ステータスオープン! ~出来るようになったけどなんか思っていたのと違う~

あしな

ステータスオープン! ~出来るようになったけどなんか思っていたのと違う~

まえがき

気分転換で何も考えずに思いついたものを綴りました。

―――――――――――――――――――――――――






「…………なあ、つむぎ、その……頭の上のは、何だ……?」


「ふへ?」


 オレ――窓辺 空まどべ そら――の部屋で一緒にゲーム、というか義妹つむぎがRPGゲームをやってるので、すぐ隣で漫画見ながらも、若干かまってちゃんな紬の相手をしていた時にそれは起こった。


「ふええ? なんか頭についてるの? ……これで取れたかな?」


 パッパッと片手で女の子らしい綺麗な髪質の頭を無造作に払い、取れたか聞いてきたけど……。


「い、いや、そういうのじゃなくてだな……」


「な、何? え? ひょっとして虫がついてるの!? と、取ってよお~」


「あ、違うんだ。落ち着け落ち着け、何もついてないから」


 オレが何か煮え切らない感じで紬の頭を見ていたものだから、段々と嫌な方へと想像したようだ。涙目になって腕にしがみつくように寄ってきて少し俯いて頭を見せてきた。


 そして、紬が、頭が近づいてくるのと連動しているかのように”ソレ”も移動してくる。


 ”ソレ”は、二十センチくらいの黒い板みたいなものだった。そして白い枠があり、四隅には角ばってなく丸みを帯びている。

 ”ソレ”にオレは見覚えがある。そう、スマホゲーの【竜の試練】でよく見る、あのステータスの黒いボードと白枠にそっくりだったからで。




 そのステータスのボード? っぽいのが紬の頭の上で浮かんでいたのだ。




 目の前にあるので、触れてみようと恐る恐る手を伸ばし、ほんの数センチ前のところで、突然フッと消えた。


「あれ?」


 まるでそれは幻だったかのようにもう何も見えない。

 ボードがあったところに手をかざしてみたが空を掴むだけだった。


「おにいちゃん……?」


「あ、ゴメンゴメン。オレの勘違いだったみたいだ……ビビらせてしまったな」


 お詫びに空にかざしてた手をそのまま頭にポンポンしてやさしく撫でた。


「んもー、大きく目を開いて真剣に見られたから怖かったじゃん! 罰としてそのまま少しナデナデ続けてね」


「だから悪かったって。ハイハイ……」


 かまって義妹つむぎちゃんが離れずに密着したままでオレの肩へと頭を乗せてきたので、言われた通りにナデナデナデナデする。


「ふへへー」


 なんかアホっぽい緩み切った表情になっとるが、うちの義妹は家族の贔屓目に見てもカワイイ方だと思う。中学二年になって体つきも女性らしく成長しているので、昔から続くこのお肌の密着度も些かヤバくなってきている感じがするんだが……。


 ちなみにオレは高校一年で、お年頃なゲーム好き青年であるからして義妹とは……もちろん血など関係なく家族として見ているのだけど、血が繋がっていないからか、偶に、どうしても色気を感じてしまう時がある。


 前にそれとなく諭すようにしたんだけど、仲の良い兄妹はこれが普通なの! と泣かれたので以来そのままなすが儘状態だ。


 これが普通なのかなあ?


 他のヤツの兄妹事情なんぞよく知らんから放置しているが些か妹の愛が重い気がしないでもない。さすがは、かまって紬ちゃんである。さすツム。


 つーか、こやつ学校でもこんなかまってちゃんなのだろうか? うーん、学校でもこんな調子だと無意識ぼでータッチしまくりで男子勘違いあるあるを量産中なんじゃないか?

 いや、既に好きなヤツがいてタッチしまくりんぐじゃないのか? もしそうなら是非この兄のお眼鏡に適うかどうか、会わせてもらわなければならん。紬のナデナデ権利は易々と譲らんぞ……!


「よし紬、今度カレシを連れて来なさい。もしくはソイツが何かFPSやってるならIDを教えやがれ、だ」


「いきなり何言ってるの!? いやいや、そ、そんなのいるわけないし! 絶対いないし! それに何でFPSのIDに行きつくのよ」


 紬はガバっと頭を上げてこちらに向き直す。

 それでもオレはさっきからずっとナデナデナデナデ続けている。


「もちろん、オレに勝てないヤツなどに義妹つむぎをやるわけにはいかないからだ!」


「ふええええええっ!?」


 ナデナデナデナデ。プニ。


 オレの兄妹愛宣言にいたく感動したのか、真っ赤な顔でアワワしてるのが可愛くてナデナデついでにほっぺをプニっとしてしまった。うーむ、やわこい。良き。


 まあ必死に否定しているし、ホントにいるかどうかわからんけども、ライトでもないがガチまではいかない半端な腕前ゲーマーなオレに勝つ努力もしないヤツなど認めん、認めんぞ!


