未来の自分からの助け船

 自分は災害で家もお金も何もかも全てを失ってしまった。これからの人生に暗雲が立ち込めていた。

 住む場所すらもなくなって危ないので避難を強いられたのだった。避難場所へ向かっている時のことだった。

 知らない人が声をかけてきた。


「おーい! お前何も持っていないんだろう?」

 この人はいったい誰なんだろう? それにしてもなんて失礼なやつなんだと自分は思った。

 普通いきなり何も持っていないだろう? なんて聞くだろうか。


「あなたは誰なんですか!」

 自分は若干キレ気味にそういうのだった。


「いやそれは言えねえよ。てか、お前怒ってるだろ。あまり怒りすぎるとハゲるぞ」

 何から何まで本当に失礼な奴だ。自分は今すぐに目の前のやつをぶん殴ってやりたい気持ちだった。

 それにしてもなんで自分は怒っているとばれたのだろうか? そんなに顔に怒っているという態度が出ていたのだろうか?


「とにかくどいてください! もうそこを通るんで!」

「いや待てよ、避難する時に何かと暇になるだろうからこれを持って行けよ」

 そう言われて変なプレイヤーをもらったのだった。


「なんだこれ?」

「じゃあな」

 そう言うと知らない人がかっこつけてどこかへと消えていってしまった。あの変な奴は一体誰だったんだろうか? 

 そもそも何で自分が避難場所に行くと知っていたんだろうか?


「まぁいいか」

 自分はそのまま避難所へと向かって行ったのだった。そして時が過ぎて夜になっていた。

 暇になった時に朝にあった人のこと思い出していた。


「そういえば朝に変な人間から音楽プレイヤーみたいなのもらったな」

 音楽プレイヤーに何かの音楽が入っているのかなと思って中身を見ていた。中には音楽が入っていないようだが、代わりに動画が3つ入っていた。

 自分はどうせ暇だからと思って早速動画を見ることにした。


「ええ、まずは動画を見てくれたことに感謝する」

「うげっ…」

 さっきの変なやつが出てきた。本当にいつ見てもムカつく野郎だなと思った。


「信じないかもしれないが俺は未来の君だ。君を助けたくて俺は未来からわざわざこの動画の入った音楽プレーヤーを持ってきた」

「は?」

 信じられなかった。


「滞在時間が短いのには訳がある。だからすぐに帰った」

「ふーん」

「とにかくだ、動画の通りに動いてくれさえすれば、それで君はまた元の生活に戻れる」

「まじか」

「いやそれ以上の生活を望めるだろう」

 それにしても本当に未来の自分とは信じがたい。正直全然顔が似てないし、なんかうさんくさいし若干ハゲてると思ってしまった。

 まあもう少しだけ我慢して見てみようと思った。


「君のことだからまだ自分の事を疑っているだろう。君にしか知らない秘密は俺は全部知っている。それで絶対に信じてくれるだろうな」

「え?」

「まず部屋のベットの下にあれが隠してあるだろう」

「え!?」

 これはヤバイと思った。この男の言っていることはすべて当たっている。


「あと押し入れの奥にはオ…」

「うわああ!」

 恥ずかしくなって、すぐに音楽プレーヤーの電源を消したのだった。次の瞬間に自分は川へと走り出していた。

 そして音楽プレイヤーを川へと投げたのだった。


「人生は冒険や! やっぱり人生は自分自身で何とか変えていかないといけないよな! 知らない人の言うことは無視しよう! 明日から頑張るぞ!」

 自分は朝日に向かって走り出していた。なんだか走り出したくなった。気のせいなのだろうが自分の顔が熱くなっているような気がした。

 結局その後、音楽プレイヤーはどこかへいってしまったので自分が元の生活に戻れることはなかった。

 そして、それ以上の生活を送ることすらもできないのであった。つまり底辺。

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