第7話
退院した翌日、俺は合格発表の場に来ていた。そして、試験結果は…
「よっしゃーーー!」
「良かったね、環。」
俺は言英学園に合格していた。正直なところ問題は全部解けたが、実技試験のこともあり少し不安だったのだ。
「環、帰ってお祝いしよ!」
「ごめん、姉さん。この後、友達の合格発表にも付き合わなきゃだから。姉さん先に帰ってていいよ」
「分かった、先に帰ってるけど気を付けてね、最近この辺りに通り魔が出たらしいから。」
「え!?まだ捕まってなかったの?もう一年くらい経つよ、通り魔出てから。」
「うん、それが襲われた人の記憶がないらしくてね。そのせいで捕まえるのが遅れてるとか。」
「へぇー、分かった。じゃあね、姉さんも気を付けてね。」
「うん、じゃあね。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「はあー、一人で帰るの意外と寂しいな。やっぱり環について行った方が良かったかな。」
いや、環と友達の時間を邪魔したらダメ。そんなことしたら環に嫌われちゃうかも。うん。
「よし、早めに帰って、先に飾り付けしとこ。」
「きゃあああ!!助けてーー!!」
!?誰?よくわかんないけど、とにかく何か行かなきゃ大変なことになる気がする!
そして、全力で声がした方向に走ること一分。そこでは、ハサミを持った男が、今にも地面に倒れ込んでいる彼女に近づこうとしていた。
「やめなさい!あなた!」
「ん?誰だお前?」
なんとか、息を切らしながら走ったおかげで間に合ったのか、女の子は無事なようだ。そして男は1度こちらを向いた。深く被ったフードとマスクのせいで顔はよく分からないがその目は酷く冷徹なものだった。
「通りすがりの者よ。大丈夫、貴方?怪我してない?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます。助けが聞こえたんですね。」
私は倒れている女子に手を貸した。彼女は私の手をとり立ち上がった。見た限りでは怪我はなさそうだった。
「ええ。ということは、さっきの悲鳴はやっぱり貴方?」
「そうです。私のwind《風》の能力を使ってとにかく広範囲にわたしの声を届けました。まあ、こんなトラブルに誰かが来てくれるかは賭けでしたが…」
「良かったわ、何とか間に合って。あなたの判断は正しかったわよ。なんてったってこの私を呼び寄せたんだから。」
「おいおいてめえら、何俺を無視してやがる。生意気だなぁ。殺すかぁ?殺そうか?」
私たちで話していると男は無視されていることが気に食わなかったのか、不機嫌そうに話しかけてきた。
「あなた、何でこの子を襲っていたの!」
「そりゃあ、俺は通り魔だからなぁ。こういうことに快楽を覚えるのさ。」
「もしかして、あなたがあの通り魔?」
「お!俺のこと知ってるのか嬉しいね。じゃあ機嫌がいいからお前らに教えてやるぜ。俺の能力を。俺の能力はcut《切る》だ。」
「へぇー、あなたとは気が合わなそうね。」
「ん?何でだ?」
「だってあなたと私の能力は正反対。私の能力はtie《結ぶ》よ。」
「へへっ、そりゃおもしれぇ。だが、どのみち俺はてめえら両方とも殺すつもりだ。まずは気に食わねぇてめえを殺した後にな!」
通り魔はそう言うとハサミを私に向けて、その双眸で真っ直ぐと私を捉えた。
「あなたに私が殺せるかしら?」
「殺ってやるぜ。」
「気を付けてください。奴に私の能力wind《風》の攻撃が何故か効きませんでした。」
「分かったわ。どうしてかは分かる?」
私がそう聞くと、彼女は申し訳なさそうに首を横に振った。
「分かりません。しかしそれが奴の能力によることは確かです。」
「分かったわ。あなた、まだ攻撃はできますか?」
「はい。あ、ちなみに私はカマイタチのように風で敵を切って攻撃します。お互いに把握しておかないと上手く連携できませんからね。」
「了解したわ。とりあえず貴方は攻撃してみて。」
どのような状態になって攻撃が効かなくなるのか分からないので私はとりあえず彼女に攻撃してみてもらうことにした。
「はい。分かりました…!」
「作戦会議は終わったか?じゃあ俺から行かせてもらうぜ。」
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