 まあ勝たす気は毛頭ないけどな!


 もし時が訪れたならば、チートな付属品を買って、オートエイムオートヘッショとリスキルと死体撃ちコンボで完膚なきまでに叩き潰してから、頭幸せ詰め合わせかよ、とメッセを送ってやろう、フゥハハハハ! (ド下種)


「凄くゲスい顔してるからなんとなく察したけど、アカウント停止と炎上とまとめサイトに晒されるのだけはヤメテね?」


「なん……だとっ!? じゃ、じゃあガチ勢ゲーマーなカレシが出来たら、紬のナデナデ権利が奪われてしまうではないか……くくぅっ!」


 ナデナデナデ。プニ。


「ふええっ、泣くほど!? だ、大丈夫だよ、カレシつくる気ないし、おにいちゃんにしかナデナデ許してないんだから。だから………………………………もっとわたしに依存してね?(ボソり)」


 あれー? なんか急に妹愛が重くなった気がしたぞ。最後の方は呟くように囁いていたから聴き取れなかったが、表情がヤンなデレになったような感じがした。


 ヤンって何の略だっけ? ヤングだっけ? 自分より若いからまあ間違ってないな、うん。(逃避)


「んじゃあっと」


 紬がにへらと笑い、胡坐をかいて座っているオレの前に移動したかと思えば背を向けて上に乗ってきた。


「紬さんや、ワシが漫画読めなくなるんじゃが」


「おにいちゃんはこのままナデナデしながらわたしがゲームするのを見るのです」


 むふーっと鼻息出しながらオレの所為で中断していたゲームの続きをしようとコントローラーを手に、無防備にオレへ体重を預けてくる。頭が顔面下にあるのでシャンプーだかのイイ香りが漂い、少しドギマギしてしまう。


 気を紛らわすために、ナデプニに集中しよう。


 ナデナデプニプニ。


 んが、ナデナデしてたら余計に香りが広がり、プニプニほっぺのアクセントが効いて一層ドギマギする羽目になった。


 紬はテレビの方へ向き直しゲームを再開しているから、そっちに集中するか。


「えーっと、わたし、さっきまで何してたんだっけ~?」


 確か、RPGで強めの敵との戦闘が終わった後、紬がオレにアドバイスを聞いてきたんだったかな? んで、そのまま放置中だったから……、


「んー? 装備見直しでちょい、ステータスオープンしてみどおぅわぁあああああええええッ!!??」


 ナデナデ――グキィィッ!


「ぶえええええッ!? 首っ、首があーーーっ!?」


 突然、黒い何かが目の前を覆う、というか顔に半分刺さった!?


 驚いて思わず紬の頭にねじりドスコイコンボをかましてしまい、痛みでジタバタとのたうち回っているその横で、オレは自分の顔をペタペタと触りケガがないか確認するが触感的には大丈夫っぽい。


 部屋には全身サイズの姿見鏡があるので、何ともないか覗いてみると……




 オレの頭の上に、さっきまで紬の頭にあったのと同じステータスのようなボードが浮いていた。




 そしてジタバタ紬ちゃんを鏡越しに見ると、オレのと同じ”ボード”が頭に動きに合わせて激しく動いているのが見て取れた。


 俺の上のヤツも首を傾けてみると同じくボードも傾いていく。


 そして、手を掲げてソレに触ってみると……スカッと感触もなく透けてしまった。まあ、そうじゃないとさっき紬の”ボード”がオレに刺さった時大惨事になってただろうからな……。


 というか、何でオレにまでコレが出たんだ? いや、”最初の時も実は出ていた”のか? あん時は鏡で自分を見ていなかったからな。

 だが、それなら紬があの時ガッツリとオレを見ていたから、出ていたならツッコミ紬ちゃんになってただろう。


 ……いや、オレだけにしか見えなかったということも……


 アレコレ考えていると、また、何もなかったかのように幻の如く”ボード”は消えてしまった。


「あるぇえ……?」


 鏡越し紬ちゃんを見ると同じく消えている。うーん、ゲーム脳的に推察すると表示が一定時間なのだろうか?


 いや、そもそも何故、こんな現象が起きているのか。


 うん、心当たりないし、まったく分からん!


