第6話(軽井視点)
私の心はいつもちゃんと動いている。嬉しい時は凄く嬉しいし、悲しい時はすごく悲しい。けどそれを感情として出すのが少し苦手。だから私はいつも面白くないって言われてる。けど、みんなは違った。こんな私でも自然と受け入れてくれて、今でも仲良くしてくれてる。だからみんなの期待に応えたい。緊張はするけど、それでもそれ以上の覚悟を持って1歩1歩進んでいく。
やがて通路の出口に差しかかる。そんなに通路は長くなかったのに日を浴びるのが随分と久しぶりな気がして思わず目を細める。最初に聞こえるのは身体を揺らすほどの歓声。次に聞こえてきたのは隣りの風花ちゃんの息遣い。緊張しているのか、呼吸が少し荒くなっている。
「大丈夫だよ、風花ちゃん。」
「明。ありがとね!頑張ろっか!」
空野は軽井の方を見てニコッと微笑んだ。少しぎこちなく、緊張で頬は紅潮しているがとても信頼されている。軽井はそう感じた。
私は正方形の舞台に上がるための階段を登っていく。ほんの5段ほどしかない階段でもとても長い時間登っているように感じた。そして、上がりきると正面方向には相手校の選手が見えた。
「それではお互いに名乗りとお互いの授かった言葉の力を宣言してください。」
「
「同じく
「
「同じく!
一転して
「勝利条件は先程と同じく相手チームを場外にするか、戦闘不能状態にすることです!では、第1回戦第2試合、はじめ!」
審判の手が振り下ろされる。それと同時に私はlightの能力を発動した。
「先手必勝。《
私の右手のひらにあるlightの文字が光輝き、相手の重さを失わせた。すると、相手は宙にフワフワと浮かび戸惑っているようだった。
「ちょ、なにこれ?!」
「これやばいッスよ!姉さんなんとかして!」
「ちょっとまってて!!」
「そんな隙与えないよ!《
風花ちゃんが腕を横に薙ぎ払うように振るうと前方広範囲に強風が発生した。そしてそれは宙に浮いた軽い相手を場外に押し出すのには十分だった。
しかし舞台の外に吹き飛ぶ直前、勝利を確信したその瞬間、相手2人は突然消えた。まばたきすらしていなかったというのに。
「え?!消えた?!」
「一体どこに。」
「ここッスよ!」
後ろから肩にポンと手を置かれる。その瞬間とてつもない悪寒がした。それはほとんど反射で考える間もなくて。技名もない単純な能力、けどその場で咄嗟にそれが出来たのは2人で訓練してきたこの2週間の賜物だろう。
私が風花ちゃんと私の体重を少し減らし風花ちゃんが風で動きをサポートする。一時的に大きな機動力を得た私達はすぐに舞台の真ん中へと逃げた。
「ちょっと、不意打ちするのに話しかけるバカがいる?」
「あ!ごめんっス姉さん!次は黙って仕掛けます!」
第2試合はこうして火蓋が切られた。
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