40年間スリープ

「うわーねみぃ~」


 部活から帰ってきて眠たくなったので、ちょっとだけ目を瞑った。どうしても眠気に耐えることが出来なかったのだ。


「う…うぅ…今何時…? え…」

 起きると時間が40年間も飛んでいたのだった。これは何かの悪い夢だと思ったがどうやら現実らしいのだ。

 ただの悪い夢だったら良かったのにと思う。


「どうなってんだ? 何もかも違うじゃないか」


 40年後の世界は40年前の世界と比べると何もかもが変わっていた。まず自分の知っている人が誰一人としていなくなっていた。

 今頃、友達は全員おじさんおばさんになっているのだろうか。もう近所には知ってる顔の人は誰も見当たらない。

 考えたくないがもう死んでいる人もいるかもしれない。そして家族はもうとっくにこの世からいなくなっていた。

 すごく寂しい。


「どうして自分だけがこんな目にあうんだよ…。クソォ!」


 知っている人がいなくて1人取り残されるというのがこんなにも悲しいものだったとは思いもしなくかった。

 後は街並みも随分と変わったような気がする。目の前では車が空を飛んでいたりしている。


「ハイテクだなー」


 多分だけれど自動運転というやつなのだろう。随分と便利になったものだな。自分も自動運転の車に乗ってみたいなと思った。


「いいなー」


この時代に生まれた子供が本当に羨ましいよ。寿命もまだまだあって最新のテクノロジーに触れられるんだから。

 「それに比べて自分は…」と言っても、自分は眠った時から年齢がほぼ変わっていないので似たようなものなのかもしれないな。

 そのあと自分は消えた40年間の失くしてしまったものを探すかのように街をひたすら歩いて見て回った。

 たしかに街は良い方向に変わったのかもしれないけれど、自分の知っている建物などの無くなって欲しくなかったものは、ほとんど無くなってしまっていた。

 馴染みの映画館もスーパーも何もかもが無くなっていた。時の流れは残酷だ。40年間を本当に失ってしまったんだなと痛感した。


「ああ、これからどうやって生きていこうか」


 とりあえずはホームレスをしながら生きていくしかないようだ。その日からはゴミを漁って食べ残しを探して何とか空腹を紛らわす生活を始めた。

 本当は自分が生まれ育った街だけど、まるで異国の地にやってきているようだ。

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