 多分ラノベ好きの半端ゲーマーだからか、この状況でもなんとなく受け入れている感じがする。サブカルに詳しくない人だったら呪いとか心霊現象かと思いそうだ。


 だが、一回だけなら錯覚かなと思い過ごしただろうが、二回目の不思議現象である。さすがに見過ごすわけにはいかない。


 二回出たということは、何かしらの再現性があったから等しく起きたということでもある。


 ”コレ”が起きる前にオレは何をしていた?


 ナデナデプニプニか? いやそれは一回目にしていなかった。もっとしたい。

 義妹がRPGゲームをしていた。これは両方ともだから検証の価値はあるけど、他人の行動だな。条件かもしれないけど。

 義妹の行動でオレが何をしていたか。紬は強敵とのバトルが終わってから、装備の見直しの助言を求めてきたからステータス画面が見たかったので……。


 一回目は漫画を読みながらだったから。二回目はおんぶにだっこ紬ちゃんの相手をしていた。

 共通なのは、ゲームの続きが同じとこで、ステータス画面へのやりとり――


 ピンときた。


 ラノベや小説サイトをかじっている者なら誰でも連想できる事象だな。


 口に出すとそれはそれは恥ずかしいとても勇気がいる言霊。




「ステータス オープン」




 鏡の前でオレが囁くように呟くと、前触れも、音も無く、パッとボタン一つ1フレームで表示されるように、その”ボード”が自分の頭の上に現れたのだった。


「うわあ、マジかよ・・・」


 このマジには色んな意味が込められている。


 言葉に出す前に念じてみたが出なかったし、何でステータスボード風なのに目の前に映るような一人称視点のじゃなくて、三人称視点のさらに他人の視点から見ているみたいな頭の上に出るんだよ、不便すぎるだろ、という意味を込めてマジかよ、である。


 三回目の再現が出来たことで最早この現象に疑ってはいない、いや、まだオレが妄想に囚われて精神科まっしぐらな状態かもしれないが、まあそれは置いといて、こうなるとマジでこうなった心当たりがないんだよなあ。


 そしてこの時、頭を抱えてこの身に起きた事を考えているので精一杯で、義妹のことをすっかり忘れていたのだ。


「――――――――おにいちゃん?」


 鏡越し仁王立ち紬ちゃんが現れた!(ラスボス形態)




 このあと、めちゃめちゃ土下座した。(五分間)




   ◇◇




「……それで、その、”ステータスボード”のようなものが出たの……?」


 オレが一通り先程の出来事を土下座しながら釈明して、紬が首をコテンと傾けて不思議そうに自分を見つめてきた。カワイイ。キャラデザ神かよ。


「うーん、おにいちゃんがこんな時まで、冗談言うタイプじゃないから本当の事かも知れないけど……今もおにいちゃんやわたしの頭の上に”ソレ”が出ているの?」


「いや、今は消えているな。多分表示時間があるのだと思う。現に紬への説明中に何度かステータスオープンと言った時に表示されたし、あ、ほら今言った途端に紬の頭にソレが出たわ」


「ふえ? わたしには見えないんだけど……。んと、鏡越しでも見えないね」


「そうか……」


 やはり、オレだけにしか見えないのかな?


 こうなってくると疑問は残るが、まずはこの”ボード”の仕様を確かめてみようかな。ラノベ好きゲーマー的には、この現象はテンションアップで攻撃力1.5倍になりそうな状況だろう。


「よし、ちょいと検証してみようか」


「ふええ?」


「どうせなら、このボードがどういう風に発動するか、調べてみたい。紬も協力してくれるか?」


「でも、わたし、何も見えないよ……?」


「いや、それでもオレからは紬の”ボード”が見えるのなら、一人では出来ないことも試せるしな。紬もラノベ読んでるから少しはこの現象に理解出来るだろ?」


「わ、わたしでいいのお~?」


 がっしと両手で手を取り、近い距離で見つめ合う形になる。あー頬っぺたがやわこそう。


「むしろこんなこと頼めて一緒に出来るのは紬しかいないんだ!」


「ふえええっ! おにいちゃんのわたしへの依存度右肩上がりでストップ高だよおっ」


「何を言う。お前への(妹)愛に上限などないわ!」


 プニプニプニプニ。


「ふえええええええ!? これはもう、ゴールしてインよね……?」


 何だか、紬の発言が死亡フラグか、それとも何かとんでもないフラグっぽいのを立てた感じがするが、頬っぺたをプニプニしてあまり深く考えないことにした。(逃避)




