捕まったら1000万円取られる鬼ごっこをした①

「はっはっはっ…。もう勘弁してくれー!」

「まてまてー!」


 保育園児と全力で鬼ごっこやっていた。それは保育園に職業体験に行った時の話だった。


「お願い遊んで遊んで!」

「うわー!」


 自分はあっという間に子どもたちに囲まれてしまうのであった。


「しょうがないなぁ。じゃあみんなで何して遊ぶ?」

「鬼ごっこがいい!」

「俺たちは絶対に負けないぞ!」


 サッカークラブに入っている子どもは自信満々にそういった。


「まあなんでもいいや、とりあえず鬼ごっこやろうか」

「よし」


 そう言うと、保育園児のみんなは1ヵ所に集まってひそひそと話し出す。

 なんだなんだ?

 そしてまた保育園児達が戻ってきたのだった。


「じゃあお兄さんは一人で逃げてよ」

「え?」

「僕たち私たちが全員でお兄さんを捕まえるから」

「いいよ!」

「もしも負けたらお金ちょうだい」

「ん? なんで?」


 保育園児たちがお金を要求してくると思っていなかった。でも自分は何も考えずにいいよと答えてしまった。

 後で後悔すると知れずに。


「それじゃあお兄さんは逃げてね! 僕たち10秒たったら捕まえに行くからね!」

「分かったよ」


 そして自分は素早く逃げた。

 こんなのチョロいチョロい! 余裕余裕! 保育園児は多分10人くらいはいただろうか?

 数を考慮しても逃げれる自信があるね


「そろそろ10秒たったかな? よしみんなで捕まえにいくぞ!」

「みんなお兄さんを捕まえたら一人ずつ100万円もらえるぞ!」

「本当か! じゃあやるしかないな!」

「あわわわわわ」


 そんな話は聞いていなかった。保育園児のことだから可愛い100円とか10円とか、それくらいの値段かと考えていた。

 最近の保育園児は随分と進んでいるんだな。どこかでお金の教育でも受けているのかな? 知らんけど。

 でも保育園児に捕まったら本当に100万円を払わないといけないのだろうか? まあ大人と子供だから逃げ切れるよな?大丈夫だよな?と思った。

 どうやらその考えは甘かったようだ。


「行くぞ!」

「おー!」


 余裕だと思ったら保育園児たちは陣形を組んで来た。自分を囲むように10人で捕まえようとしてきた。


「嘘だろ…?」


 可愛い顔してなかなかやることはえげつなかった。時間が経ってくると同時にどんどん逃げ場が少なくなっていく。

 このままだと本当に捕まってしまうかもしれない。

 保育園児のくせしてめちゃくちゃ頭の良い戦略を使ってくるなぁ。


「これが100万円の力か」

「みんな、絶対に逃がすなよ!」


 とにかく絶対に捕まるわけにはいかないので、とりあえず自分は保育園児に捕まらないように保育園児の間のスペースを全速力で駆け抜けてなんとかピンチを脱した。

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