1#目覚めたら、側で犬が泣いていた。
・・・・・・
・・・・・・
「・・・酷い目に逢った・・・って、ここは何処?」
ハクビシンのハークが目覚めたら目の前に、鬱蒼とした雑木林が拡がっていた。
あおーーーーーーーん・・・
あおーーーーーーーん・・・
「げっ!!犬?!」
ハクビシンのハークは、思わず仰け反った。
「犬!犬!犬!犬!かんべん!かんべん!かんべん!かんべん・・・あれ?」
襲われるんじゃないか?と怯えて身構えていたハクビシンのハークは、その犬の様子がおかしい事に気付いた。
あおーーーーーーーん・・・
あおーーーーーーーん・・・
「泣いてる・・・」
この野良犬は、雑木林の真上を見上げて大粒の涙を流して泣いていたのだ。
「ど、どうしたの?!君・・・」
ハクビシンのハークは、恐る恐る野良犬の側に寄って聞いてみた。
「風船がーーー!!風船がーーーー!!飛んじゃったーーーー!!木に引っ掛かっちゃったーーーー!!」
「風船?!風船と言ったよね?!」
「うん、風船。」
野良犬が前肢で指差して見た先は、木のてっぺんの木の枝に引っ掛かった赤い風船だった。
「ひゃーーーー高い!!落ちたらヤバそう!!くわばら・・・」
ハクビシンのハークは、しかとして素通りしようとスルーした。
あおーーーーーーーん・・・
あおーーーーーーーん・・・
「・・・解った!!解ったよ!!
俺があの風船を取ってくる!!任しとけ!!」
「本当?!」
その瞬間野良犬は、目をキラキラ輝かせてハクビシンのハークを見詰めた。
・・・うわー・・・
・・・これじゃ、どっちみちあの木をよじ登って!あの風船を取らなきゃいけなくなるじゃないか・・・!!
・・・ええいっ・・・!!乗り掛かった船だ・・・!!
ハクビシンのハークは深く息を吸い込むと思いきって木の幹に爪をたててへばりついて、急いでよじ登った。
ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!
ずるっ!!
「おっと!!」
ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!
「ひゃーーーーっ!!いつの間にかこんなに登ってた!!」
ハクビシンのハークは、下を見たとたん脚がガクガク震えた。
「見るな見るな見るな見るな、下を見るな・・・上を見ろ・・・風船が引っ掛かってる枝まであともう少しだ。」
ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!ざっ!!
「よし、あの枝まで向かえ・・・」
ハクビシンのハークは、赤い風船の引っ掛かってる木の枝までほふく前進して渡った。
「風船の紐掴んだ!!よし!!手繰り寄せて・・・あれ?」
風船の紐が、木の枝に絡まって取れなくなっていた。
「な、何てこった!!」
ハクビシンのハークは、口で紐を何度も引っ張って木の枝から風船の紐を取ろうと必死になった、
「よっこらしょ!よっこらしょ!よっこらしょ!」
バキッ!!バキバキバキバキ!!
「えっ?!!」
バキッ!!
「しまったぁ!!」
ハクビシンのハークの重みと振動で、寄っ掛かって乗っていた木の枝にが折れてしまったのだ。
ひゅーーーーーーーー・・・
木の枝と一緒に真っ逆さまに墜落していく、ハクビシン。
「しまったーーーー落ちる落ちる落ちる落ちる!!
せっかくハクビシンに俺は転生したのに、また墜落死して死んで転生かよーーー!!」
・・・あれ・・・?
気が付くと、ハクビシンのハークは
野良犬の背中に乗っていた。
「俺、助かったんだ。クッションになってありがと、犬さん。」
「ありがとうを言いたいのは、僕の方だよ。風船取ってくれたんだ。」
野良犬の上でキョトンとしているハクビシンのハークの口には、大きく膨らんだ赤い風船がフワフワと揺れていた。
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