第5話 立場の差

 貴は足しげく由美奈の店に通った末、結局二人は再度付き合い始めることになった。が、今度は貴が由美奈に入れ込んだ形となった。

 再び付き合っていくと由美奈の今までの苦労を知っていく様になり、自分の今まで歩んできた人生と比べるようになった。

<自分は由美奈と別れてから何か変わったんだろうか?いや、大して変わってはいないまま年月が経ったんじゃなかろうか?自分がこのまましがない一公務員では情けないし、今のままでは由美奈とは到底釣り合う訳がない。じゃあどうする?>


「あら、この曲。このCDまだ持ってたの?」

「ああ、前に付き合ってた時お前に無理って買ってきてもらったやつだからな」

「未練がましいのね」

「ああ、そんなもんだな」

 しばらく沈黙が続いた。 

「なぁ由美奈」

「なに?」

 夕飯を作りながら背中を向けたまま生返事する。

「おれともし一緒になったらどうなっててほしい?」

「ん?どういう事?ちょっと意味わかんないな」

「だからさ、俺はこのままでいいのか?ってことさ」

「別にいいんじゃない?ちゃんと働いているし」

「まぁそうだけどさ。やっぱりそういう仕事してると旦那がそれなりの仕事についていた方がいいんだろ?」

「あはは、何それ!偏見じゃないの?別に関係ないんじゃないかな」

「なんだよ、笑うことないじゃないか。人が真面目に聞いてるのに」

「気にしなくてもいいわよ。あなたはあなたなんだし、あなたを好きなのはわたしなんだし。二人がよければいいのよ」

 貴は何だか自分の力量不足を感じた。別に女性を下に見るわけではないが、やっぱりこのままではいけない気がする。由美奈のためでもあるが、自分のためでもある。しばらく貴は考えてみた。

「いっちょやってみるか」

 貴の思考が徐々に変わっていった。

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