他人の子供になる不思議な体験
「おぎゃああ!」
なんとも不思議な体験をした。大人の自分が他人の家の子供になった体験をしたのだ。
気がつくと体がみるみる縮んで知らないお父さんとお母さんの子供としてそこで生活することになった。
まず家の中の匂いが全く違っていた。やっぱりそれぞれの家庭にそれぞれ特有の匂いというものがある。
そしてご飯も今まで食べていたご飯とは少し違っていた。初めての味に戸惑ってたからかご飯が喉を通って行かなかった。
「あらあら大丈夫?」
「ゆっくり食べるんだよ」
「おぎゃあ!」
でも知らないお父さんとお母さんが心配しながら自分を見ているので、そこはちょっと泣きながら食べた。
食べた後には「えらいえらい」と言ってもらって頭を撫でてもらえた。そこはとても嬉しかった。
後、子供になって一番びっくりしているのはみんな大きくなって見えたことだ。自分自身の体が縮まってしまったため、何もかもが大きく見える。
何とも不思議な感じがした。以前の自分は180cmくらいはあったのでかなり景色が変わって見える。
週末にはお父さんとお母さんと一緒に車でどこかへと出かけることになった。
「さぁ出発だ!」
「おぎゃあ!」
以前の家庭だと週末にどこかに行くという習慣は特になかった。それに車もなんだか以前の家族の車と違って変わった匂いをしていた。
いろんなことが違っていてとても面白いなと思った。
「おいどうした? 元気ないのか?」
「大丈夫よね?」
「おぎゃあ!」
やっぱり知らないお父さんとお母さんは心配しながら自分のことを見ている。あんまり心配はかけたくないなと思った。
頑張って早くこの家庭に慣れようと頑張った。でも今回の週末の旅行をはちょっと楽しかった。
今までにやってこなかった経験だったのでなんとも新鮮な感じがした。
「いやー今回の週末旅行も楽しかったな」
「そうね」
「おぎゃあ!」
やっぱり1週間に1回ぐらいこんな贅沢をするのもありなのかなと思った。知らないお父さんとお母さんだけど自分が喜んでいるところを見て笑っていた。
それを見て自分も少し嬉しくなった。けれどもタイムリミットは迫っている。そろそろ本当の自分になる時が来ていた。
だが、知らないお父さんとお母さんはそんなことは知る由もなかった。なぜなら自分は小さい子供に取り憑いているような感じだからだ。
この一週間が終われば、元の自分の体へと戻っていく。そして最後に週末の旅を終えて家に帰宅し、みんなで川の字になって寝ていた。
「明日も良い1日になるといいな」
「そうね」
「おぎゃあ!」
自分は慣れない1週間を過ごしたけど、楽しかったと思った。そしたら自然と涙がポロポロと出てきた。
そしたら知らないお父さんとお母さんは自分の事を両サイドから抱きしめてくれた。
「大丈夫だぞ」
「そうよ、お父さんとお母さんが付いてるからね」
「おぎゃあ…」
そして自分もいつのまにか抱き合って眠ってしまっていた。そして次の瞬間、目を覚ますといつもの日常に戻っていた。
小さかった体も元の180cmに戻っていたのだった。なんともあっけない1週間だったなーという感じだった。
でも心の中がポカポカと暖かく感じたのだった。
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