空飛ぶサメとペンギン
「どうしてー!? なんでー!?」
自分は気が付くとペンギンになっていたのだった。なんかくちばしが付いていて足が短くなっていた。
手をパタパタと羽ばたかせても飛べない。
「やっぱりペンギンだー!」
今は氷の上をちょこちょこと歩いている。周りには自分と同じようなペンギンがたくさんいた。
自分はお腹が空いたので魚を取りに海の中へとダイブした。まだペンギンになったばかりだけど、本能からなのか普通に海の中を泳ぐことができた。
「お腹空いたなー。お魚さんいないかなー? え…?」
魚を探している時だった。そこには魚ではなくサメがいた。それも一匹だけじゃなかったのだ。
大集団でサメがいたのだ。
「まずいまずいまずい! 早く海から出なきゃ!」
ペンギンになった自分はすぐに海から出ることにした。
「こ、これでなんとか助かったー」
一安心しながら、海を望み覗き込んでいた。
「悔しかったら陸上に上がって来いよ! お尻ペンペーン! ペンギンだけにね! プププ」
だが恐ろしいのはここからだった。なんと海から何かが出てきたのだ。
「え、なんで…? こんなの聞いてないよ…」
そこにいたのは完全にサメだった。サメが空を飛んでいたのだ。完全に予想外だった。
「バクバクバクバク!」
「キャー!」
「助けてー!」
「み、みんな…」
そして仲間のペンギンがパンダ食べられていく。
「やばいやばいやばい…! 自分も逃げなきゃ!」
ペンギンの自分はサメに食べられないように一緒にいる仲間を押しのけてでも一心不乱に逃げた。
「あー、パクパクうめー」
「キャー! 食べられたー!」
サメは大きな口を開けて逃げ惑うペンギンを次々にパクパクと食べている。しかもものすごいの吸引力でまるで掃除機のようにペンギンが次々とサメの胃袋へと吸い込まれていった。
「こっちにきたー!」
「お前も食ってやるサメー!」
そしてとうとう自分もサメに狙われて食べられる。サメの胃袋へと入ってしまうのだった。
サメの胃袋の中に入るとたくさんのペンギンがブルブル震えて怯えていた。
「こ、怖いよー」
「助けてー」
このままだとみんな消化されるのを待つのみだった。
サメはよく噛んで食べなかったらしくみんな無事だけれど、このまま待っていてもいずれはサメの胃の中で溶かされてサメの栄養になってしまうだけだ。
「み、みんな!」
「な、なに…?」
「ここから一緒に出ようよ!」
ここはみんなで一致団結してサメの体内から出ることにした。作戦はいたってシンプルだ。
みんなのクチバシで一斉にツンツンしてサメの胃袋に刺激を与える。そして吐かせるという方法だ。
「やるぞー!」
「おー!」
みんなで一斉にサメの胃の中でくちばしで胃の壁につき始めた。
「な、なんだ!? 気持ち悪い…。おえー!」
これが見事成功した。サメは豪快に吐き出して胃袋からみんな出ることができた。
「やったー!」
「万歳!万歳!」
他のサメに食べられたペンギン達も同じ方法でサメの中から出てきた。
「こ、こんなの聞いてねえサメー! 逃げるサメー!」
サメ達は泣きながら海の中へと帰っていった。
「僕たちはみんな生き残ったぞ!」
「やったー!」
自分はまだペンギンになったばかりだけど、仲間と一致団結して生き残ったという経験はとても良いものになったと思う。
「よし、これからペンギン社会に馴染んでいくぞ!」という時だった。
「え…?」
自分は気がつくと人間に戻っていたのだった。そしていつもの日常生活に戻っていた。
とても不思議な感覚だった。でもあの経験を夢とは思わない。自分はちゃんとペンギンの一員だった。
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