4話 赤銅聖羅と横山直美 (1)


「クリスチーヌさん、体育館の監視カメラを私の秘書に送信していただければ京極は釈放できます。では、カチャ」


 ワタクシは日本国の中枢の人物に、京極釈放を頼む連絡を済ました。


「ふう、これで大丈夫っしょ😅 それにしても京極と出会った昨日から入学式まで激動ね😰」



 今日の午前8時半。

 輝く絹のローブを纏った、

 金髪ショートヘアの美しい顔に小柄な体の聖女クリスチーヌ(26歳女性)


 彼女は、聖クリスチーヌ女子学園1階の校長室の立派なイスに座り腕を組んで、下を向き笑っている。


 校長の机の前に立つ、絹のローブを纏った金髪の巻き髪に細顔、長身の教頭シャーロット(42歳女性)は、不気味に頭を揺らすクリスチーヌ校長を見て、


「校長… どうされました? 今日は入学式です。 新入生340名へのスピーチを書き綴ってきましたか?」


「やだもん、入学式に出ないもん😞」


「なぜですか?」


「だって… イテテ😫」


 クリスチーヌ校長はおしりを浮かし触る。


「昨夜も拉致されて、いつもの東京連合の愚連隊に「入学式出るな……ペっ!」って釘を刺された… 代わりに教頭のあなたを壇上に立たせろって脅されたもん😞」


「そうですか…」


 クリスチーヌ校長はオロナインのフタを回し開けながら、シャーロットを不思議そうに見て。

「シャーロットあなた… 今じゃ、この学校でワタクシ以外で唯一の教員よね? なぜ、あなただけ何もされなかしらね?😧」


 教頭シャーロットは両手を合わせ目を瞑り、

「ワタシの信仰心が… 我らの信仰の『自由の女神』に届いているからでしょう…」

 すぐに思いだして、

「あ? 校長の先ほどの不気味な笑みはなんですか?」


 クリスチーヌ校長はニヤリっと、

「見たぁ? 気づいたぁ?😏」


「ええ」


 オロナインを塗り終えていたクリスチーヌ校長は容器をポンと置き、


「我が校の新一年生、京極茜きょうごくあかね😌」


「きょうごくあかね……」


「知ってる?😌」


「え…いえ…」


「少年法で名前は出てないからね? 約2年半前のクリスマスに、中一でありながら一回のケンカで、東京連合の当時の総長を含む成人の男6人殺してる文句無し最狂のワルよ😀」


「6人も殺してたら、まだ10年以上は少年院の中では?」


 クリスチーヌ校長は自慢げな顔で応える、

「少年院から出して入校させたのよ。 ワタクシが大枚はたいて、親交のある日本国の中枢の人物にもちかけた上、遺族とか色々を買収してクリスマスの事件を正当防衛にさせてあげく、ワタクシが京極茜の更生保護員にもなってね?😉」


「とてつもない大金を出してまで、そんなワルを入学させるのですか? ますます我校の治安が悪くなります…」


 クリスチーヌ校長は腕を組み、目を瞑り、


「ワタクシは日本中の道に迷った少女達に更生再起をさせるため、誰でも入れる学費無しの学校を大枚はたいて建てたけど…… 今日からは核をもって毒を制す😌」




 そう…


 アレは聖クリスチーヌ女子学園を開校した、2年前の入学式の帰り道、ワタクシは東京連合に拉致され酷い仕打ちを受けた。

 その場にいた、黒のミニのワンピースを着た、黒の長い髪のサングラス…


 


 と名乗った、あの女… 

 「聖クリスチーヌ女子学園は私が仕切る」と言っていた…

 そういえば、黒のパンプスの上の右足首に、黒のミサンガをつけていたわね。


 以降、我が校のガラスはほとんど割れ、あちこちに焼けた跡。

 教員も逃げて現場に居なくなり、リモート授業も試したけど、モニター 全て壊されて出来なくなったけどね。

 そして、1日10件はある暴行騒ぎ。

 殺人もたまにある。

 行方不明者もけっこいる。

 その上、事あるごとに豹柄服のパンチパーマ率いる愚連隊に拉致されるワタクシ。


 そして… なによりも…


 校内ではびこる危険ドラッグ『チェリー』

 我が校が受け流し場所になり、生徒内での使用も実際にある。


 こんな危険な場所を作ってしまったのはワタクシのせい…

 だから…


 昨日、京極茜を迎いに行った… 横須賀女子少年院に…



 🌳🌳🏢 👀~🚖≪行ってらっしゃい



 面会室で私は京極とガラス越しに固いイスに座ると、思わず。


「イテテ😭」


「痔かよ? オロナインが効くらしいぞ」


 京極茜の、その姿…

 イメージと違い過ぎて…

 我らの信仰する自由の女神の絵の様な…

 捨て子でハーフとは聞いていたけど…

 金のボサった長い髪、青い瞳、奇麗な顔立ち… (ワタクシほどじゃないけどね)

 

