5話 赤銅聖羅と横山直美 (2)

 

 赤信号で止まると、近くの右前方に古い焼肉屋が見える。


「ああいう古いトコの方が意外と美味いんだろうけど、大抵のトコは電子マネー使えないもんな」

 

 後ろの、三つ編み眼鏡の横山先輩が、ワタシの肩を優しくポンポン、

赤銅しゃくどうさん、アレ」


「なに?」


「あの入り口の赤いシール『b払い』ですよ」


「マジか? 下りて先輩」


「はい」


 単車を道路脇に止めて、一緒に焼肉屋に入る。

 客は他に誰もいない。

 適当にコンロ乗せてるテーブルに座る。

 向かいに横山先輩も座ると、


「あの赤銅さん? ワタシもお金を出しますよ」


「助けてくれたし、いいって。 ウチは金持ちだから」


 エプロン付けたオッサンが、コップ二つとオカワリ水の入った容器を置いて、

👴「注文は?」


 ワタシはテーブルの上にあったメニュー表を見て、

「三種類それぞれ1.5人前の学生セット? じゃあこれ、1480円の2つ」


👴「はい」


 ワタシは水を一口飲んだ後、眼鏡の右レンズ割れてる横山先輩を見ながら、

「先輩、見た感じが頭良さそうなのに、なんでよりによって聖クリにいんの?」


「私は全く勉強ができないんです… だけど高校卒業はしておきたいから…」


「ふ~ん、人は見た目によらないもんだな? 勉修学院にいそうな感じなのに?」


「赤銅さん? あなたはなぜ聖クリスチーヌ女子学園に入学したんですか?」


「高校なんかまったく行く気なかったけど、親友が入ったから急遽入学したんだよ。 朝の入学式見た? ワタシの単車が体育館を走り回ってたの?」


「え? は、はい… 人殺しを乗せてましたよね…」


 ワタシは横山先輩を見つめて、

「アレは親友の京極茜… 知ってる?」


「マイクで名乗ってたから…」


「アイツやばくて、もう東京連合6人殺してるんだよね、今日また1人追加したけど」


「入学式だけじゃなくて、入学式と合わせて7人を殺してるんですか? しかも、あの東京連合を…? こわい…」


「大丈夫大丈夫、京極は理由ない殺しはしないから、今度紹介してやるよ…」


 入学式の殺人で、ネンショ―から簡単には出れないかもしれないけど…


 店の白髪オッサンが、一つの大皿とタレの入った小皿二つ置いて、

👴「はい学生セット二つ、ハラミ、ブタロース、トリモモ」

 調理場に去る。


 ワタシは割りばしを開いて、肉を適当に網の上いっぱいに乗せる…


 じゅわわ~~


 ワタシは焼けていく肉見ながら、

「うまそう♪」

 先輩も、トングで乗った肉をひっくり返しながら、

「おいしそう♪」


 もう喰えそうだから、ワタシの鼻から下を隠すドクロのバンダナを外した、


「食え食え先輩、足りなかったら追加も頼むから」


 ん?

 先輩… 肉じゃなくて、ワタシの顔を見てる…?


「先輩どうした?」


「あっ? …いえ…なんでも…」


 パク…

 久しぶりの焼肉うんまぁあぁぁぁ!🤣

 あ? コメいるな? これ?


「ライス二つ!」


👴〜 🍚🍚 


「赤銅さん、お肉おいしいですね♪」


「ほら先輩、ゴハンも食べて」


「うん、ありがとう」


 ( ◠‿◠ )🍚🥩🔥🥩🍚( ◠‿◠ )


「先輩、コメもう食べないの? いらないなら貰っていい?」


「あ、どうぞ、赤銅さんはよく食べますね?」


「ははは、明日からダイエットするから、だから今は腹いっぱい食う」


「ふふふ、そうですね」


 コメの入った茶碗を横山先輩から受け取ったワタシは、京極を思い出して、

「貧乏でイヤしい京極はもっと食べっぞ」


「そう…」


    💰お会計💰


「はあ? b払いできないだと?」


👴「そうだ。 使えるの息子と交代する夜営業だけだ」


「オッサン簡単だって、3580円だろ? ワタシの携帯のb払いの画面に金額打ち込んで、オッサンが確認すればいいだけだから?」


👴「そんな事を言われてもパソコン知らんし、オマエ柄悪い恰好だし、もう1人は聖クリの制服だし信用できん… 聖クリのヤツラには何度も食い逃げされてるからな」


「なら息子を連れて来いよ? 待っててやるから」


👴「息子は6時にならんと来んからね」


「ちっ…面倒くせえ店だなぁ…」


 後ろに立っていた横山先輩が、


「これ」


 1万円札?


👴「はい、ありがとうね……はい、お釣り」


 色々と思う事があるけど、とりあえず店を出た。


「先輩ごめんな?」


「いえいえ、どういたしまして」


「何から何までゴメン、次回こそ、お礼をさせてくれ」


 横山先輩はスカートのポケットからケイタイを取り出した…

 数日前に売り出されたⅡフォンの最新? 

 ワタシが欲しかったヤツ?


「なら… 赤銅さん、ライン交換しましょう」


「え?」


「あ? 図々しくてごめんなさい… 学校のパシリとラインなんて嫌ですもんね…」


「ラインね… ライン…」


 まごまごしていると…


「まさか…? 赤銅さん?」


「ああ…したこと無い… 正直、言うと京極以外に友達いないし、京極はケイタイ持ってないし」


 横山先輩は嬉しそうな顔で…


「ならアカウント取って、私とラインしましょう」


「うっうん…ちょっと待って」


 2分後…


「これで赤銅さんと私はライン友達ですね♪」


「あ? ああライン友達だな…先輩」


 喰い過ぎで、腹が痛くなったから…

「悪い、また今度な?」

 単車にまたがった。


 横山先輩は最新のケイタイを顔の横に持ってきて笑って、


「またラインします」


 私は右手をバイバイと振った後に走る…

 本人には言わなかったけど…

 横山先輩… オリエンタルの香水のすげえいい匂いがした…




 コンビニで晩の食料買って、部屋に戻りカギをかけた。


 夜…


 イスに座って、届いた新兵器ボウガンの説明書を読んでいると…


 前にあるノーパソの横のケイタイが、


 ピロン ピロン ピロン


 ラインが鳴る…


 あ? 横山先輩かぁぁ? めんどくせえぇぇっと思ったけど、

 ちょっとうれしいとも思った…


 ラインて見たら既読ってのが付くよな? 

 …すぐ見たら、なんか恥ずいから、2分、

 長く感じた間を置いてラインを見た。


 先輩の写真アイコンは『クマのぬいぐるみ』? 

 

 ラインの名前は、


『横山先輩』…


 なんだよおい? この名前…先輩もラインする相手が他にいなかったてことか?


「ふふ」


 思わず笑った。


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