第7話(軽井視点)

「いきなり後ろにッ?!」


一体どういう能力の使い方を…?1度たりとも目を離さなかったから多分すごく速く動いたとかそういうのじゃない。ほんとに瞬間移動したんだ。なんとか回避が間に合ったけど次来ても対応できるかどうかは怪しい…。


「ふふふっ、今のは姉さんの言葉の力、follow《従う》の能力ッスよ!」


すると突然相手の有村剛ありむらつよしが自らの手の内を腰に手を当てて自慢げに晒し始めた。


「ちょ!あんたバカ!何ばらしてんの?!」


「バラした方が正々堂々戦えていいじゃないっスか!いいッスか?まずはfollowの力は一定以上対象から離れると自動的に対象の背後に瞬間移動するんス!この能力をshare《共有する》の力で私たち二人につけることで2人でfollowの恩恵を受けたんっス!つまり!私たちに場外はないと思って欲しいっす!」


「ハァ…ほんとに全部バラしてくれたわね。戦いづらいったらありゃしないわ。」


姉の有村従ありむらしるべは頭を抱えた。そうなるのも無理ないだろう。たった今自分たちの戦略が相手に筒抜けになったのだから。


「さぁ!今度はお前たちの戦略を教えるッスよ!」


つよしが腰に手を当てて人差し指を風花に突き出して言った。


「嫌よ!」


「そんな?!」


つよしはガーンという擬音が聞こえてきそうな程に口をあんぐりと開けて驚いた表情でこちらを見ていた。


「当たり前じゃない…それなのにバラしちゃうなんて…」


「明、対処するには…」


「うん、戦闘不能にするしかない。それも近中距離戦で。遠距離だとまた背後に回られるかも。」


「となると、練習してたあれの出番だね!」


「《質量減少ウェイトリデュース》。」


「《気流操作フロウコントロール》!」


私は右手のひらにあるlightの文字を光り輝やかせた。それと同時に私たちに訪れる浮遊感。足が地面を離れ、少しずつ高度をましていき、やがて相手の身長よりもさらに1m上まで上がった。そして風花ちゃんの能力のおかげで姿勢が安定してきた。


「《風の武器ウインドウエポン》。」


そして私の手元に風の投げナイフが生成された。握ると常に空気が流れているからか独特な握り心地がするが、不快ではない。少し発光しているから形は辛うじて見えるが少し離れると分からなくなりそうだ。


「球子先生に鍛えられたこのエイム力を見よ!」


「見よ〜。」


軽井と空野は手元に生成した風の投げナイフは的確に相手の胴体に吸い込まれていく。これは彼女たちのエイム力が向上したおかげもあるが、それ以上に空野が一度に操れる風の量が修行期間で大幅に増したことが影響している。そしてその結果、その増えたリソースはレール作りに使われた。


空野と軽井が投げたナイフが空野が作った風のレールに乗って相手の元へと的確に届く。それは最早絶対に外れることの無い百発百中の投げナイフだった。


「ちょっと!あんな上に行ったら私たちどうしようも出来ないッスよ!おっとっと!」


「上手く調整してくれたわね。エリア外に出ないギリギリだからfollowも発動しない。よっと!」


「なんか良い手はないっスか?!ほっ!」


「無くはないけど…めんどくさい。」


有村剛ありむらつよし有村従ありむらしるべは軽口を叩きながらも投げられてくる風の投げナイフをその自前の身体能力を使って上手く避けていた。


「めんどくさいならやるッスよ!」


「はぁ、わかったわよ…」


そう言ったしるべはfollowの能力を再び発動させる。





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