第25話
俺達は情報先輩に文瀬日与理について教えてもらった次の日、文瀬を誘うため、四人でBクラスに来ていた。
「失礼するよ。」
天城が教室に入った瞬間、Bクラスの人達が、俺たちに注目し、教室内が静寂に包まれた。そして、どこからか誰かの呟きが聞こえた。
「めっちゃかっこいいんだけど…」
その呟きを皮切りに教室が喧騒に包まれた。
「やば、めちゃめちゃかっこいい。」「あんた、話しかけてきてよ。」「え゛~わ゛た゛し゛?」
「連絡先欲しいな」「どうしたんだろう。」
最早教室の収拾がつかなくなっていた。その様子を見て天城は困った顔で俺を見てきた。
「どうしよう、環。」
「〇ね!食らえ、俺のドロップキック!」
俺が目の前で困った顔をしてもイケメンな天城にドロップキックを食らわせようとしたら、天から俺の脳天に向かって拳が降ってきた。
「やめんか、ばか!」
「痛っ!風花、痛いんだけど!」
「あんたがこんな場所でドロップキックしようとしたからでしょ。するならもっと目立たない場所で。」
「風花ちゃん、止めたわけじゃないんだ。」
俺達がこんなやり取りをしている間に天城は入口の近くにいた女子に文瀬日与理について聞いていた。女子に聞いていた。
「文瀬さんはいるかい?」
天城がそう聞くと、女子の顔はみるみる赤くなっていた。そして、少し恥ずかしそうにしつつも幸せそうに答えた。
「は、はい!窓側の一番後ろです!」
その女子が指を指した先にはこの喧騒の中、一切こちらに興味を持っていない、読書をしている長くて綺麗な銀髪が特徴的な女子がいた。それにしてもあの女子、俺が不良だって呼ばれてるのを知った次の日にすれ違った女子じゃないか?あれのせいで俺かなり心に傷を負ったんだけど。
「ありがとう。」
天城がそう言うと、女子の顔が爆発して、倒れてしまった。どうやらイケメンのキャパオーバーだったようだ。イケメン恐るべし。とりあえず俺達も教室の中に入って天城の後ろについて行った。
「君が文瀬日与理さんかな?」
天城の質問に対して、文瀬日与理だと思われる女子は不機嫌そうに答えた。
「そうだけど、で、なに?あんた達に構ってる暇なんかないんだけど。」
「実はね、君に僕達と一緒に新入生大会に出て欲しいんだ。」
天城の返答に彼女は顔を伏せて少し考えた後に顔を上げた。
「ここだと目立つから屋上に行こう。」
「わかった。」
そして、俺達は屋上に向かった。
「私は姉を通り魔に殺されたの。」
「うん、知ってるよ。」
天城がそう言うと文瀬は目を見開いた。実は昨日俺たちは、あの後彼女の姉が昔通り魔に殺されたということを
「…私もねその通り魔に襲われたことがあるの。」
「あなたも…?!」
「そして、俺の姉さんが風花を助けた。」
文瀬は驚いた顔を見せたあと、ほんの一瞬葛藤したように見えた。そして決心がついたのか、彼女が強い覚悟を持って口を開いたように俺には見えた。
「…私はね、アイツに復讐するためにこの学園に入ったんだ。」
そう言う、文瀬の顔はとても辛そうだった。復讐をしたくないのか、姉を殺されたのを思い出しているのか。どちらにしても、彼女はとても辛そうで、今にも死んでしまいそうだった。
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