《第漆話》剣呑

「まずは倉庫から探してみよう」



夜間ということもあり、人の気配があまり感じられない建物内。



中は想像していたものとは少し違く、そこには飛行機をしまう大きな空間と、それに繋がった管理棟みたいな建物があった。



もう少し人がいるものだと思っていたが、幸いそのようなものは見受けられなかった。



「とりあえず、全部見てまわろう」



カールの声とともに、2人は倉庫内をひと周りした。



「何か手がかりみたいなものはあったか?」



「見た感じ手がかりになりそうなものはなかったね。

ここにはもう何もないみたいだから、管理棟へ行こう」



「そうだな」



そして2人は、そそくさと倉庫をあとにして管理棟へ繋がる扉に手を掛けた。



「大丈夫だ、鍵はかかってないみたいだ。

人もいないし、鍵もかけてないし、結構ちょろいかもな、カール」



「しぃーー、静かにして!

今は人がいないけど、どこに何があるか分からないし、誰がどんなタイミングで出てくるかも分からない、僕らが不利なのは変わらないんだよ。

もし見つかったら、銃殺される事忘れてないよね?」



「あぁ、冗談だよ。

そこら辺の事は分かってるから大丈夫だ」



《いざっていう時は頼もしいんだけど、たまにこういう所あるから、心配なんだよなぁ》



建物内に入った時の感想、とても暖かかった。



中の造りは、いかにも軍の施設という造りで、中央に通路がありそれを挟むようにして無駄なく部屋が続いていた。



そして、その部屋から通路に誰かが出てきた瞬間、2人の子供を容易に視認出来る、見晴らしのいい造りだった。



「やばいぞ、とにかくどこかの部屋に入って作戦を考え直そう」



「確かに、この造りは想定外だ。

見つからないように、早くどこかの部屋に入ろう」



カールのその言葉が終わりかけた瞬間、扉の開く音がギシギシと鈍い音を立てて聞こえた。



《やばい》


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