有名人に繋がる公衆電話

 それぞれ値段の違う書かれた大きな札が貼ってある公衆電話のようなものがずらーっと横1列に並んでいた。

 左から1分間で1000円、1500円、2000円と様々だ。だんだんと値段が上がっていくらしい。

 値段を上がるごとに、その分有名な人と通話することが出来るということらしいのだ。


「あ、僕ずっとファンでした!初期の方からずっと見てましたよ!」

「○○ちゃんマジLOVE! 付き合って!」

「今度、ご飯でも行かない?」

「ヤラせろ!」

 今まさに有名人に繋がるという公衆電話を使っている人がずらーっといる。

 よくこんな良く分からなり値段の高い公衆電話を使うなーと自分は思った。

 まあ、自分も試しにやってみようと思った。だがお金をあまり持っていなかったので、1番安いやつにした。


そしてお金を払って電話をかけた。

プルルルル…ガチャ

「はいもしもし。」

「あの、あなたは誰ですか?」

 どうやら誰かが出てきたようだ。自分は相手に誰なのか聞いてみた。


「私ですか、私はタコス800世と申します」

「ええええ…」

 自分は心底ガッカリした。1000円という決して安くない金額を払ったのにも関わらず、タコス800世とかいうどこの馬乗り骨とも分からないのやつが出た。


「えーとですね…あの、あなたは何をしている方なんですかね?」

 この電話に出るぐらいの有名人なんだから、何かすごいことを1つや2つやっているんだろうなと自分は思った。


「私ですか。自慢じゃないんですが、その…私はヒキニートしてます。はい、えへへ。」

「…………。」

 こいつには1000円の価値すらないなと思った。タコス800世とかいうのは、なんで照れているのか分からない。


「実はですね。この電話は私が作りましてね」

「え…?」

 何か急に背筋に寒気が走ったような感じがした。


「あなた、今私が1000円の価値もないと思いましたね? 全てお見通しですよ」

「あっ、いや! そんなこと思ってないですよ! アハハハ!」

 自分は、タコス800世とかいうやつに全て見透かされていると感じて心臓がバクバクした。


「今あなた心拍数が上がりましたね。全部お見通しです。あなたは最初から私の掌に転がされているんですよ…。ぐへへ…」

 タコス800世は不気味な笑い方をした。なんだか脳にまとわりついて離れないような笑い方だった。

 どんどん気分が悪くなってきて、視界がぐにゃんぐにゃんのドロドロになった。


「はっ!」

 自分は布団から飛び上がった。どうやら夢だったらしい。でも本当に気持ち悪い夢だった。

 とりあえず夢で良かったなと思った。


 おっと、遠くから誰かが見ているようだ。

「ぐへへ…」

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