第29話

「僕の能力を説明するね。能力はrun《走る》とwall《壁》。両方ともレベルは3だよ。runの方はとりあえず壁も走れるって感じなんだけど、もう1つ副次的な能力があって、足の耐久力が上がるのと、足が速く動かせるようになるんだ。」


だから実技試験のときに上から踵落とししても無傷だったのか。確かにそういう効果がないと自分の能力で自分を傷つけちゃうもんな。


「それで、wallは自分が壁だと思うものはなんでも作れるんだ。でも、縦の長さが横の長さより必ず長くなきゃいけないんだ。あ、人の体内には干渉できないからね。」


なるほど、縦が横より長くなきゃいけないのか。

あ、地面から小さい壁を出して相手を転ばすとか出来るかもな。


「じゃあ、次は私ね。私の能力はletter《文字》と、give《与える》よ。レベルは両方とも同じく3。まあ、字面から分かると思うけど、意味のある文字を書いて、それを付与するって感じね。」


まあ、想像通りだな。ここから考えないといけないのは、どう工夫して戦うかだな。うーむ、難しい。


「ねえ、日与理ちゃん、letterって一般的にはアルファベットの文字って意味だけど漢字も書けるの?」


「うん。でも、早く書かなきゃいけないから効率がいいのはアルファベットかな。でも、威力的には漢字の方が強いよ。時間がかかるけど。あと、文字は私がある程度、構造を把握してるものにしか、付与できないし、自分にも付与できないよ。」


漢字の方が時間がかかるけど、威力が強い。けど効率がいいのはアルファベット。あと、ある程度構造を把握してないと付与できないのか。大分条件がキツいな。


「私が思い付いたのは、ありきたりだけど走が出した壁に文字を付与するのかな。環と明は?」


「俺が考えたのは、走の体に文字を付与しまくって強化するって感じ。」


「私は、走が日与理をおんぶして、たくさん走りながら走が出した壁に付与をするのかな。」


「どれも良いけど、難しいな。」


そう、俺達が今出した意見は付与出来ることが前提なのだ。付与するためには対象の構造をある程度把握しないといけない。

しかも、当日向かう大会の場所の構造なんかわからないので、必然的に走の壁に付与しなければいけなくなる。


「まあ、これからの練習で走の壁の構造を把握するわ。それしか方法はないし。これで私達の戦い方もある程度まとまったけど…あんた、どうやって戦うの?というかrememberで戦えるの?」


あ、考えてみると俺の能力を見たのって実技試験で戦った走だけだったけ。風花も俺の能力については知らないか。しかもreadのことに至っては俺しか知らないし。

あれ?俺のdown《下がる》って相手に触らないといけないから

不利じゃね?

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