村の掟 「戸締りは絶対に忘れるな」②(終)
「んっ…ん?」
そして次の日がやってきた。すっかり眠ってしまっていたようだ。
「はっ!」
自分はすぐに家族のことが頭に過った。
「みんな大丈夫か!?」
自分は屋根裏から、こっそりと降りて家族の安否を確認しにいく。どうやら、やつらとかいうのはいなくなったらしい。
だが、家族が誰一人として家の中にいなかったのだ。
「ど、どうしよう。やっぱり自分のせいなのか…」
自分はもうどうすればいいのか分からず混乱していた。
「やばいやばいやばい…。なんで誰もいないんだ」
自分一人を残して家族は全員消えてしまった。間違いなくやつらに連れて行かれたのだと思う。
自分は急いで村の人間に伝えることにした。
「大変だ!」
「どうした坊主?」
「俺の家族が全員消えちまったんだよ!」
「そりゃ大変なことじゃねえか。一体何があったんだ? とりあえず何があったのか聞かせてくれよ」
「実は昨日戸締まりを忘れて、黒い影のような変な人間が来たんだよ」
そう言うと相手は急に口数が少なくなった。
「おい坊主、その話は本当なのか?」
「ほ、本当なんだよ。自分は屋根裏に隠れて何とか生き残ったんだよ。そして次の日に家の中を探しても誰もいないんだよ」
「そ、そうか。とりあえずお前は家に帰ってろ。絶対に家から出るんじゃないぞ! 絶対に家から出るなよ!」
釘を刺されてそう言われた。一体何なんだろう? 自分は訳が分からなかった。そして戸締まりを忘れたという情報は村の人たちに一気に拡散された。
「家の中にいろって一体どういうことなんだ?」
とりあえず村の人の言う通りに家の中にいた。すると何か変な異変を感じる。なんだか家の周りから気配がするのだ。
自分は窓から覗いてみると村人たちが自分の家を囲んで松明のようなものを持っている。
次の瞬間、松明を投げて自分の家を燃やし始めていた。
「なんで! どうしてなんだよ!」
「どの道お前はもう生きていてはいけないのだ! お前が生きている限りお前の家族は影となってこの村にやってくるからだ。そして家族は今どこにいるか分かるか?」
「え?」
「お前の家にいるんだよ! 昼間はそこを住み家として今晩この村は襲われる! だからお前もろともこの家を燃やすしかないのだ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! それはないだろう!」
家に火がついて、どんどん火が燃え上がっていく。
「ちょっと待って! 助けてよ!」
「ふざけんじゃねぇ! そもそもお前が悪いんだろう! なんで戸締りを忘れたんだ! 俺たちだって本当はこんなことしたくねえんだよ! でもなあ、お前が生きている限り奴らは必ずやってくる」
「そ、そんなぁ…。冗談だろう…?」
「冗談じゃねえよ! こんなこと冗談でやってると思ってんのか!」
「熱い…。熱いよ…!」
とうとう火が自分の体にもまとまわりついてきた。
「痛いよ! 熱いよ!」
「ううっ…」
「みんな、泣くんじゃねぇ…! 今日のこの経験を絶対に無駄にするなよ…。帰ったらちゃんと戸締まりは忘れるんじゃねぇ! じゃないと俺たちもこうなるかもしれねぇんだぞ…。分かったかぁ!」
「はい…!」
「うおおおおお!」
自分はそのまま家とともに焼かれてしまったのだった。
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