5#迷い犬が飼い主に誘導した風船。そしてハクビシン。
「この子です!!ありがとうございます!!お礼に何か差し上げましょうか?」
「いやいや結構ですよ。可愛いわんこですねぇ。でも垂れかに尻尾の風船結ばれたみたいで、可哀想だから外そうとしたら、吠えられちゃったんですよねぇ。」
「元々、この風船を空を飛んでいる時に見たとたんに、首輪を外して追いかけて逃げちゃったんです。
今度から首輪が外れないようにしますから。
『めっ!』でしょ!アナック!!」
「くぅ~ん・・・」
そんな、迷い犬を見つけた男と迷い犬・・・アナックの飼い主のやりとりを、感慨深げにハクビシンのハークは、塀の陰に隠れて見守っていた。
・・・・・・
・・・・・・
別の日、飼い主と散歩中の雑種犬のアナックに再び出逢ったハクビシンのハークは、飼い主が買い物で店前に待たされてる時を見計らって話をしていた。
「ふーん。君もやっぱり獣転生者だったんだ。」
「うん。といっても、この身体は俺の引きこもってた部屋の天井に住んでたハクビシンが憑依したと思えば、転生とは意味が違うかも知れないけど。
で、あの赤い風船どうした?」
「うん。あれから尻尾から紐を飼い主がほどいてから寝床に結んでくれてね。
今は、風船の空気が抜けちゃってね。
落ちてたところをじゃれついたらパーン!しちゃった。」
「あらら。」
「でも、あの風船の破片は飼い主が取っておいてあるの。
この風船が、飼い主へ導いてくれたんだって。
でも、あの風船。もしたしたら前世の男の子の時に飛ばしちゃった赤い風船だったと思うんだ。
僕の前世の手から離れて飛んでしまった為に、僕の前世が車に轢かれて死んだんだと。
その自責にかられて、僕が犬に転生する時空にタイムスリップしてきたんだと。
だって、あの時の風船のゴムの匂いも大きさも感触も全く同じだったからさ。
僕がじゃれてパンクしちゃった時には、大きな声で泣いたけどさ。
風船が慕ってた僕に割られて、「本当に幸せだった」って。パンクした寸前に風船が囁いてたよ・・・」
・・・そっか。あの男が呼んだ時に男に向かって風が吹いて、元の飼い主への道を示したんだ・・・
「そして、僕を飼い主に導いたのは、君。ハクビシンさんのおかげだよ。
あの時に、君が身を挺して木に引っ掛かった風船を取りに行かなかったら・・・」
ぶいーーん・・・
「アナック!お待たせ!!行こう!!」
飼い主が、雑種犬のアナックのリードを掴むと一緒に歩いていった。
「ありがとうね!!ハクビシンのハークさん。また逢ったら風船で遊ぼう!!」
雑種犬のアナックの尻尾には、このスーパーの景品で飼い主が貰ったと思われる、マイラー風船が結ばれていた。
ハクビシンのハークは、その雑種犬のアナックの尻尾のマイラー風船が視界から消えるまでじーっと見送っていた。
「あっ!ハクビシンが出た!!」
「ハクビシンだ!!ハクビシン!!」
「パパがハクビシンは外来種だから、駆除しなきゃとか言ってるよー!!」
「ぎく。」
ハクビシンのハークは後ろから気配がすると振り向いたら、スーパーで貰ったマイラー風船を手にしたワンパクな子供達に囲まれていた、
「やば!!俺がハクビシンだった事を忘れてたぁーーー!!」
殺気を感じたハクビシンのハークは、猛ダッシュで住宅街を駆けて雑木林へ向かって命からがら逃げていった。
~転生ハクビシンと迷い犬の風船~
~fin~
転生ハクビシンと迷い犬の風船 アほリ @ahori1970
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