第5話

「先手はお前に譲ってやるよ。」


「へぇー、随分と自信があるんだね。」


「そんなんじゃねえーよ。」


実際戦う手段が何一つとしてないんだよな。マジヤベーな、どうしよう。

大体より深いところを思い出せるって何だよ。こちとら、生まれた瞬間から、思い出せるんですけど。あー、羊水に戻りたい…


「それでは、お言葉に甘えさせていただきます。『空中走行ザ・エア』!」


そう言うと奴は空中を垂直に走った。


「うおっ‼」


なんだあれ!空中を垂直に走ってやがる!


「ははっ、驚いたかい。」


「ちっ!どういうことだってばよ!」


どういう仕組みなんだよこれ。空中を垂直に走ってるということは恐らくrunの能力を使っているということなんだろうけど。なんだ?wallも多分噛ませてるのか?


「考え事をしてる余裕はあるのかなっ!『超高度踵落とし《ハイフォーリングヒール》』!」


奴の憎たらしい声が段々近づいてきたと思い上を見ると、奴がなんと体育館のほぼ天井に近いであろう高度からかかと落としをしてきたのだ。


「うわっ!」


俺は横に全力で跳び、踵落としを避けた。奴が踵落としをした場所を見ると体育館の床がかなり凹んでいた。それもかなり狭い範囲で。つまりあれだけの落下による運動エネルギーをあの1点に集中させてるってことか?!当たったら死ぬだろ?!


「うまく避けたね、でも次はないよ!」


「ちっ!なんで反動のひとつでもないんだよ!」


そう言うと奴は再び垂直に走っていった。でも来ると分かっていれば、


「走り回って避けれるんだよ!って痛っ!何かにぶつかった?」


これは、壁?!そうか、空気を固めて壁にして俺の周りを囲んだのか。そして奴が空中を走るのも恐らくこの壁を利用して…。このままじゃ避けれずにあれに当たっちまう!どうする?


「ははっこれで終わりだよ!『超高度踵落とし《ハイフォーリングヒール》』!」


ヤバいヤバいヤバいどうする?とにかく何かないか思い出せ。俺の能力はremember《思い出す》何だから。何だよ結局飴もらってもなんも体に変化ないし。嘘つきかよあの超絶美少女め!


その瞬間、周りの時間が止まった。いや、実際には、止まってない、のか?ゆっくりになっているだけか。そして、頭の中に声が響いた。


『本当にお前の能力はremember《思い出す》なのか?』


誰だお前!


『俺は俺だよ。俺が俺になる前の俺だ。ほら、思い出せよ。お前の魂に刻まれた記憶を。だって人間の魂は、「ずっと変わらないから」』


そのとき、俺は《思い出した》。俺が俺になる前の記憶を。俺の魂に刻まれた記憶を。そして、俺の右腕に刻まれたrememberの文字が光輝いた。そして、左腕に新たにdown《下がる》の英単語が表れた。この力、なんだ覚えがある。それになんだろう、今ならなんでも出来る気がする。


「ふぅ…」


(?!何だあの少年、急に落ち着いて。)


「くっ!『壁創作クリエイトウォール』」


(何だか分からないがとにかくヤバい。一度壁を建てて攻撃を止めよう。)


天城は落下中に環の周りを囲む壁から壁を生やし、そこに1度着地した。


「器用に攻撃を止めたじゃねーか。壁には、そんな使い方もあるんだな。でもな、そこにいられると、上から見下ろされてる感じがして…ムカつくんだよっ!『減少ダウン』」


そう言って俺は左手で壁に触れた。すると、天城がどんどんと下がってきた。


「なっ!?空気の壁が、低くなっていく?」


そしてあっという間に天城の目線は環と同じ高さまで落ちてきてしまった。


「よしっこれで俺と同じ高さだな。後は、お前に触るだけだ。」


「させるかっ!『壁創作クリエイトウォール』!」


「邪魔だねっ。『減少ダウン』。」


奴は壁を建てて俺と距離をとろうとするが、俺は左手で壁に触れて、それを低くし、目の前の壁をなくしていく。


「なっ!?壁が!」


「はい、タッチ。『機能停止シャットダウン』。」


「!?」


そして、俺が彼に触れた瞬間、彼は膝から崩れ落ち、意識を失った。


「つっっっ‼」


そして、強烈な頭痛が俺を襲い俺もまた彼と共に倒れた。

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