 こうしてオレたちは、この不思議現象をいろんな方法で試してみることに。




 ゲームなら攻略サイトで章ごとに取り逃し要素がないか、チェックしたあと、ダンジョン等でわざと外れルートから進んで全ての宝箱回収やイベントを逃さない。

 能力値を割り振るやつもちゃんと調べてからプレイする、そんな効率厨気味半端ゲーマーな兄妹だからか、このステータスが出る状況を様々なシチュエーションで試してみたのだ。


 その結果、解ったことを並べていく。



 ・オレが『ステータスオープン』と声に出さないと表示されない。


 ・自分の声質を高低変えたり、変な声で言っても発動する。


 ・『ステータスオープン』が聴こえるの者にもそれが表示される。


 ・上記の範囲内なら例え耳をふさいだり、イヤホンで音楽を鳴らして聴こえてなくても表示される。


 ・但し、届く範囲でも聴き取れないくらいの声ならば表示されない。例えば、オレの部屋でお互いが端と端へと離れて小さい声で『ステータスオープン』と言う。紬はオレの声は聴こえるが何を言ってるか聴き取れないのならば表示されない、といった感じである。ここいらへんはかなり曖昧な判断で、多分デシベルやら音波やらが関係してそうなんだけど、ただの学生ゲーマーにそこまで調べるのはムリゲーなので、ある程度試して中断。


 ・表示中、オレだけが鏡を通してもボードが見える。スマホのカメラ・動画機能では見えない。たぶんデジタル変換されているからだろうか? レンズのみのカメラ・眼鏡越しなら見えると思われる。


 ・表示中に撮った写真、動画からはオレも他人も見えない。写真・動画に『ステータスオープン』を言ってもそれらに映っている被写体からは表示が出ない。


 ・表示されてからジャスト一分で消える。延長は出来ない。


 ・ボードはあらゆる物体を透ける。感触はない。3Dゲーでキャラの一部のポリゴンがオブジェを突き抜けるみたいになっている、もしくは髪の毛が衣服を貫通している、あんな感じだ。


 ・ボードの形状・色は変更出来ない。著作権大丈夫かな? まあ脳内オンリーだしいいか。



 とまあ、ゲーマー魂に火が点いたのか、二人して細かいどうでもいいことまでチャレンジしては、スマホのメモにつらつらと結果を書き込んでいったのだった。




「でもさあ、おにいちゃん」


「何だ?」


「言われるままに色々検証してるけど、それ、使い道あるの?」


「そりゃあ…………………………………………………………ないな」


 自分にしか見えない、ただのボードっぽいのが浮かぶだけで何か利用法あるのか? と問われれば、……ないよなあ? 少なくとも紬やオレには思い付かないな。


「それに、いちいち声出さないとダメなのも、なんかラノベや”カクヨミ”にハマりすぎてる人にしか見えないよ……?」


「ですよねー」


 昨今、ラノベや小説サイトではゲーム的な世界観で繰り広げられる展開が、賛否両論でも主流なのは否めないくらい、定番ものとして定着している。その作風の中でRPGのようなステータス表記も、もはや当たり前として数多くの作品に取り入れられているものだ。

 そういう作品が幾つかアニメ化にもなっているし、サブカルをかじっている人達ならステータスの概念を知っているだろう。


 紬の前だからまだ恥ずかしくないけど、他人やクラスメイトに『ステータスオープン!』といきなり声を出して言おうものなら、そういった概念を知っている人達からはきっと生暖かい視線を送られるに違いない。

 いや、せっかく馴染んできたクラスの友達から、高一にもなって中二病に罹ってると思われたら、それはそれはオレの”黒歴史”に刻まれて、大人になった時、急に若い頃を思い出したらきっと枕をサンドバックにするくらいの羞恥心に苛まれるに違いないのだ! (経験者っぽい発言)


 そして友達からは……、



『そういえばクラスに窓辺っていたじゃん? どんなヤツだっけー?』


『いたなあ、ほら、ステータスオープ~ンとか叫んでたやつだろ?』


『ああ、アイツか~。異世界転移から帰って来た設定でもハマってたんかね』


『いやあ、現代ダンジョンになった世界でステータス出る設定じゃね?』


『それか、社畜なオレが過労死したと思ったら駄女神に拾われて嫌がらせに役に立たないスキルを与えられたあげくに、二度目の逆戻り人生を送ることになった。ところが使えないスキルが進化してチートになって再人生満帆! 駄女神がスキル返せと迫ってきたが【もう遅い】 ていう設定だろ』


『ギャハハー、それっぽい~』



 っていうオレの人物像のイメージになっちまうんだぜ!?


