「  」

 明日が来て欲しくなかった。


 このまま全ての時間が止まればいいと思った。


 ——はマンションの屋上に立っていた。


 何かに引き寄せられるように。


 そうしている事があたかも当然の事のように。


 ——は焦点の合わない瞳で前を見つめ、歩いた。


 前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、やがて。


 鉄柵の前まで移動していた。


 虚ろげに——は辺りを見渡す。


 空も町も真っ暗な闇に飲み込まれている。どこまでも広がる闇。漆黒の闇。


 その闇の世界が——には唯一の自由に思えた。


 自由を求める為に——は今、鉄柵に足をかける。


 これでいい。


 何もかも終わりにしよう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る