7.新しい風

「何してくれてんだよ、お前って奴は!!」

「なんだよ、リーファス? 何怒ってんだよ?」

「こんなの納得いかねぇだろ! コイツの名がWish Starなのはいい! すげぇいい名だと思う!」

「リーファス、もしかして昼間から酔ってんのか?」

「酔ってねぇ!」

「じゃあ、なんで管巻いてんだよ」

「巻いてねぇ! 酔っ払いの戯言と一緒にすんな!」

「リーフおじさん、ウィッシュスターが、整備されて綺麗になって帰って来たのに、何が気に入らないの?」

「ララ! いい所に来たな! これを見てくれ!」

と、リーファスが、指を差す所にミッドナイトブルーの飛行機がある。

整備され、綺麗に磨かれ、ピッカピカだ。

「綺麗ねぇ、ウィッシュスター、とっても輝いて素敵! 名前も素敵!」

「だろ? オイラが名付けたんだぜ! ウィッシュスター!」

「名付けの才能があるのね」

「そんな才能がオイラに!?」

「そんな才能、どうでもいい!!!!」

と、リーファスが、怒鳴る。

「なんだよ、リーファス! さっきからうるせぇなぁ。何怒ってんだよ? 折角ウィッシュスターが綺麗になって帰って来たんだから、喜べよ。それに、これからちょっと一緒に飛んで来ようかなって思ってんのに、そんなガミガミガミガミ言われたら、飛ぶ前に、気分悪くなるだろ。用があるなら、怒ってないで、さっさと言え!」

「このウィッシュスターに書かれた文字だ、文字! なんだこれは!?」

「オイラの名前じゃん」

「あぁ、お前がなんと名乗ろうが構わねぇ、でも飛行機に入れるな、こんな文字!!!!」

「いいじゃないの、リーフおじさんだって、NEVERって、ブライトのボディに文字入れてる癖に」

「NEVERはいいだろ、NEVERは! コイツはSky Piratesって入れてんだぞ! 飛行機に空賊って文字を入れたんだぞ!!!!」

「だって、スカイ・パイレーツって自分を名乗ってるんだから、いいじゃない」

「ララ、お前はいつから、コイツの味方になったんだ!?」

「あら、私はいつだってスカイの味方よ、ねー?」

と、スカイに顔を傾けて見るララに、スカイも、一緒に、ねーっと傾ける。

「なんだその、ねーってのは!!!! あぁ!!!? 2人揃って、どういう状況だ!!!?」

「なぁ、それより、これ、文字合ってる? ちゃんとスカイパイレーツって書かれてんだよな? オイラ、文字読めねぇから、わかんねぇんだよな、注文した時に、口でお願いしただけだからさぁ」

「合ってるよ、ちゃんとSky Piratesって、空賊って、書いてある」

「そっか、安心した」

「安心できる訳ないだろう!! こんな飛行機!! なんならスペル間違ってくれてた方が、よっぽど良かったぞ!!」

「何言ってんだよ、リーファス、さっきから」

「ホント、リーフおじさん、何言ってるの? さっきから」

「お前達こそ、さっきから2人揃って、なんなんだよ!! いつから2人、そんななんだ!? まさか!? 駄目だぞ、スカイ!! ララは大事なオグルの孫娘なんだからな!!」

「だから、何言ってんだよ、さっきから」

「ホント、何言ってるの? さっきから」

「ボケが始まるには、早すぎるだろ、あぁ、でも、リーファスはすっかりオッサンだよなぁ、ほら、そろそろヤバイよ、その腹の肉も! 革ジャンで隠せなくなってるって!」

「うるせー! コノヤロウ! 名前だけじゃなく、性格まで変えやがって!! お前そんな明るいキャラだったか!?」

と、リーファスは、スカイの首に腕を回し、頭を抱え、絞める。

ギブアップだと、笑いながら、バタバタ足を動かすスカイ。

「スカイ! 愛用機との初飛行、見に来たよ!」

と、走って来たのはカイン。

「うわぁ、ウィッシュスター、凄く綺麗になって戻って来たねぇ。うん? うわ! この文字はない。ないわぁ、駄目だって絶対、うわぁ・・・・・・やっちゃったよ・・・・・・」

やっちゃったってなんだよと、シンバは、カインを睨む。

「お前もそう思うだろう、カイン!」

どうやらリーファスとカインは同じ意見のようだ。

「いいんだよ、オイラの名前を刻みたかったんだ。新しいオイラ誕生と共に、変わらない大切な存在として、永遠に一緒にいたいんだ。コイツには、一生、オイラを捨てないでほしいから」

二度と、もう誰にも捨てられたくない。

その想いは強くあり、ウィッシュスターは、その願いを叶えてくれるだろうか――。

今は深い絆を結ぶ為に、シンバはウィッシュスターに乗り込む。

「今日は雲ひとつない晴天だ、飛行トレーニングには調度いい」

リーファスが言いながら、駐機場の扉を開くボタンを押す。

扉がゆっくりと開き、光が入ってくる。

そして、青い、青い、どこまでも青い、空が広がる。

大空へ、今、新しい風が生まれる――。

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