 つーか、こいつらこそサブカルにハマってんじゃねーか、詳しすぎるだろ! 今度ラノベ談義しようじゃないか?


 とまあ、このステータスボードが見えるようになっても、マイナス指数ストップ安へと向かっていく展望しか見えないな。

 所詮、自分にしか見えないんだからいくら説き伏せても、信じてくれても、家族でも、親友でも、結局他人からは分からない、妄想でしかない、と思われても致し方無いだろうし……………………………………………………………………マテ。


「………………紬さんや、オレがステータス見えるの信じてくれてる、よね?」


「    もちろん、だよお」


「今、微妙に空白スペース(四文字分)あっただろ。さあ、おにいちゃんの瞳をちゃんと見て言いなさい」


「ふえええっ!?」


 がっしと紬の肩を掴み、片手で顎をくいっと軽くオレの正面へと向けるようにし、お互い真剣に見つめ合う。


 息も掛かるような距離で、紬は顔を赤く茹で上がるようになっていき、やがて罪悪感からか、フイっと目を逸らしてしまった。


「クッ……、信じてくれてなかったのか。もう妹に愛されないオレじゃあ、MMOのレイド戦の集合場所から単騎で説明も聞かずに吶喊して不用意にボスを刺激しまくり、レイドを滅茶苦茶にかき回したあげくに仲間から追及されたら『でも、オレには妹がいるよ』と釈明出来なくなるじゃあないか……」


「ふえええっ、い、今のは見つめ合うのがご飯何杯でもいけるくらい恥ずかしくなったからで、胸キュン愛でごちそうさまだよお~!? というか、そんなことしたら多分、ネットが有る限り未来永劫、レジェンド珍事件として残っちゃいそうだからダメだよお」


 オレは紬が信じてくれなかったとショックを受け、打ちひしがれてたから今のセリフがほとんど聞こえていなかった。


 しかし、検証に付き合ってくれたのだから少しは信じてくれていたかもしれない。まあ話半分くらいに思われているならまた検証に付き合ってくれるだろうし、それなら100メガショックもBlu-ray Discの前なら霞むというものだ。

 何言ってるんだオレは。


「紬よ、ステータスのことはどれくらい信じてたんだ? 正直に言ったら罰としてナデプニに加えて耳たぶをタプタプ追加するぞ?(錯乱)」


「ふえええっ、ご褒美だよおお! 二割くらい、かな(マジ正直)」


「よし、このステータスの件はなかったことにしよう」


 封印即決である。


 恐らく一番オレへの理解が深い義妹でも話二割しか信じて……いや、二割でも高いと思うわ。ま、普通ならこんなこと信じないし馬鹿話として一蹴されてもしょうがないくらいだしな。そして紬に中二病と思われただけで穴があったら入りたくなるから、もうステータスのことは一切合切忘れることにしよう。


 もし逆な立場だったら微笑ましく検証に付き合うが、信じるかというと…………100%信じるに決まっとろうがッ!!! 妹道をなめんなよ!


「ふえええ、おにいちゃんのわたしへの依存度が順調に進んで何よりだよお~」


 なんか、心の叫びを読んだような黒い発言が飛んだ気がしたが、気のせいだろう、気のせいに決まってる。オレの妹がそんなに黒可愛いわけがないからな(逃避)


「はあ……、ま、これ以上やっても無意味と分かったし、夜も遅い。学校もあるんだから今日はもう寝るかー」


「ふええええ!?」


「ん? どうした紬?」


 縋りつきウルウルな瞳で仲間になりたそうにこちらを見ている。


 仲間にしますか?


 なんだよ、イエスしか選択肢がねーじゃんか。神ゲーかよ。


「罰のタプタプをしてね……?」




 このあと、めちゃめちゃタプタプした。(三分間)




 さて、おやすみなさい。


 スヤァ。









 ――そして深夜、深い眠りにつく”窓辺 空”の脳内に、誰ともない音声が無機質に、しかし本人は熟睡している為に届くことがないソレがひっそりと呟かれた――






 『スキルの熟練度が上がりました』






      TO BE CONTINUED……?







―――――――――――――――――――――――――

あとがき

ステータス表示させたら文字数稼げる! と思ったらそんなことなかったぜ。

つか、かまって紬ちゃんがメインになった気がしないでもない……。

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ステータスオープン! ~出来るようになったけどなんか思っていたのと違う~ あしな @asina

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