第3話
彼女は余りにも白かった。そのせいだろうか、彼女の周りも幾分いくぶんか白く見える気がする。
見た感じは、小学校高学年ぐらいだろうか?
そして、何より俺の目を引くのは彼女の右頬に刻まれたruleの文字である。
このことから何が起こったのか、ある程度の予測は立つ。
彼女がこの場を《支配》したのだ。その結果により、あの試験官は動かなくなった。しかしなぜあの試験官まで支配されたのだろう?
同じruleの英単語なのに。もしかして、試験官に能力を使わせずに不意打ちで食らったから動かないのか。しかしこの試験会場は厳重な警備があった筈だ。いや、あの能力の前には警備も無意味だな。それに試験管を支配していることからもこの女の子のレベルはかなり高レベル…だけどこんな人テレビでもネットでも見たことがない。こんな強力な力を持っている人が埋もれていることがあるのか…?いや、待てよそもそも…
「あなた、私のこと忘れていませんか?」
「あ。」
「あなたは本当に昔から変わりませんね。」
彼女はそう微笑みながらまっすぐ俺の目を見て言った。
「昔から?俺はお前に会ったことがないぞ。」
どうする?試験中だったから、スマホは持ってきてないし。大声で叫べば誰か助けに来るか?姉さんあたりならワンチャン…?
「まあ、そんな警戒しないでください。少し悲しいじゃないですか。遥々貴方に会いに来たというのに。」
「俺に何の用だ。もう一度言うが俺はお前のことを知らないぞ。」
「ええ、知っていますよ。…それはもう痛い程に。」
なんだ?急に深刻な顔に…さっきまでは少なくともポジティブな表情ではあったのに、この落差は一体。彼女と俺になにか関係が?
「さて、いくら話していても話は、進展しないので本題に入りましょう。」
「本題?」
「はい。
「私達?というか……」
「?」
「やっぱ戦うのか…」
「?!…ふふふ。」
彼女は1度驚いた表情を見せたが、その後すぐに嬉しそうに笑った。そのあどけなさが俺の心臓を高鳴らせた。いや、高鳴るなよ?!年下だぞ?!ロリコンじゃねえか!
「ゴホン…何笑ってんだ?」
「いえ、予想外に良い反応を見せてくださったので。それにこちらが思っていたよりすんなり受け入れてくれて良かったです。この調子なら私が手助けしなくても勝てそうですが、心配なので念のため渡しておきますね。」
そう言って彼女が渡してきたのは見た感じは普通の飴だった。
「何だ、これは?」
「それには少し特殊な加工がしてあってdeep《深い》の言葉の力が刻まれています。それを舐めると、貴方は言葉の力でより深いところまで干渉できるようになりますよ。」
「より深いところ?いや、それ以前に物に言葉の力を刻むことなんでできたのか…」
「まあこの技術は恐らく私たちしか持っていないので。話を戻しますけど、この飴を舐めると貴方のもっと深い記憶を思い出すことができます。」
「舐めたら死ぬとかないよな。」
「はい、大丈夫ですよ。むしろ、今よりももっと強くなれます。」
「分かった。ではいただきます。」
ん?これはイチゴ味?
「ふふふ。貴方、相変わらず
「ん?そん時はそん時だよ。」
「ふふ、相変わらずあなたらしいですね。」
「めっちゃ笑うじゃねえか。まあ、嬉しそうで何よりだけどよ。」
飴玉を口の中で転がしながら彼女とのやり取りについて考える。明らかに彼女は俺を知っていて狙いに来ていた。なんだ?一体どこで会った?
俺は考えても考えても分からない苛立ちを落ち着かせるかのように飴玉をガリッと噛み砕いた。
「では、効果は実技試験で実際に確認してください。そして、忘れないでください。どうなろうと貴方は貴方、今の貴方それ以外の何者でもありません。」
「え、それってどういう…っていない?!」
彼女はいつの間にか消えていた。一瞬とかではなく本当にいつの間にか消えていた恐らくruleの能力の影響を受けたのだろう。
「おい、早く移動しろ。一体いつまでいるんだ。」
あ、そういえば忘れていたが、試験官がいたんだったな。
「はーい。」
そして俺はとうとう実技試験の会場に向かった。
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