第2話


「はぁぁーー」


疲れたー。やっと筆記試験終わった。取り敢あえず問題は全部解けたし、大丈夫、な、はず…


「よし、帰るか。」


「それでは次に実技試験の会場に移動してください。」


え!?嘘でしょ。

俺そんなの聞いてないんだけど。どこか見落としたか。いや、まさかそんな筈は…

そもそも俺の英単語、remember《思い出す》だぞ。忘れる訳がない。それに、どうやって戦えと?いや、まだ内容が戦闘だと決まった訳では…

それにもしミスだったら俺は何もしないまま帰れる筈だ。

よし、ここは諦めて、素直に移動しよう。いや待って、やっぱり怖い。怪我したらどうしよう。いやだー!行きたくなーい!

脳内で今世紀最大の葛藤を繰り広げていると肩を突然トントンと叩かれた。


「すいません、あとはあなただけなのですが。早く移動していただけますか?」


そう言ったのは、試験官の長い黒髪に目の下の隈が目立つ女性だった。


「あ、すいません。」


なんか地味にトゲがあるなあの人。うん?あの人の手の甲、試験に集中してて気付かなかったけどruleって刻まれてる。確か意味は支配する、だったっけ?え、強。そんなん勝ち組人生ですやん。


「あの、余りこっちを見ないでいただけますか?キm、ごほん、緊張するので。」


「あの、今俺のことキモいって…」


「いいえ、言っていません。」


「いや、今確かにキモ…」


「言っていません。さっさと移動しやがってください。」


「はい…」


しょうがない、ここは素直に移動するか。それにしてもトゲありすぎでは?あれが未来の新入生にする態度か?あ?ここは1つ文句でも言ってやるか。コホン。


「あ、あのー先程は…」


「…」


試験管の女性が止まった…?まばたきもしてないし、毛の1本に至るまで完璧に静止してる…

だけどさっき部屋を出ていった人達の足音は聞こえる。どういうことだ?今この部屋だけ止まっている?いや、少なくとも今止まっているのはあの女性だけだ。俺は動けているし、考えることもできる。その時、部屋の中に一陣の風が吹いた。そして、いつの間にかそこにいた。透き通るような白い髪に、色素を一切含まない白い瞳、そして驚くほど白い肌の女性。


これが俺と彼女の初めての出会いだった。

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