第二章︎ ︎ ︎ ︎ ︎大会
第1話
春も終わりかけ、夏の足音が聞こえ始める。そんな5月上旬。俺たち5人+球子先生はバスに揺られて、新入生大会の会場へと向かっていた。
「ようやく来たわね、この時が。」
「ちょっとドキドキする。」
「流石の僕もちょっとプレッシャー感じてきたかも。」
「まだマシでしょ。ほら、環なんて。」
「ちょ、ま、今話しかけな…うっ。」
「来栖ー、あとちょっとだからな我慢しろよ。」
やばい、緊張と乗り物酔いで普通に吐きそう。無理かも…。あぁ姉さん。今日の俺は絶不調です。そんな俺の勇姿どうか見届けてください…。
そんなグロッキーな主人公を乗せたバスは徐々に目的地へと近づいていき、やがて今回の会場となる競技場のドームが見えてきた。
「よし、そろそろ降りる準備しとけよ。他の応援の生徒達はもう着いてるからな。情けない姿を見せないように。」
「「「「はい!」」」」
「はい…」
降りると、先程までクーラーの効いた車内に居たからか少し暑く感じたがそれもあまり気にならない範囲で絶好のお散歩日和と言えるだろう。そして、俺たちが乗っていたバスの他に続々とほかの学校のバスが到着してきた。
「わー、ほんとに全国から来てるよ。いきなり全国大会って緊張するわね。」
「それにこんなにいい環境で出来るなんて。」
「僕たちも頑張らなきゃね。」
「ええ。頑張りましょう、走さん。」
「っしゃ!いっちょ見せたるぞ!修行の成果!」
「張り切ってるようで何よりだ。初戦の相手は九州の
そう言って球子先生は俺たちを選手控え室まで案内してくれた。途中、色んな人に手を振られたりしたがほとんどが天城への歓声だったような気がする、いや気のせいだ。多分そうだ。
そして案内された控え室はまっさらなベージュの壁に囲まれた部屋だった。中にはいくつかの椅子と机がひとつあり、靴を脱いでくつろげるスペースもあった。
ちなみに開会式だったりお偉い人のお言葉が現在会場で行われてるらしいが俺たちは参加しなくていいらしい。なんという親切設計。とにかくゆっくり休んで英気を養えとの意図らしいが、とにかくありがたち。
「…なんか、控え室と言うより楽屋?って感じね。」
「でも僕はこういうのワクワクして好きだな。」
「よし!で、最初は誰からだっけか?」
俺が聞くと走が軽く手を挙げて日与理の方を見て自信に満ちた声で言った。
「僕と日与理だよね?」
「…そう。」
「いやー、軽くどんな感じか聞いてはいるけど。」
「どんな感じに仕上がったか楽しみね。」
「期待してる。頑張って。」
日与理の表情は相変わらずクールな感じで特にどんな感情かは分からないが、気持ちいつもより目がキリッとしてるような?気がする。走に至っては、言うまでもなく1番張り切ってるな。
「じゃ、行ってくるよ。みんな応援よろしくね。」
「やるからには勝ってくる。」
「頑張ってこいよ!」
「負けたら私が優しく慰めてあげるよ。」
「ファイト。」
そうして俺たちは走たちの背中を見送った。ついに始まるのだ。新入生大会が。
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