2#赤い風船と犬の転生
「とったどーーーーーーーー!!」
ハクビシンのハークは、口にくわえていた赤い風船の紐を野良犬の尻尾に結んでやった。
「これでもう飛んでいかないよ。」
「わーい!!風船!!風船!!」
野良犬は、嬉しさの余りはしゃぎ回って転げまわった。
「おいおい!風船を貰ったのが嬉しいのは解るけど、そんなにはしゃぐなよ!!
せっかくの風船がパンクするでしょ!!」
ハクビシンのハークは、必死に耳を塞いでハッハッハッと息をしながら無邪気に踊るようにはしゃぐ野良犬に必死に言い聞かせた。
「ねぇ!ハクビシンのにいちゃん!!風船って知ってる?
風船って、中に軽い空気を膨らませて飛ぶもんだよ!!
ハクビシンさん!!この風船持ってきてくれてありがとうね!!ずーーーーっと、この赤い風船を追いかけてたの!!
うん!!僕が犬として産まれる前からね!!」
「え?」
ハクビシンのハークは、一瞬この野良犬の一言にギクッとした。
「ねぇ!犬の坊や。今さっき、君が「産まれる前から」と言ったよね?
それって、どういうことだよ?!
産まれる前の記憶ってあるのかよ。」
「うん!そうだよ。」
野良犬は、赤い風船沿いに疑心暗鬼なハクビシンのハークに向かって笑いながら言った。
「僕ね!産まれる前は人間の男の子だったのーー!!」
・・・こいつ、俺と同じ獣転生者なのかよ・・・?!
「確か、僕は男の子の頃に街で貰ってさあ。とても嬉しかったわん!
嬉しさの余りはしゃぎ廻ってたら、この赤い風船を誤って飛ばしちゃったの。
でね、空高く飛んでいく風船を街中を走り回って追いかけてたら、前方不注意で車に轢かれて死んだんだ。」
・・・これ、どっかで聞いた歌みたいなシュチュエーションだな・・・?
・・・確か、なんだっけ・・・?
・・・えーと、俺が引きこもりの人間時代に、ネットにあがってたのを聞いた覚えが・・・なんだっけ・・・?
・・・まさかこのわんこは・・・その歌に出てきた坊やの転生・・・?!
「俺も風船好きだぜ。ふふっ。」
「あっ!ハクビシンのお兄ちゃんもおんなじだー!おんなじ!おんなじ!」
・・・俺の場合は、引きこもりの人間時代にネットの動画にあがってた、女の子が膨らむ風船に怖がったり、風船をはしゃいで割りまくる映像を観て興奮してたんだけどな・・・
「あ、言い忘れた。俺はハクビシンのハーク。宜しくな。」
「僕は・・・犬の・・・名前忘れた。」
「ええっ?!忘れたの?!で、何処から来たの?野良犬?」
「野良犬じゃないよ。僕、風船追いかけるの夢中になりすぎて、迷っちゃったの。」
ハクビシンのハークは、益々この犬がこの犬の前世かもしれない風船追いかけて車に轢かれた坊やが、同一人物ではないか?と思った。
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