プロ野球選手と勝負した

「あのプロ野球選手マジでムカつくんだが! 俺よりもチビのくせしてよう!」

 知り合いのいっくんが怒っていた。


「いっくんさあ、一体どうしてそんなに怒っているんだよ」

「いや、あのプロ野球選手チビのくせしてなんでか活躍してんだよ。野球っていうのはなフィジカルエリートのスポーツなんだよ!」

 いっくんはあのプロ野球選手が活躍しているのがとても気にいらないらしいのだ。すると、後ろからあのプロ野球選手がやってきた。


「ちょっと君、いいかな?」

 噂のあのプロ野球選手は顔は笑っていたが目は笑っていなかった。


「は、はい」

 僕といっくんは噂のあるプロ野球選手について行くことにした。ちなみにいったいどこからあのプロ野球選手が現れたのかはあんまり深く詮索しないでほしい。

 じゃないと物語にならないからだ。


「さてと、君名前なんていうの?」

「俺の名前はいっくんだ!」

「じゃあ単刀直入に聞くけどいっくんさあ、僕の悪口言ってたよね?」

「はい、言いましたね」

「どうして僕の悪口を言ったのかな?」

「それはですね、野球がフィジカルエリートのスポーツだからです。 俺はあなたがチビのくせに活躍しているのが気に入らないのです」

「なるほどね、じゃあ僕といっくんで今から勝負をしようか。どっちが先に10本ホームランを打てるかでいいかな?」

「いいんですか? 泣いても知りませんよ? 俺ぜってぇ負けねぇよ? 」

 そして、いっくんくんと噂のあのプロ野球選手とで勝負をすることになったのだった。


「じゃあ、いっくんと僕とで順番に打っていく。それでいいよね?」

「ああいいぜ。お前みたいなやつにはぜってぇーに負けねぇ」

「準備の方ができました!」

 野球のグラウンドにピッチングマシンのようなものを置いて、僕がボールをセッティングして投球することになった。


「それじゃあ行きますよ 」

「いいよ」

 あのプロ野球選手が打席に立つ。そしてピッチングマシンからボールが投げられた。


「ふんッ!」

 そして噂のあのプロ野球選手はバットを振った。すると気持ち良いほどの快音が鳴り響いたのだった。

 ボールは空高く舞った。そしてどんどん遠くへと飛ばされていって、最後に観客席へ吸い込まれていった。


「まずは僕がホームラン一本ね。次はいっくんの番だよ」

「おっしゃ、負けねえぜ!」

 いっくんが打席に立つ。僕はピッチングマシンにボールをセットしていっくんに向かって投げた。


「クソー!」

 いっくんは三振した。そしてまた噂のあのプロ野球選手の打席になる。


「ふんッ!」

 バットを振ってまたもやホームランだ。そしていっくんは…。


「クソー!」

 またもや三振だった。結果はあっという間について、いっくんは負けてしまったのだった。

そして噂のあのプロ野球選手が勝った。


「クソ! なんで俺が負けるんだよ! 」

「いやー、僕が勝っちゃったね! さてといっくん、僕に謝ってもらおうか」

「うわああああああああ!」

 いっくんは泣きながら土下座した。めちゃくちゃ抵抗しながらの土下座だった。


「気持ちいい! Foo~!」

 あのプロ野球選手はすっげー気持ち良さそうだった。


「まあいっくん、野球はフィジカルエリートのスポーツというの間違っていないのかもしれない。でも僕みたいな身長が低い人でも活躍する方法は十分にあるんだよ。これだけは分かってほしいね」

「は、はい…」

「あとね、いっくんにプロ野球選手になるのは難しいかもしれないね。君向いてないかもw」

「ガーン…」

 噂のあのプロ野球選手は最後にいっくんにとんでもなく重い一言を言い残して帰っていったのだった。

 そして、噂のあのプロ野球選手の帰える時の後ろ姿は、どこかぷるぷると震えて気持ち良さそうだった。

 だが実力は本物であった。

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