 さっそく、一番大事な質問する。


「クスリはしたことある? 興味ある?😅」


「無い。 どっちかって言ったら、そんなんよりも死ぬ前に一度タトゥを入れてみてえ」


 きまり。


「女と女の約束を果たしてくれるのなら、今からここを出してあげる。 タトゥも好きなだけ彫らせてあげる😌」


「このネンショ―から出してくれるし、タトゥの金も出してくれんの? 乗ったよ、女の約束は?」


「ワタクシの校長している学校に明日入学しなさい😃」


「はあ? アタシが明日から女子高生?」


「京極に、聖クリスチーヌ女子学園のアタマを取って仕切って欲しいの😅」


「あんた聖クリの校長か? この横須賀のネンショ―にも聖クリから来たヤツが何人も来てんぞ? 最初1はアタシが全治一年の半殺しにしたな。 ソイツは大人しくなって今も服役してるわ…… アタシがソイツの居た聖クリのアタマを取ればいいんだな?」


「言っとくけど、日本中からワルが集まる聖クリを仕切るのは甘くないよ?😌」


「上等」


「京極がこれから住む場所は、我が校の近くの『ロイヤルプリンセスマンション』。 ネットで検索してVIPのあなたに相応しい名前のマンションを選んでおいたわ、さあ今から少年院を出るわよ😉」


 京極は立ち上がり、ワタクシにガンを飛ばしながら、


夜露死苦よろしく、校長、それと……アタシを塀の外に出してくれてありがとう」


 ワタクシもガンに笑顔で返し、


「夜露死苦ね京極、今からあなたは自由の身よ😀」








★赤銅聖羅目線 入学式の後……



 家のドアを開けると、


「おかえり聖羅せいらちゃん、入学式終わったの? 早かったわね?」


 継母が笑顔で寄ってきた、


「うっっざ」

 ワタシは2階に上がり、部屋の前で3種類のカギを取り出し、

 

 ガチャリ ガチャリ ガチャリ


 カギを開けて、部屋に入り、


 ガチャ ガチャ ガチャ


 カギをかける。


 鼻から下を隠す迷彩のバンダナを外し、

 衣装の入った引き出しを開けて、無数のバンダナを見て、

「明日はドクロで行くか… でもやっぱ迷彩かな?」

 

 壁に立てかけた長方形の大きな鏡に顔を近づけ…

「う~ん…正直カワイイから、この顔キライ… 絶対に舐められるからな? このエクボいらんし」


 次に、白の特攻服を脱ぎ。ハンガーにかけて今まで刺繍してきた言葉を眺める。


狂極愛羅武勇きょうごくアイラブユー怨那愛夢敵おんなあいむてき

愛した女はお前だけ

一生一度のゆめならば命かけて守ります

たとえ我身が朽ちようと咲かせて見せよう赤の一片せつなたましい


 読んだ後に、ジ~っと見つめ、

「狂極軍団特攻隊長を足すか?」


 文字入れるためにミシンを取り出した時、

「あ?」

 思い出した、

「明日から京極は学校に居ないかもしれないからな…」


 ズボンからケイタイを取り出して、

「ア●ゾンなら今日中に届くな? ボウガンでも買っとくか…? ネットなら未成年でも買えるし」


 

 5分後…


新兵器ボウガン、注文完了っと」


 トン トン トン ノックの音…


「あ? うせろババア!!」


「聖羅ちゃん、昼ご飯は?」


「いつもいらねえって言ってんだろ!! うぜえんだよ!!」


「わかった… おなか空いたら、いつでも作ってあげるからね」


「はあ? いるか!! 去れ!! もう声かけてくんな!!」


「パパがドバイの事業に行ってる間、仲良くしましょうよ… 2人っきりなんだから…」


 

 ……階段、下りた?

 

「ふう…」


 セブンスターを加えて、ジッポで火をつける。


「ふ~ 地獄だわ… マジこの家…地獄だわ…」


 向こうも、そう思ってるかも知れないけどな…

 いや… 楽しんでいるか?

 昔、銀座のクラブで働いていた継母アイツは…


 レズビアン


 昔を思い出すと… タバコをつまんでいる手が… 勝手に震える…


 ワタシの京極への、この想いが…

 アイツに植え付けられたのかもしれないと思うと…


 イヤ過ぎる… 死にたくなる…


 グ~~


 腹が減った…

 飯食いに行くか。 ついでに晩メシもプリンもタバコも買ってこよう。


 ドクロのバンダナを顔に巻いて再び特攻服を着て、スタンガンをポケットに入れて部屋を出た。 家を出て単車にまたがる。


    777

 🚥 🏢🏍🚲🚗🚗


 信号で止まると、目の前に、いつものパチンコ屋が見える。


「パチンコか? ユ●チューブとか見てたら面白そうだよな… やってみてえな…でも電子マネーじゃ無理だろうしなぁ」


 ん? 前に止まってるノーヘルの2ケツのハーレーダビッドソン?

