第2話 彼女の現在
貴は智也のセッティングされた合コンで元カノのキャバ嬢「由美奈」と再会した。彼女の風貌は貴が付き合っていた頃の面影は無く、落ち着いた「大人」の雰囲気を纏っていた。女性陣の中では抜きんでている。が、貴は特に気に留めず大人の対応でその合コンの「頭数合わせ」の役割を果たしている。
二人の間柄は当然、この合コンで公にはされないまま進行する。その事実を知るのは当人同士と智也だけである。女性陣が飽き始めたのを察知した所で二次会に行く流れになった。
「久しぶり。元気だった?」
「まぁな。おまえはどうなんだ?」
「あ、わたし?元気よ。今は自分のお店を持ってる」
「てことはママか。立派になったもんだな」
「そんな事無いわよ。久しぶりに会ったんだから、私の店寄ってみる?」
一次会で今後の動向が一向に決まらない様子を疎んだ二人は由美奈の経営する店に行くことにした。タクシーを呼び止め乗り込む。
「池袋北口まで」
「はい、承知しました」
タクシーは歌舞伎町から池袋に向かう。
社内での会話はほぼ皆無であった。と言うか、気まずいわけでは無いが共通の話題が見つからない。だが居心地が悪い訳でも無い。
「今日の合コンはどうだった?お気にの娘いた?」
「何言ってんだよ。俺は単なる数合わせだよ」
「そう。私が来ること知ってて来たの?」
「ああ、智也に泣きつかれて渋々な」
「そう。私はいろいろ期待したけどな」
「なんだよ、そのいろいろな期待って」
「合コンなんだから新しい出会いよ」
「何だそれ。おまえには男くらいいるだろうよ」
「さぁ、それはどうかしら」
タクシーはいつの間にか「東京芸術劇場」の横を通り過ぎようとしていた。
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