第33話

「じゃあ、二人とも私についてきて。」


秋宮先輩そう言って、黒く尖った柵を気にせず前に進んだ。柵にぶつかると思ったら柵がまるで霧のようになり秋宮先輩はそのまま柵を通り抜けていった。


「ほら、二人とも大丈夫だからついてきて。こっちにおいで。」


僕と日与理は目を合わせると、唾をゴクリと飲みこみ、目を閉じて、柵に向かって走っていった。


「あはは、君たち大げさだね。別に死にはしないよ。」


「あのー、秋宮先輩、今のは?」


「今のはちょっと特殊なものでね、敵意を持った人があの柵に触れると、気絶するんだ。」


「え…」


「大丈夫、大丈夫。ほら、君たちは何ともなかったでしょ?じゃあ、早速修行するよ。爺、私達このまま地下に行くから。」


「はい、分かりました。お嬢様、お気をつけて。」


「あの、地下って?」


「ついてこればわかるよ。」


僕達はそのまま生徒会長についていき、家の中には入らず、長い外周をまわって、家の裏に来た。そこには、いかにも怪しいマンホールのようなものがあった。秋宮先輩は「よいしょっと。」と言いながら蓋を開けるとそこには地下へ続く階段があった。

地下までの道中は恐怖と緊張から会話が一切なかった。そして、僕達がその階段を一分ぐらいの間降りていくと開けた円形の空間に出た。広さは、野球コートの半分ぐらいだろうか。


「ようこそ、我が秋宮家の訓練施設へ。」


秋宮先輩がそう言って手をパチンと合わせたら壁に埋め込まれていた照明が一斉に光った。


「まずは、日与理ちゃん!手を握らせて。」


「はい!はい?」


「良いから、良いから。」


秋宮先輩はそう言いながら有無を言わさず日与理の右手を両手で包み込んだ。日与理は照れているからか、顔を赤くし、口を金魚のようにパクパクさせていた。秋宮先輩が日与理の手を握ると、秋宮先輩は目を瞑り、一分ぐらいそのままだった。そして、秋宮先輩が目を開けると日与理から手を放した。


「ごめんね、日与理ちゃん。お詫びに今から面白いの見せるから。『完全模倣ドッペルゲンガー』!」


秋宮先輩がそう言うと、体全体がポケットなモンスターが進化するかのように発光しだし、僕達は眩しさに思わず目を瞑った。

そして、光が収まったので目を開けるとそこには文瀬日与理がいた。僕の隣にも文瀬日与理がいた。


「じゃじゃーん!これが私の能力です!まあ、五つあるんだけど。私の能力はcan《出来る》as《として》do《行う》name《名前》improve《高める》だよ。用途的には強化コピーみたいな感じかな?」


言英学園の生徒会長はヤバい生徒たちのなかでも頭ひとつ、いや頭三つぐらい飛び抜けてヤバかった。どうやらうちの生徒会長は実質能力無限持ちらしい。

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