おばあさん、助けなきゃ良かった

学校に行く途中で道端で困っているおばあさんに出会ったのだった。

「どうしたんですか?」

「いやー、ちょっとね。腰を痛めちゃってね、いてて…」

「そうだったんですか、じゃあ僕が荷物を運ぶの手伝ってあげますよ」

「そうかい、わるいねぇ」

 自分はおばあちゃんの荷物をおばあちゃんの家まで運んであげた。


「いやー本当にありがとうね」

「いえいえ」

「そうだ、ちょっとお茶でも飲んで行かないかい?」

「すいません自分急いでいるので」

「そうか、残念」

「それではこれで」

 その日はそのおばあさんと別れたのだった。


次の日、また同じ道を通っている時のことだった。

「フレーフレー頑張れ」

「ええ!?」

 昨日の腰を痛めたおばあさんがチアガールの格好をしていた。しかも仲間まで引き連れてダンスをしていたのだった。

 自分はものすごく応援されていた。これはもしかしたら昨日のお礼にという意味を込めてみんなでチアガールの格好をしながらダンスをしているのかもしれない。

 ただ、まあなんとも言えない気持ちになってしまった。なんせ、よぼよぼのおばあさんにこんなダンスをさせてしまったことを申し訳ないなと思うのであった。

 それにあんなチアガールの格好をしてボンボンを持ってダンスしているなんてきっと恥ずかしいに違いない。

 本当に自分はなんてことをさせてしまったんだろうと思ってごめんなさいと一礼をしてその場を去っていったのだった。


そして次の日

「フレーフレー頑張れ」

「ええ!?」

 今度はさらに仲間が増えてチアガールのダンスをしていたのだった。おばあさん、腰が弱いのにまあよく頑張るなあという感じだった。

 あんなに激しいダンスをして腰が悪くなってしまったら、一体どうするのだろうか?

 本当に申し訳なく思っている。というよりもなんだか自分は見ていて恥ずかしい気持ちになってしまった。

 しかもなんか自分の名前がバレてしまっているのだ。


「たかしくーん! フレーフレー!」

「もうやめてくれぇー!」

 自分の名前はたかしというのだが、いつおばあさんにたかしという名前がばれてしまったのだろうか?

 しかも、たかし頑張れ!という横断幕まであった。ちょっとこれは気合を入れすぎなんじゃないかなという感じだ。

 自分は小走りでそこから逃げる。


「たかしくーん! フレーフレー!」

「ええなんでー!?」

 おばあさんたちも一緒になって走ってきたのだった。そして横断幕も一緒に移動していた。

 たかし頑張れ!という文字が本当に恥ずかしくてしょうがなかった。いったい自分が何をやったというのだ。

 これは何かの罰ゲームなのだろうか? 学校に着くと校舎前で、たかし頑張れ!という横断幕があってとても恥ずかしい思いをしながら登校した。

 そして自分はもうこれからは腰の弱いおばあちゃんを助けるのはやめておこうということにしたのだった。

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