第4話
時は2週間程前まで遡る
天城と文瀬は生徒会長宅の地下訓練場で直々に指導をしてもらっていた。
「日与理ちゃんって、なんで自分の体に能力付与できないの?単純に知識不足?」
秋宮会長が疑問に思ったのか首をコテンと傾げながら指を顎に当て聞いてきた。
「…そうですね。人体の構造はある程度把握しているので知識不足では無いと思います。ただ…」
「ただ?」
文瀬は1度考えたあと、少し自嘲気味に間を空けて口を開いた。
「…たぶん、私自身が私のことをよくわかってないんです。私は姉の復讐をすることだけが生き甲斐です。ただ、それは生きる目的であって、欲求ではありません…。」
秋宮は1度文瀬が言ったことを頭の中で反芻し、1度噛み砕いたあと確認のためもう一度繰り返した。
「なるほど?つまり自分のことしたいことがよくわかんないってことなのかな?」
「…はい、恐らくは。」
そして、その話が聞こえてきたのか、走り込みを終えて休憩していたトレーリングウェアに身を包んだ天城が少し息を切らせながら話に入ってきた。
「うーん、確かにそれはこの場で解決策を出すのは難しいかもね…」
解決策が分からず2人でウンウン唸っていると、突然少し考え込んでいた秋宮がパッと顔を上げ閃いたとばかりに指をパチンと鳴らした。
「じゃあさ!あれやってみようよ!性格診断テスト!あれって色んな種類あるじゃん?それを沢山やって日与理ちゃんのことみんなで知ろ!」
「いえ、大丈夫です。」
文瀬は考える間もなくキッパリと断った。しかし、少し迷った後に覚悟を決めたのか恐る恐る蚊の鳴くような声で口にした。
「…けど、私のために考えてくれて、ありがとうございます…。」
文瀬は耳まで真っ赤にし2人に目を合わせないようにしながら少し俯いて小さく、しかし確かに口を開いた。
「?!聞いた?走くん!」
「はい、聞きましたよ。可愛いかったですね。」
「っ…!す、少し休憩してきます!」
体から力沸きあがる。今ならなんでもできる気がする。見渡せば数え切れないほどの観客がいる。自分を落ち着かせるために1度目を閉じた。そして、頭をよぎったのはあの頃の幸せな記憶。
両親は早くに他界してしまったからお姉ちゃんは女手一つで私をここまで育ててくれた。毎日遅くまで働いて、家に帰るとメッセージつきのご飯がラップをされて置かれていた。お姉ちゃんはいつも忙しかったからあまり一緒に遊べなかったけど家にいる時は全部を私に向けてくれた。
今でも思い出せる、あの日の怒り、憎しみ、悪意。そしてそれ以上の哀しみ。私はあいつに復讐したい。けど、それ以上に私は…
お姉ちゃんの笑顔をもう一度見たい!!!
脚に力を込めるとまるで風のように周りの景色を置き去りにして走ることが出来た。ただ1つ見据えるのは眼前の相手。先に出すべきはコピー元の男!
「っちょ!はやっ…!」
腕を振りかぶる。技術なんてそこには無い。ただ能力ひとつでごり押す。しかし、単純だからこそ能力の強さが際立つ。拳は目にも止まらぬ速さで
「っ重っ…!」
「
彼女の体はそのまま舞台の外へと飛んでいき、観客席の下の壁にぶつかった。
「智南高校、依原存場外により失格!」
「…あと1人っ!」
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