憧れのミュージシャンを目指して…

 僕はファンの子に「僕もあなたみたいなミュージシャンになります!」と言われたことがある。

 その時は何も気に留めていなかったけど、一応「じゃあ君がもしもミュージシャンになったら僕と一緒に演奏しよう」という約束をした。

 そのファンの子も「うん!」と言って指切りをした。そのファンの子は当時10歳くらいだっただろうか?


 それから10年ぐらいの年月が経った。あの子は今どうしているのだろうか? それにしても最近、若者の間でめちゃめちゃ人気のミュージシャンがいた。

 そのミュージシャンに圧倒的な才能があるっていうのはミュージシャンの自分からしたらすぐに分かった。

 なんて言うか曲を聴いているだけで情景が浮かんでくるほどなのだ。このめちゃくちゃ人気のミュージシャンは誰なんだろうなーって思って調べてみた。


「ふむふむ…」

 どうやら20歳ぐらいとまだまだ若い。若くて成功しているなんてすごい。20歳当時の自分はまだまだミュージシャンのひよっこだった。

 そんなことを考えていたら誰からなのか分からないメールが来たのだった。そこには「僕、夢を叶えました! 一緒に演奏してください!」と書かれていた。

 そこには写真が二枚貼ってあった。子どもの頃と今のとで。


「ん? どっかで見たことがあるな…。あー!」

 なんと、その送り主は昔に僕はミュージシャンになると約束をした子だった。まさか本当に自分との約束を守るなんて驚いた。

 しかもさらにすごいのが最近人気のミュージシャンがまさに昔に約束した子だったのだ。そして自分ははすかさずファンだった子に「人気なミュージシャンになっていてすごい! おめでとう!」と メールを送信した。

 そして「ありがとうございます! 僕もあなたのようなミュージシャンに近づけたでしょうか!」と返信が返ってくる。


「近づいたどころかもう追い抜かれてるわ! ちくしょー! でもすげーよ!」

 本当に最高の瞬間だった。まさかあのファンだった子が自分を目指してミュージシャンになっていたとはね。

 自分だってまだまだ全然でミュージシャンの道も半ばといったところだ。でも自分の曲を聴いて誰かが勇気をもらったり自分も目指してみようと思ってもらえたなら、それが何よりも嬉しい。


 そしてもともとファンだった子。いや、今じゃ人気のミュージシャンから「自分と一緒に曲を作りませんか?」と打診を受けたので自分はすぐにそのオファーを承諾した。

 まさかあの頃にまだファンだった子と一緒に曲を作るなんて人生は何があるか分からないなと思わされた。

 そしてすぐに2人で曲を作るのであった。一緒に曲を作っていく過程で色々ともともとファンだった子にどうしてそんなにすごい曲を作って人気のミュージシャンになれたのか聞いてみた。


「自分も最初は全然音楽の才能のかけらもありませんでしたよ。でも自分はとにかく努力するしかなかった。あなたに追いつきたくてがむしゃらに努力をし続けました!」

「まじかよ」

「毎日毎日欠かさずミュージシャンになるために圧倒的な努力を積みました」

 この話を聞いて血の滲むような努力をしてきたことだけはすぐに分かった。


「僕自身はもともと恵まれていた方だったから比較的に曲を作るのはすぐにできたが、やはり何もない状態からここまで努力を積み重ねてミュージシャンになっているのはすごいね!「感心するよ!」

「本当ですよ、僕を褒めてください!」

「コラ、調子に乗るな」

「すいません」

 そんな感じで2人で楽しく曲を作っていたのだった。


「でも本当に夢が叶って良かったですよ。あなたと一緒に曲を作って演奏することになって」

「なんか照れるなー」

「10年前の自分に教えてやりたいですよ。君は10年後に憧れの人と一緒に曲を作って演奏をするぞってね」

 なんともしみじみとしてしまった。

 

「よし、一緒に最高の曲を作ろうぜ!」

「はい!」

「今回だけじゃない、これからもだ!」

「はい! よろしくお願いします!」

 あの頃はまだ、ただのファンだった少年は時を越えて夢を叶えたのであった。諦めなければ夢は叶う。

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