよくわからなかった。


「頼む、娘は余命があと少しなんだ。現代では解明されていない謎の病気にかかっている」

「え…?」

 とりあえず話だけでも聞くことにした。


「ちなみに娘さんの余命はあとどのくらいなんですが?」

「………。」

 黙ってしまったようだ。口を開くまで待つことにする。


「実はな、今日までだ」

「え!?」

 自分は目ん玉が飛び出そうになった。


「今日って言ったらもうあんまり時間がないじゃないですか!」

「そうなんだ。今は午前9時ぐらいだから余命はあと半日ちょっとしかない。とにかく急いでいるんだ! 早く娘に会ってくれ! 車は用意してある!」

 なんと公園の外にリムジンが用意されていた。かなりのお金持ちだということはすぐに分かった。


「僕行きますよ」

「助かる」

 とりあえず流されるままに自分ははリムジンに乗って病院に来た。


「娘は病室で寝ている。もうあまり時間もないので病室で結婚式を行うことにするよ」

「なるほど、急ですね」

「まあでも結婚式と言っても正式な結婚式じゃないから、あんまり気を張り詰めすぎなくてもいいぞ」

「分かりました」

 そりゃそうだ。婚姻届とか何も書いていないのだから。とりあえず形式だけの結婚式を行ったのだった。


「君か…」

「………。」

 僕のことが好きだという女性がベットに眠っていた。ものすごい美少女だった。


「ちょっと良いですか? お父さん」

「なんだ」

「娘さんはいったいおいくつなんですか?」

「18歳だ」

 これはとても若い。ちなみに自分は27歳でまさに社会などでは脂の乗っている歳だろう。

 だが無職だ。


「何で娘さんは僕のことを好きになったんですかね?」

「そうだな、それはワシにも分からん。娘は何で君のような者を好きになったのかね」

「はっきり言ってくれますね」

「ハハハ、すまんすまん。でも娘はいつも君のことを楽しそうに話しておったな」

 なぜだろうか? 自分はぜんぜんその美少女になにかをした訳じゃないのに。とりあえず室内での簡素な結婚式はなんやかんやで終わったのだった。

 もう気がつけば外も暗くなり始めていたのだった。


「お父さん僕はどうすればいいのでしょうか?」

「すまないね、今日だけはずっと娘のそばにいてやってくれないか」

「分かりました」

「娘の命は夜中の12時までぐらいかな。12時になったら私はまた来るよ。あとは二人だけの時間にしたい。娘もそれを望んでいるはずだから」

 美少女のお父さんは病室から出て行ってしまった。


「さて僕達二人っきりになっちゃったな。どうして君は僕のことを好きになったんだ?」

「………。」

 当たり前だが話しかけても何も返答がない。


~つづく~

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