あなたが落としたのは?


 ザバー


女神「あなたが落としたのは、金の斧ですか? 銀の斧ですか?」

木こり「いえ、どちらでもありません」


女神「あなたは正直者です。両方差し上げましょう。それでは」


 ブクブク………


木こり「いや、俺の斧返せよ!」




女神「あなたが落としたのは、金の斧ですか? 銀の斧ですか?」

木こり「いえ」


女神「それでは、この平凡で何の変哲もないどころか、柄の部分が少し腐ってて、みみずのったような字で名前が書いてある、このクソ汚ねえ斧ですか?」

木こり「うるせえよ!」




女神「あなたが落としたのは、この金の小野ですか? それとも、銀の小野ですか?」

木こり「誰だよ! 小野って!」




女神「あなたが落としたのは、この金の小野妹子ですか? それとも銀の小野妹子ですか?」

木こり「なんだよ小野妹子って!」


小野妹子「私はあなたに惚れました。恋に落ちたのです」

木こり「やかましいわ! っていうかてめー男だろ!」




女神「あなたが落としたのは、金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」

木こり「いえ」


女神「それとも、斧を落としてOh!No!って気分ですか?」

木こり「…………」


女神「………」


 ブクブク………


木こり「逃げんな!」


女神「あなたが落としたのはテンションですか?」

木こり「ああ! そうだよ!」


女神「三段落ちのつもりでしたが、うまく落ちましたか?」

木こり「知らねーよ! 失敗だろ!」




女神「あなたが落としたのは、この数学の単位ですか? それとも英語の単位ですか?」

学生「両方だよ!」




女神「あなたが落としたのは、この金のハンバーガーですか? それとも銀のハンバーガーですか?」

男「普通のバーガーでお願いします」


女神「ここで召し上がりますか? それともお持ち帰りですか?」

男「お持ち帰りで」


木こり「なんか関係なくなっちゃってない!?」




女神「あなたが落とした斧のせいで私の片腕が切断されてしまいました。どうけじめをつけてくれるんですか?」

木こり「……すみません」




女神「あなたが落としたのは金の斧でも銀の斧でもありませんよね? 金、銀は鉄に比べて柔らかく、鉄の方が5倍は硬いと言われています。どう考えても木を切るのに適していませんね」

木こり「……」


女神「あなたが今落としたのは、金のウロコですか? それとも銀のウロコですか?」

木こり「確かに目からウロコが落ちたけども! いや、実際にウロコは落としてないけども!」


女神「あなたは正直者です。金のウロコ、銀のウロコ、そして、普通のウロコを差し上げましょう」


 ブクブク………


木こり「いや、だから俺の斧返せよ!」

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短編小説集 コメディ編 あーく @arcsin1203

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