第11話
「風花、少年…じゃなくて環、着いたぞ。ここが言英学園だ。」
「おお。でけーー!」
ここが言英学園…。体験入学のときも思ったけどやっぱここめちゃくちゃでけーー。迷子になりそうだな。
「おーーー……」
「環少年、入学式が行われる体育館は向こうだぞ。」
「あ、はい、すいません。」
は?!思わず言英学園の大きさに圧倒されて我をなくしていた。恐ろしいな言英学園。流石だぜ。
「お姉ちゃん、入学式の準備は大丈夫なの?」
「もちろん大丈夫だよ、我が妹よ!」
「スピーチ原稿は?」
彼女がそう聞くと彼女の顔から冷や汗が大量に流れ、目線がブレにブレた。目泳ぎまくってんじゃねえか。
「…もちろん大丈夫、じゃないよ。ということでお先に行ってるね!」
そう言って、空野先生は瞬く間に走り去って行った。
「あの、空野さん。スピーチ原稿って何ですか?」
「お姉ちゃんが、この学園の教師だっていうのは知ってるよね。」
「うん。」
「実は学園長もやってるんだよね。」
どうやら空野先生は学園長もやっているらしい。ふふ、風花も冗談がうまいな。学園長があんな時間に駅前にいるわけないじゃないか。だってそれが本当ならあの学園長遅刻ギリギリじゃないか。
「え?えっと、マジで?」
「はい。マジです。」
「この学園大丈夫なの?」
「大丈夫、だとは思います。私も心配なんです。それより早く行かないと、入学式に遅れちゃいますから行きましょう。」
「あ、はいそうですね。」
「体育館は向こうです。ついてきてください。」
「ありがとうございます。教えてくれて。」
「おお。相変わらず体育館もでけーー。それにしても姉さんが通り魔に襲われてた女の子を助けたって言ってたけどまさかガチ恋勢までつくってたなんてなー。」
「!?あのときのことは忘れてください!あれは、その、違くて…。もう、思い出させないでください!」
俺がそう言うと彼女は恥ずかしそうに否定した。確かに俺だったらあれは死ねるな。あれ?というか今の俺って何かキモくね?いや、これ以上は考えないようにしよう。
「あはは、すいません。」
「環さんの丁寧な口調が怖いです…環さん、実は案外性格悪かったりしますか?」
「よし、ではもう席に着きましょうか。だいぶ人も集まってきたので。」
「あ、今話を反らしましたね。」
はてさてなんのことだか?僕は話など反らしていませんが。僕の性格は至って真っ直ぐですが。
「あ、環君じゃないか。おーい。環くーん。」
ん?あのイケメン好青年は!?
「やあ、親友じゃないか。」
「あ、覚えててくれたんだね、良かった。合格発表見た後から連絡が1回もなかったから忘れられたのかと思ったよ。」
「はは、そんなことないよ。」
「良かったー。」
本当に忘れてたなんて死んでも言えないな、こんなにキラキラしたイケメンスマイルを見せられては。というか今日の俺誤魔化してばっかじゃ?いや、そんなことはない。ないったらない。うん。
「絶対忘れてたでしょ。」
「うるさいですね、風花さん。」
「ひどくない?!」
「あ、ところでずっと聞こうと思ってたんだけど、その口調どうしたの?僕と戦ってたときは何だか、こう、もう少し尖ってなかった?」
「確かに。うーーん…。何でだろう、まあいっか。」
「そうだね!」
「薄っ!もう少し考えてもいいんじゃ。というか話聞く限り会ってる回数めちゃくちゃ少ないよね。」
「入学試験と環君が退院した後に病院でと、合格発表とで3回ぐらいだね。」
「何でそんな仲良し何ですか?」
「なんか、こう、会う前から魂でつながってたみたいな。なんか信用できるんだよね、こいつ。」
「本当何でだろうねー。」
「はあもういいわ。考えるのやめた。せめてこいつらとは違うクラスではありますように。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます