神○○
「最近思うことがあって」
「何を?」
「『八百万の神』ってやっぱいるんだなーって」
「どうした急に」
「ほら、何かあったらすぐ『神』『神』って」
「いやいやいや、それは違うから。」
「何が違うん?」
「それ『八百万の神』っていう訳じゃないから。『この人は私にいいものを見せてくれた』『いい物を恵んでくれた』ってことで『神』って言ってるだけでしょ?」
「あー! そういうことか! ……わからん」
「わかんねぇのかよ。ほら、例えば『神授業』」
「『神授業』?」
「めちゃくちゃわかりやすい先生の授業。たまにそういう人いるでしょ?」
「いや、それはただの『わかりやすい授業』だから。『神』ってまでにはいかないかな」
「お前何様だよ」
「そもそも『神』じゃ地位が高すぎるんだよ。俺たち人間だぞ。もっと地位を下げて……『大臣』あたりでどう?」
「『大臣授業』ってなんだよ。総理大臣が授業でもするんか?」
「そっか……じゃあもっと下げて『先生』で」
「『先生』なんだよ。授業してる人が」
「そっか」
「じゃあこれは? 最近聞き始めた曲があって『神曲』って思ったんだ。ほら、イヤホン貸してやるよ」
「……」
「……どう?」
「いや、俺洋楽分からんし。お前洋楽聞いてんの? 他の奴らとは違うぜアピール?」
「違うわ」
「車から大音量で洋楽流すやつたまにおるけど、絶対英語分かってないだろって思ってる」
「やかましいわ。じゃあお前にとって『神曲』は何なんだよ」
「うーん……『讃美歌』かな?」
「それ『神曲』じゃなくて『神に
「難しいな」
「じゃあこれは? 『神プレー』」
「『ハイライト』とか『MVP』でいいじゃん」
「うん、それ言ったらおしまいなんだけど。じゃあ『神対応』とか」
「……『好待遇』『VIP』とか?」
「
「でもさあ、『神』があるってことは『悪魔』もあるんじゃない?」
「『悪魔』?」
「『神』だけあるのに『悪魔』がないのは不公平じゃないか?」
「言葉に公平さ求めんなよ」
「例えば『悪魔授業』。生徒全員が眠るような授業」
「うわ、地獄だ」
「特に校長先生の話は――」
「やめろ。それ以上はいけない」
「あとは『悪魔曲』。誰もが苦しむような曲。黒板を爪でひっかく音とか、人によっては発泡スチロールの擦れる音とか――」
「確かに嫌だけど、曲か? それは」
「あとは『悪魔対応』」
「『悪魔対応』?」
「お客さんを雑に扱う」
「うわ、最悪」
「別名『塩対応』」
「『塩対応』でいいじゃねえか。わざわざ『悪魔』を使う必要ないだろ」
「『悪魔対応』=『塩対応』。つまり『塩』は『悪魔』」
「いやいや、確かに高血圧になるとか病みつきになるとか、塩は悪魔みたいなものだけど」
「……」
「……」
「まあこんな風に『神』もあれば『悪魔』もあっていいわけですよ」
「助け船を撃沈させないでくれ」
「安心しろ。『捨てる神あれば拾う悪魔あり』」
「『拾う神あり』な。なんで『悪魔』に拾われなきゃなんないんだよ。お前さっきからな、『神』もあれば『悪魔』もあるって言ってるけど、逆は考えないのか?」
「逆?」
「『悪魔』もあれば『神』もある。例えば、ないものをないと証明することを『悪魔の証明』と言う。逆に『神の証明』はないのか?」
「あるよ」
「あんの?」
「例えば、卒業して以来会ってない中学校の同級生とファミレスで会うことになって、懐かしいなーって思ってたら突然『この壺を買うとあなたの罪が許されることは、神によって証明されています』って――」
「ただの詐欺じゃねえか」
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