《第陸話》侵犯
「とりあえず、あのフェンスに沿って歩いてみよう。
何処か抜け道が見つかるかもしれない」
「あぁ、そうだな。そうしよう」
今にも雪が降って来そうなほど、空は灰色の雲で覆われていて、服を何枚にも重ねてきているというのに震えが止まらないほどに寒かった。
それもそのはず。
家と呼べるものはまだあるが、食糧難のために服を含めた家財道具を一切合切売ってしまったのだから……
残った物と言えば革靴とジャケット数枚、それにズボン1着だけだった。
それ以外は綺麗さっぱり売り飛ばされた。
「カールは寒さ大丈夫か?
結構冷えてきたし、軽装備だったら下手したら凍え死んじぁうぞ……」
「あぁ、僕なら大丈夫。
君と同じ様な格好だけど、寒さには強いんだ」
「ならいいけどよ、何かあったらしっかり俺に言えよ……」
そう話しているうちに、先程の大男2人が立っていた門の反対側に来た。
裏門と言ったところだろうか…………
こちら側にも先程より少し小さいが門が付いていて、大男が2人立っていた。
「どうする……さっきみたいに声かける?」
「いや、声掛けてもどうせ変わらないだろ」
「分かった。じゃあ、先に進もう」
裏門から数分して、飛行機をしまう倉庫であろう大きな建物の裏を通りかかろうとした時。
「おい!これ使えるんじゃねぇか?」
と、レオの声が聞こえて状況は一変した。
なんとそこには小さな穴が、フェンスと地面の間に子供1人やっと通れるくらいの小さな穴が空いてあったのだ。
正門から裏門にかけて歩いてる最中、特にフェンスなどには異常がなくて、入り込む余地がなく少し焦りを感じ、(実際に動いてはいたが)膠着状態に陥っていた。
「やったねレオ!
これで中に入ることが出来る!!」
「ありがとな、カール。
お前が冷静に、作戦を考えようって言ってくれなかったら、今頃どうなってたかわかんねぇ。
マジ感謝してる」
「礼はペトラを見つけたら言ってよ。
それに…まだ軍の施設にも入ってないのに、気を抜いて誰かに見つかったりしたら大変だ。
気引締めて行こう」
「あぁそうだな。
ここで見つかったら全て水の泡だからな」
そして、2人は軍の敷地内に無断で侵入した。
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