誰か僕を見つけて

ツケヤス

残酷な7日間の幕開け

 冷たいコンクリートが、僕の体毛から伝わり、鉄という物でできた柵という壁のようなところから冷たい風が力強く僕に向けて吹きつける。左右後は、コンクリートの壁で塞がれ、ここは、罪を犯したものが閉じ込められる牢屋のようだ。


 周りでは、子供からお年寄りまでが、生きる希望を失ったような顔をして、ぐったりしている。ここに来て、初めての夜、想像以上に過酷な生活となりそうだ。

 

 まあ、2週間も生活できるかどうか、生きていられるかどうかすらわからない状態だけどね。僕に残された時間はあと7日。7日を超えると僕は、人間に殺される。

 

 でも、人間なんかに引き取られたくない。


 僕はどうするべきか。





 吾輩は犬である。名前はまだない。


 いや、知らないといった方が正しいのかもしれない。なぜなら、僕は生まれて間もないころに人間に捨てられたのだから。名前を覚えていないのも無理はない。いや、ほんとになかったのかもしれない。まあ、名前などどうでもいい。どうせ….あと7日で死を迎える可能性が高いのだから。

 

 辺りがだんだんと明るくなってきた。朝になってきたようだ。ここにきて2回目の朝。朝は本来清々しいものだと僕は思うが、ここではそんなことは考えられない。こんな所で清々しいと感じれるやつは頭がおかしいだろう。


 僕らは、いわば冤罪の死刑囚だ。人間で例えるならね。冤罪の死刑囚など人間世界ではあまりいないが、僕ら犬の世界では、ゴロゴロ山のようにいる。冤罪の死刑がかからない犬などここ日本ではほんのひとにぎりだ。


 僕たちは飼い主によって、勝ち組か負け組かが分けられる。僕たちからすれば、ペットショップにずっといる犬たちはみんな勝ち組だと思うが、やつらは、飼い主にめぐり会えないとぼやいている。


 ペットショップで満足な食事ができ、寒い冬でも暖かい環境で良い眠りにつくことができるそんないい環境にいる奴らになにをぼやくことがあるのか?僕はそのぼやき、愚痴を耳にするたびに、イライラする。こっちの現実も知らずに。


 犬の世界では、ペットショップにいるぬるま湯につかる奴らを世間知らずという。

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