第10話(軽井視点)
「さて、ここからは妾が相手をしてやろう」
「妾…?雰囲気が変わったッスね?」
今の軽井明は先程までの軽くどこか遠くを見つめているような雰囲気とは異なり、両腕を胸の前で組み、その眼は余裕を孕んで
「知っておるか?lightという単語には《軽い》以外にもな《光》という意味があるんじゃよ。」
「な、なるほど?つまり?」
「たった今妾の手札は大きく増えたということじゃ。ほれ。」
「っ…!なんか不味いッス!」
剛は背中に悪寒が走り、自分の本能に従ってその場を飛び退いた。その瞬間、軽井が人差し指を軽く振りおろすと同時に先程まで剛がいた場所に熱線が走った。
「まずこれが基本光の操作による収束じゃ。そして光が操作できるとこんなことも出来る。」
軽井は軽く腕を横薙ぎに振った後、剛に向かって真っ直ぐ飛び出した。
「真正面から?!いいっすね!そういうの嫌いじゃないっスよ!」
そして剛が片足を半歩前に出し、腕を前に構えると右側から囁くように声が聞こえた。
「残念横じゃ。」
「なっ…!」
軽井の回し蹴りが剛の胴を確実に捉える。lightの能力により軽くなった剛の体はそれだけで大きく吹き飛んだ。しかし、場外ギリギリのところで彼女は何とか踏みとどまる。
「これが光の操作による屈折。相手の視覚情報を大きく惑わせることが出来る。そして最後に…」
「くっ、これ以上は好きにやらせないッスよ!一瞬で仕留めるッス!」
剛は恐怖と焦りによる冷や汗をかきながら、軽井に向かって目にも止まらぬ速さで駆け抜けた。
「妾自身が光になること。それ即ち光速を意味するのじゃ。」
「消えた?!どこに?!」
刹那、剛の背後からドゴオオン!という轟音が響いた。思わず振り返るとそこには場外の壁に激突した軽井の姿があった。
「いったた…久々だから調整を間違えてしまったの。」
「げ、言英学園軽井明選手、場外により失格!よって勝者は智南高校、有村剛選手及び
会場は一瞬の静寂に包まれた後、歓声が爆発した。
「うおおお!!なんだ、あの後半の動き!」
「やべえよ!どうなってんだ!」
「おい!誰か何してるか分かったやついるか!」
「か、勝ったんスか…うーん、腑に落ちないッスね。」
「剛!何言ってんのよ!勝ったんだから良いじゃない!ほら誇りましょ!」
剛は不満が残りつつもぎこちない笑顔で勝利ポーズを従と共にとった後そそくさと逃げるように控え室に戻って行った。
「明!凄いじゃない!最後の動き!一体どうやって…」
「ちょっともう限界じゃ…後は表の明にまか、せ、る…」
そう言い残して明は意識を失った。
英単語で戦う世界(物理) @alenkaichou
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