#2 落ち着け。

何とか、彼女、クリスっつうんですよ。いい名前


でしょ?クリスを落ち着かせたくて、


1つの机に、一緒に座ったんだ。向かい合って。


久しぶりにじっくり見た彼女は、


俺なんかより、


疲れきってて、


今にも萎んで消えそうだった。


「何見てんのよ?」


ったく、こういう可愛げのねぇとこは変わらね


ぇ。


気紛れに、テレビをつけた。


「今回の件に関しては、私は一切、関与してはい


ない。が、逮捕された数名は、私の支持者である


事は、報道によって明らかにされている所であ


り、彼らをあの様な凶行に駆り立てた原因は、恐


らく私にもあるのだろう。』


いけしゃあしゃあと、あのジョー・ブルが、


この前の事件について、つらつら喋ってやがった。


この前は、電話だけだったからわかんなかったが、


そうか、こいつか。


思い出した。


べっとりつけたポマードで、黒髪を


オールバックにした、キザな野郎だぜ。


ますます気に食わん。


しかも、全部テメェの都合いい話にすり替


えるみてぇに。


なーにが、「恐らく私にもあるのだろう。」


だ、


てめぇにしかねぇだろ、クソッタレが。


俺ァ、酒に怒りをぶつけるように、全部、



一気に飲み干した。


テレビで、ニコニコしてやがるブルを


「いい人よねぇ。」なんて抜かしやがる。


…人の気も知らねぇで、このクソババァ。


それにしても、こんなツラしてやがったの


か?


ゴリラみてえな図体に、ぴっちりとポマー


ドを撫で付けた頭、ツラぁそのテの野郎に


ありがちなニヤケヅラ…


ケーっ、気に入らねぇな。


「で、泣いたカラスはもう笑ったんなら帰ぇんな。」


「何よ、相変わらず口悪いわねぇ。」


ンなもんお互い様だ。


くっちゃべっててもあれなんで、さっさと


本題。


事の起こりは、一週間ほど前、アイツが、


補習行ったきり、戻ってきてねぇそうだ。


まぁ、この俺の息子だからな。勉強はから


っきしなんだろうよ。


もちろん警察には駆け込んだそうだが、


門前払い食らったそうだよ。ひでぇ話だ


ね。


…ま、俺も色々お世話ンなったんで、


あんましデケェ口は叩けねぇけどな。


「そんで、俺に探してくれ、と?」


「違うわよ。一緒に探すの。あなたとわたしであの子を探すの。あんた、車持ってんでしょ。」


…脚代わりか。


とりあえず、その日はクリスをうちに泊めた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


翌日、ジェイクが通ってる学校へ向かった。


担任の先生…えっと…なんだっけ?


「息子さんのクラスで担任をしています、


ジョシュア・ブリーソンと申します。」


だ、そうです。黒髪の艶やかな女性。


俺の隣にいるのとは偉ぇ違いですな。


彼女は、母親であるクリスとは握手を交


わし、俺とは会釈だけ。ハハッ。


先生の話によると、息子は確かに素行は悪


く、授業中の態度も褒められたもんじゃないが、ただ1人、リンダ・バージントンな


る同級生の女のコとはウマが合うらしく、


よく遊んでたと。


さらに聞けば、その子もうちのと同じくら


い素行が悪く、色々やらかしてるらしい、


と。


でもふたりと同じクラスの子達の言うのに


は、2人ともお互い同士でいる時だけは、


ニコニコしてたんだと。


俺たちは、その子に会うことにした。

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