第21話

そして、次の日の放課後。俺達は新聞部の部室に向かっていた、のだが…


「見つけたわ。新聞部!」


「あの、ここは茶道部ですけど…」


部屋中に気不味い空気が充満した。今この場を表現するのに最も相応しい言葉は地獄だろう。

風花の頬から耳までみごとに真っ赤になっていった。そして、3秒にも1分感じられるような長く、短い沈黙が続いた。


「ごめんなさい、私達まだ学校に慣れてなくて。」


「そうなんだよね!ね、環。」


そう天城が言うと、俺に向かって目配せをしてきた。あの天城ですら気を使うこの状況。いかに酷いか分かるだろう。


「う、うん。ほら、風花行こう!」


「あ、はい。失礼しました…」


そして、俺達がドアを閉めると中から茶道部員達の話し声が聞こえてきた。


「ねぇ、あの人達があの不良?」「思ったよりヤバいね。」「カツアゲされるかと思った。」「それにしても部室間違えるって恥ずかしくない?」

「「「それな!」」」


中から笑い声が聞こえてくるとそれに伴って風花の気分が沈んでいくのが明らかに分かった。

先ほどからこのやり取りの繰り返しなのだ。新聞部の部室だと思って開けると、そこは違う部活の部室なのだ。それが何度も続いた結果、風花は完璧にメンタルブレイクを起こした。


「絶対におかしいよね。多分新聞部の仕業かな。だからそんなに落ち込まなくていいよ、風花ちゃん。」


「あはは。そうだね、軽井さん…」


「ダメだ。風花ちゃん完璧にやられちゃってるよ。絶対新聞部の仕業なのに。」


「こりゃ、俺達がいくら励ましてもダメっぽいな。今日のところはもう引き上げるか。」


「そうだね。」




そして、一週間が過ぎた。この一週間、ずっと同じようなことが続いていた。そのため、三日目辺りから余りの精神的ダメージを受けた結果、空野風花の面影はなくなってきていた。さらに、この一週間で環達の評判はどんどん下がり、そこに軽井明も入ったため、彼女はなし崩し的に環達と学校でこの一週間過ごしていた。


「はあ、もうダメだ。新聞部全然見つかんねえよ。」


「そうだね、環。流石の僕もそろそろきついよ。」


「風花ちゃんもう何にもしゃべらなくなっちゃったよ。」


「なあ、天城、軽井さん。何か良い考え、ない?」


「「……」」


「おい、無視するな、って、、」


うん?二人とも動いてない?いや、二人だけじゃない。さっき間での周りの喧騒すら聞こえなくなってる。この感じ、もしかして


「こんにちは。」


後ろから声が聞こえ、振り向くとそこにはあの時の白い少女がいた。相変わらず幻想的で、幼いながらにそこに確かに存在する美しさに思わず見とれてしまった。そして、だからこそ頬に刻まれたruleの文字が異様な存在感を放っていた。


「こんにちは。えっと、何でこんなところにいるんですか?」


「実はあなた方が現在置かれている状況をちょっと変える為の手助けをしようと思いまして。」


彼女はそう言うと、地面に手を当てて、目を閉じた。そして数秒すると、彼女は立ちあがった。


「これで新聞部の部室に行ける筈です。では、私はこれで。」


「待ってください!」


彼女が立ち去ろうとしたので、俺は彼女に試験の時のお礼を言おうと、彼女を呼び止めた。


「はい?なんでしょう?」


「実技試験の時はありがとうございました。本当に助かりました。」


「いえ、お礼を言われるようなことはしていません。飽くまで私達は貴方にきっかけを与えたに過ぎません。それでは。」


彼女を再び呼び止めようとしたが気づいたら彼女は消えていて、周りの喧騒も戻っていた。

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