サッカー星人が支配する世界

「あいつ、銀河系軍団のジダンのことを知らないから逮捕されたみたいよ」

「大変だな。そりゃジダン知らないなら逮捕されてもしょうがないよな」


 この世界ではサッカー選手の全ての経歴を知っていないと殺されたり逮捕されてしまうらしいのだ。

 有名な選手だけでなく、あんまり有名じゃない選手も知らなければならない。だからみんなあんまりサッカーの話はしていない。

 サッカーの話をすることこそが命取りになるからだ。もしもサッカー選手の経歴を知らないとバレてしまったら、問答無用で逮捕されてしまう。

 この世界はかなり厳しいのだ。サッカー選手の経歴は一般教養みたいなものとみなされている。

 それもこれも全部この世界を支配しているサッカー星人のせいなのだ。


「お前らに本当のサッカーを教えてやる!」

「やめろ! やめてくれぇ!」


 奴らが襲来してからすべてが変わってしまった。奴らはサッカーに関することだったら容赦がないのだ。

 サッカーに関することで死者も出ているという話をしたが、それも極秘情報なので結局は風の噂に過ぎない。

 だが、サッカー星人がやってきてから不審死が後を絶たない。サッカー星人が関与している可能性は高いのだろう。


「クソ! なんでジダンを知らないだけでこんなになっちまったんだよ!」

「お前、ジダンの経歴も知らないとか万死に値するぞ! それでもお前はサッカー星に住む人間なのか?」

「何がサッカー星だ! ここは地球だ! 俺達の地球を返してくれ!」

「お前、あまり舐めた口を聞いてくれるなよ? 今は我々サッカー星人がこの世界を支配しているということを忘れていないよな?」

「何がサッカーだ! サッカーなんて嫌いだ!」

「サッカーを侮辱するやつは万死に値するぞ ! 口を慎め!」

「ふんだ!」

「おい」

「はい、なんでありますか!」

「この犯罪者を牢屋にぶち込んでおけ!」

「分かりました」

「嫌だ! やめてくれ! うわあああ!」


 ジダンをあまり知らなかった人はサッカー星人の兵士に投げ飛ばされて、そのまま牢屋にぶち込まれたのだった。


「さあお前ら、今日もバリバリ働くぞ!」

「イエッサー!」

「各家庭を訪問してサッカーの問題を出してこい! とりあえずインターホンで玄関までを引きずり出すんだぞ! そうすれば住人は絶対クイズに答えなくてはならない状況に追いやられる!」

「イエッサー!」

「そうすれば、一気にポイントが稼げてノルマ達成というわけだ! さあみんな、訪問してこい!」

「イエッサー!」


 サッカー聖人達はそのまま各家庭へと散らばって行った。


「サッカーを知らぬ者はどんどん処罰を与えていかなければならない」


 そしてまた一人被害者が出ることになる。

 ピンポーン!


「すいませーん、宅急便です」

「はーい」


 しかし、玄関を開けるとそこにはサッカー星人の訪問者がいた。


「え…」

「さて問題です! ジダンの経歴をすべて答えよ」

「そんなの知りませんよ!」

「はい君、逮捕ね」

「うわー!」


 そのまま捕まってしまった。


「ちょっと、何でこんなにサッカーを知らない人ばっかなの? これはもう学校教育全てをサッカーに関することにしないと駄目じゃないか」


 サッカー星人は怒っていた。


「歴史の教科書は全てサッカー選手に変えなくてはならない! 教育を全てサッカーにする必要がある! サッカー以外この世界にはいらないのだ!」


 これがサッカー星人に支配された世界だ。あなたはこんな世界でも生きていけますか?

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