第26話
「文瀬さん、さっきも言ったんだけど私はその通り魔に一度襲われたの。けど今私は生きてる。だから…恐らくアイツはもう一度私を殺しに来ると思う。私はアイツの顔を見てるから。」
「でも、絶対に来るなんて言い切れ…」
「言い切れる!」
風花は文瀬の言葉を遮って話を続けた。
「アイツは襲った人は必ず殺すか、生かしたとしても記憶を消してる。つまり、絶対に顔を見られたくないの。けど私は唯一あいつから無事に逃げ切って顔も見てる。私がアイツだったらそんなヤツ見逃さない。」
俺はそう言い切る風花を見て素直にすごいと思った。風花の足をよく見ると少し震えていた。当たり前だ。自分を殺しに来る人がいる。その事実だけで十分怖いはずだ。
「…わかった、アイツを殺すため。協力してあげる。」
「ありがとう!」
「よろしくね、文瀬さん。」
「よし、5人揃ったし、俺達はこれからチームメイトだ。ということで、お互いを下の名前で呼ぼう!」
「僕は別にいいよ。」
「私もいいよ。」
「私も良いわよ。」
「私も別に…」
「よし、決定!じゃあがんばろー!」
しーん。
え、無視?ひどっ!ってあれ?この感じ、最近経験したような…
「おめでとう、環。」
そこにはいつぞやの白い少女が立っていた。そして、例の如く周りは止まっており音は一切きこえない。
「最近出てきすぎでは?というかこれどうなってるの?いつも周り止めてるけど。」
「私の能力は見て分かる通りrule《支配》なんだけど。」
少女は自らの頬に刻まれたruleの文字を指で差しながらそう言った。
「私を中心とした半径五キロに球状が私の最大効果範囲なんだ。そして、その中なら私はどんなことでもできる。今は貴方と私に必要な原子以外の動きと、他の人達の体感時間を完全に止めてるんだ。」
え?強くない?じゃあやろうと思えば半径五キロの人間全員殺せるじゃん。こいつに勝てる奴いるのか?
「私は貴方に新しく飴を渡しにきたの。それともうひとつ、貴方に会わせたい人がいるんだ。」
俺に会わせたいひと?一体誰だ?そして、ポンと俺の肩に後ろから手が置かれた。瞬間、俺の体は内側爆発した。
はっ!あれ?俺は今爆発した筈なのに。どういうことだ?
「やめなさい、伊吹!ごめんなさい、驚かせて。ほら、伊吹も謝りなさい。」
彼女がそう言うと俺のうしろから人間が跳躍し、空中で華麗に一回転し、少女の隣に着地した。
その人は女性で俺と同い年くらいの見た目だった。右手には本を持っていて、顔には黒ぶちのしかくい眼鏡をかけていた。
「私の名前は
「ああ、別にいいけど今のは一体?」
「私がやったのはもしもの出来事。もしもこの
少女が来栖君を能力で爆発させたらというのを再現した。飽くまで再現だから幻のようなもの。だけどしっかりと五感はある。」
怖っ!なにこの女の子?怖いんだけど!というか、この女の子もめちゃめちゃ強いじゃん。
「それと、ポケットに飴を入れておいたからなめといて。」
「ああ、これね。ってそのままいれたの?汚ないんだけど!」
「つべこべ言わずに早くなめて。」
「わかったよ…」
俺は伊吹に言われるがままに口に飴を放り込んだ。うん?これ…
「なんか賞味期限切れみたいな感じなんだけど。」
俺がそう言うと、伊吹はしまった、という顔をした。そして、隣の白い少女は呆れていた。何か不味いのだろうか?
「もしかしてオリジナル持ってきたの?」
「い、いやそうみたいですね。」
「はあ~。まあ良いわ特に影響はないし。じゃあ貴方、発動してみてください。」
「わかった。」
俺はrememberの能力を発動した。そして、新たに俺の右の手の平にread《読む》の文字が現れた。
「よし、成功ね。発動してみて。」
俺は何となくこの能力の使い方分かるような気がしたので、自分の思うがままに発動した。
(聞こえる?それはね、人の心が《読める》の。)
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