《第捌話》隠密

木製のドアから、少し軍服が見えたところで間一髪、近くの部屋に入ることができた。



そして、そのまま部屋の中にあったロッカーに入り込み、先程の軍人に見つからないように息を殺した。



「行ったか?」



ブーツと床のぶつかり合う音が徐々に遠くになっていき、静まる。



「行ったみたいだね」



それから2人はロッカーから出て、咄嗟に入った部屋を見て回った。



その部屋は備品庫だったらしく、弾薬や手榴弾、その他の細かい部品が置いてあった。



「何か使えるものあったか?」



「これなんかはどうかな?」



そう言ってカールは、銃剣に付いてる短い剣を取る。



「それ良いかもな、いざと言う時のために服にしまっておこう」



生まれて初めて刃物を持ったカールだったが、ペトラのためと考えたら自然と勇気が湧いてくる気がした。



「行こう」



カールの覚悟の決まった声と共に、2人は再び歩みだす。



先程と同様に、建物内には真っ直ぐな廊下があり、両側には多くの扉が続いていた。



「次はあそこに入ってみよう」



レオは指でOKサインを出し、注意深く進む。



不思議な事に、こんなにも多くの扉があるにも関わらず、そのほとんどが別の種類の扉で、次に2人が入る扉は金属の扉だった。



空気が冷たく、真っ暗な部屋。



「電気つけねぇと何も見えねぇな」



そう言いながら、レオはスイッチに手を伸ばし、大きな豆電球に光を灯した。



「な……な、なんだこれは」



「地下に続く階段みたいだね」



地下に続く階段。



不気味な程に奥は暗く、少し行くのに躊躇ってしまう程に、心の中の不安が揺れ出す。



それでも、ペトラを『見つける』という2人の強い意志が勝り、一歩ずつゆっくりと闇に体を浸していく。



「怖いけど、僕達はペトラを見つけ出すんだ。

だから一緒に頑張ろう、レオ」



「そうだな、ペトラを見つけ出そうな」



5分くらいだろうか、壁を伝って行き降りていくと階段が終わり、小さな光が真っ暗な闇の中、2人を導くように照らしていた。



「やっと光があったね」



「これで、少しは安心だな」



そして、その小さな光を追っていくと、最初は広く大きな間隔をとって並んでいたが、徐々に幅が狭くなっていき、気づいたら扉の前に立っていた。



《どくんどくん》



何故か分からないが、この地下にペトラを探す鍵がある様な気がし、心臓の鼓動が高鳴りながらも、勇気をだし扉に手を掛けた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る