誰か僕を見つけて

残酷な7日間の幕開け 2

　人間世界では、有名人になれるのは、ほんのひとにぎりだそうだ。

　先ほど、保健所の係員らしき人が今の仕事の愚痴をぼやきながら、歩いて行った。

　有名になれないくらいで愚痴を言うのか人間は。犬よりも哀れだな。そんな生物がこの世界を支配しているとでもいうのか。そう思うと、僕はより一層、人間に対して心の底から腹が立った。

　檻の外からふと人間の声が聞こえてきた。

「俺、ペット飼いたいんだよ。」

　はいはい、そういう生半可な気持ちで傷つく動物がどれだけいるのか知らないくせに、愚かな人間どもめ。

「何を飼いたいんだ。」

「妻が犬好きだから。犬かな。」

だったら僕をどうですか～。絶賛飼い主募集中……な～んてね。人間なんかに飼われてたまるもんか。いずれ飼われるであろうその人間の未来のペットもかわいそうだ。

「犬種は何がいいんだ？」

　はいっ,出たよ犬種差別。

　僕ら雑種はお前ら人間にはどうしようもない落ちこぼれとでも見えてるんだろう。はっこれだから人間は……。

「ポメラニアンかなぁ。」

　ヘイヘイかわいいですもんね～。少なくともあんたらは雑種を絶対に選ばないことはよ～くわかったよ。ここにも、ポメラニアンはいなさそうだし。見る限り、僕と同じ雑種しかいないようだ。

　「でも、高いんだよなぁ～。30万」

　な、何だと！人間は生き物をお金というもので売っているのか。

　なんて恐ろしい生き物なんだ。けしからん奴らだなぁ～。

　ん？おい。そこのお前。今僕からはお前の姿は見えないが、おそらくこそこそと、僕の心理や思考を、文章という奴で読んで楽しんでいるそこのお前だよ。こそこそしていたって僕にはバレバレなんだからなぁ～。こそこそ何かするのは別に僕に害のあることだったら構わないが、僕に害のあることだったら、思いっきり嚙みつくからなぁ。そんでお前を、狂犬病に感染させてやる。

　え？保護されている犬は、狂犬病のワクチンと撃っているはずだから、嚙まれたところで、狂犬病にかかるはずがないって？フンッ、そんなこと知ったことか！だったら、ワクチンがうたれないように、必死に抵抗するまでのことよ……。

　はぁ……。まあ、いい。もうめんどくさくなってきた……。もう僕はお前に話しかけないが、お前は僕に害のある行為は絶対にするなよ。絶対に……だ。破ったら、狂犬病にしてやるからな。

　さてさて、話は戻って僕にはその30万とやらがどれくらいなのかはわからんが、男の表情から見て、相当高い値ということは僕にもわかる。少なくとも、僕に値段をつけるなら、その30万とやらの半額以下なんだしょ～ねぇ。不公平極まりない。