3#風船に気をつけて迷い犬と戻り道を探して

 「ねぇ、坊や。」


 「なあに?」


 「君の飼い主を探すの手伝っていいかな?」


 「それはいいけど・・・」


 迷い犬は、尻尾の赤い風船を揺らして後ろ足で首筋を掻きながら言った。


 「俺、君と同じく鼻がいいんだ。鼻息で風船膨らませられる位にね!(ウインク)」


 ・・・何言ってるんだ俺・・・


 ・・・出来る訳ねーだろ、そんな事・・・


 「で、君の飼い主の匂いを覚えてる?覚えてなきゃ、意味ないんだけど。」


 「ちょっと待って!」


 迷い犬は、尻尾の赤い風船の艶の如く黒光りする鼻の孔を孕ませて、辺りをクンカクンカと嗅ぎ回った。


 「こっちかな・・・?」


 「解った。」


 ハクビシンのハークは、迷い犬の背中にしがみつくと、一緒に迷い犬の飼い主の家を探し廻った。


 迷い犬とハクビシンのハーク。


 迷い犬の嗅ぎ回る飼い主の匂いの方向に沿って、一緒に探し廻った。


 だが、


 「ハクビシンさん」


 「なあに坊や。」


 「僕の赤い風船、ちゃんと見張ってね。」


 「えっ・・・うわっ!!」


 迷い犬の背に這いつくばるハクビシンのハークの目の前に、鋭利な有刺鉄線の柵が迫ってきた。


 「よいしょ!!ふーーーっ!!」


 ハクビシンのハークは、とっさに吐息を赤い風船に吹き掛けて危うく風船な有刺鉄線に触れずに済んだ。


 「困ったな。俺の手の爪。これで風船を退けたら爪で一発でパーン!だからな。

 手段は吐息で退けるしか。」


 ハクビシンのハークは、迷い犬の背であっちの鋭利に風船が触れそうになると、息をふーーーっ!!


 こっちに風船が鋭利に揺れたら息をふーーーっ!!


 「これじゃ、風船を膨らませてるみたいに肺が疲れるなあ・・・わあっ!!わんこの坊や!!」


 「きゃん!!」



 ブロロロロ・・・



 間一髪だった。


 迷い犬がよそ見してる隙に、向こうから車がやって来たのだ。


 「ビックリした。わんこ、また車に轢かれたらたまったもんじゃねーよ。

 ちゃんの車道通る時は、右左見て渡ろうぜ。

 そんな俺も、前世で車に轢かれたから言う筋合い無いがな。」


 「え?ハクビシンさん?!」


 「あ、こっちの話。」


 ハクビシンのハークが迷い犬の飼い主探しに同行はまだまだ続いた。


 「ハクビシンさん、僕は小便したなったからこの電柱におしっこしていいかな?」


 「いいよ。それより風船がおしっこで濡れないかい?気をつけてね。よっこらしょ。」


 ハクビシンのハークは、迷い犬の背中から降りた。

 

 迷い犬は、片足をあげて電柱の下におしっこをした。


 ハクビシンのハークは、迷い犬が片足をあげている尻尾にふわふわ浮いている赤い風船の上を見とれていた。


 「やっぱり風船っていいな。あれ?」


 赤い風船の上の電柱の張り紙を見た。


 その張り紙には、この迷い犬と全同じく写真と共に、こう書いてあった。


 ≪探しています。

 名前はアナック。茶色の雑種犬。≫


 



 


 




 




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