 デカい女2人…? 聖クリの3年の制服? 後ろの1人がワタシを振り向いた後で、前の女の肩を叩いて、ワタシを見て指さして、もう1人のデカいのがコッチ見て笑った…


 イヤな予感…💧


「ちっ」


 慌てて走り出そうと思った時には、すでにハーレーから降りて来た鬼のような顔のくっっそ強そうな3年2人👹👹にハンドルをガッシリと掴まれた。でけえ… 二人とも2メートルはあっぞ…💧 てか、どう見ても10代には見えねえ……


👹「おはよう~」

👹「入学式目立ってたじゃん? おめでとう」


「離せよ!」


👹「朝の入学式のバイクのカラ吹かし? あれ超うるさくて、マジでムカついたわ、オマエもしかして調子に乗ってんの?」

👹「同級生のゴミ番長もさあ、オマエのツレに殺されてんだよな? おまえも3年舐めてんの?」


 ち、仕方ない新兵器スタンガンを使うか…


 と思ってたら…


 ⚡ゴロゴロ ザザ――――――   


 急に大雨スコールだよ…


👹「うわ最悪ぅぅ濡れたぁ」

👹「パチンコ負けたし、ビショ濡れだし、全部がオマエのせいよなぁ?」


 髪を掴まれた!

 引っ張られる!

 いってええ!!

 引きずられる!

 倒れた単車!


「やめろって!!」


👹「とりあえずサイフと、ロック外してケイタイ出せ」

👹「ヒマだし、今からオマエの家に遊びに行くわ。 ヒロ君とター君と神谷かみやさんも呼ぼう」


 ヤバい…… 

 こんな奴らが家に来たら……

 悪趣味なエロ漫画になっちまう……


鬼頭姉妹きとうしまいさん! やめてあげてください!》


 勇気ある女の声のする方を向いた…


 え?


 三つ編み眼鏡…? むっちゃくちゃよわそう… 制服は同じ聖クリの3年?


 デカい3年は、

👹「パシリのヨコタマ?」

👹「ヨコタマ? どした? 私らに「やめろ」って気が狂った?」


「その人を助けてください」


👹「おまえにそんな発言力あんの?」

👹「ねえちゃん、ヨコタマの決死の覚悟を受け取らんと」



 デカい鬼のような2人はワタシを解放した後に、三つ編み眼鏡に近づき、


 ガチ――――ン!!👊🌟


 顔を殴られた、三つ編み眼鏡の眼鏡が飛んだ!! 

 さらに、もう1人のデカいのが!


 ボコ!! =👢🌟


 三つ編み眼鏡の土手っ腹に、強烈なサッカーボールトゥーキック…


「うっうう… ううぅぅぅ」


👹「ヨコタマ、おつかれ~」

👹「ヨコタマまた明日な? ねえちゃん、ゲーセン行こ」


 デカい鬼のような3年2人はハーレーに乗って消えた。

 ワタシは落ちている眼鏡を拾い、三つ編み眼鏡に歩み、腰を下ろし、


「ワタシのせいでごめんな? 大丈夫か?」


「うっうん」


 顔を上げた三つ編み眼鏡の、眼鏡が取れた素顔…

 なんか似ているな… 京極に… 

 京極はハーフなんだけど…

 この女… 昔どっかで見たことある?


「うっ…ゲホ!ゲホ!」


「大丈夫か? ほら眼鏡…て、レンズ割れてんじゃん…」


 眼鏡を取った三つ編み眼鏡の指が、ワタシの指に触れた…

 

 三つ編み眼鏡は、右のレンズが割れた眼鏡をつけた…

「ありがとう、割れた眼鏡でも無いよりマシです」


「ぷぷぷ…」

 笑っちゃいけないけど…

 眼鏡曲がって、角度も微妙にずれてるから… ぷぷぷ


「良かった、笑ってくれて」


「え?」


「なんかツラそうな顔してたから」


「え? うっうん…」


 三つ編み眼鏡は立ち上がり、

「それじゃあ」

 去ろうとしたから、


「待ってよ、三つ編み眼鏡先輩の名前は?  ワタシは赤銅聖羅しゃくどうせいら


横山直美よこやまなおみです、でも学校じゃ「パシリのヨコタマ」って呼ばれてます」


「横山先輩、お礼にメシでもおごらせてよ」


「え?」


 思わず言ってしまった… ちょっと照れ臭い…


「いやあのさあ… 1人じゃ入りにくい店とかあるじゃん?」


「焼肉とかですか?」


「ああ… 焼肉いいね…行こう、しばらく行ったことないし」


 単車を起こし、またがり、

「横山先輩、後ろに乗ってよ」


「え?」


「恥ずかしいか? ワタシの改造した単車は?」


「そ、そんなことないですよ」


 横山先輩は後ろに乗った。

「しっかりワタシに掴まってろよ?」


「うん。 ヘルメットは?」


「ははは、ごめん無いわ」


「危ないからヘルメットは付けた方が良いと思います」


「考えとく」


 信号が青だったから走る。


 あ?


 初めて、自転車時代から… 京極以外のヒトを後ろに乗せた?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る