第10話
俺は今言英学園の教師の空野声(自称神様)という少し残念な人の車に乗せてもらっている。
(?なぜか今ものすごい失礼な紹介をされた気がしたが、なぜだ?)
「気のせいだ。」
「心の声を読んだ!?」
そして今俺の隣にはその人の妹だという空野風花という人が座っている。
「じーーーーーーー。」
その子の容姿は茶髪に緑のメッシュが入ったロックな髪色にくりんとした可愛い目。ちなみにとても空気抵抗が少なそうな体だった。
「なぜか今すごく不快になりました。不思議です。」
なぜだろう、不思議だねー。
「じーーーーーーー。」
そして、今妹さんはすごく俺を見ている。なぜだ。
「あの、そのメッシュって…」
「地毛ですよ。」
気まずすぎる。なんでこんなに見てくるんだ…俺の顔は5秒見つめればかすかに不快になると評判なのに…
「あのなぜ俺の方を見ているんですか?」
「あなたがあの方に似ていたので。」
「あの方?」
俺がそう聞くと彼女はまるで何かに心酔しているかのように目をトロンとさせ、頬を赤らめた。
「はい…その方の名前は来栖結というのですが…」
「え?」
「あの、何か?」
「い、いえ。別に。」
たまたま同性同名ということもあるだろうし…
「そうですか。あ、それでですね、あの方は、本当にかっこよくて、通り魔に襲われていた私のところに颯爽と来て、『大丈夫か、風花』って言うんですよ。」
ま、まだ姉さんと決まったわけでは…
「そしてですね、あの方は華麗にtie《結ぶ》の能力を駆使して通り魔を撃退したんです。もうそのときの来栖様ったら本当にかっこよくてあれ以来会えていないんですがきっとあの方は今も私のことを影ながら見守ってくださっているはずです。そして私が危機に陥ったらこう言うんです『大丈夫か風花』って。キャっ///もう好きぃ!」
ああ、これ姉さんだ。100%姉さんだ。姉さん1ヶ月くらい前に通り魔に襲われている人を助けたとか言ってたもんなー。姉さん、なにガチ恋勢作ってんの!はあもうやだ。やめてくれ。これ以上聞きたくない。恥ずかしい。共感性羞恥がヤバい。
「風花、また出てるよ。」
「あ、ごめんなさい。君もごめんね、えっと名前は…」
「環です。名前。」
よし、ここで敢えて苗字を出さずに俺が来栖結の弟だという彼女が知ったら羞恥心で倒れてしまいそうな事実を隠すことが出来る。流石だな俺。
「あ、環さん。名字はなんて言うんですか。」
な?!自ら地雷に踏み込みに来ただと…?!ここは言うしかないか…どうせ学校に行ったら俺の名前なんてバレるかもだし。
「えっと、来栖です。」
「え?あの、今なんと…」
「来栖です。」
「えっと、ということはつまり、そのあなたは来栖結様の弟さん?」
「えっと、はい。そうです。」
彼女の顔は見る見るうちに茹でダコのように赤くなり髪が巻き上がって、髪が巻きあがって?!ちょ、車内なのに風が吹いて?!どゆこと?!これがこの子の能力?!
「キャーーーーーーー!嘘でしょ、ということは私、あの方の弟さんに向かってあの方の話をしていたってこと!?」
「ちょ、落ち着いて!風、風が!」
「嫌だもう。穴があったら入りたい!なくても掘りたい。それでその上からコンクリートを流して固めて永遠にそこにいたい!」
「死んじゃうよ!?というか、その何だ。元気出せって!そういう日もあるよ!」
「どういう日ですか!?憧れの人の弟に向かってその人のお姉さんの話をガチ恋テンションでする日ですか!?」
「風花、冷静に。」
残念な人がそう言うと風がようやく収まった。
「あ、ごめんなさい。また取り乱して。」
「い、いえ。」
どうやら俺はとんでもない人たちの車に乗ってしまったらしい。
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