6.取り戻せ!
「まさか?」
こちらへ向かってくるMONSTERに疑問。
「嘘だろう?」
シャークの顔が疑問から不安へ歪む。
「本気か?」
そして不安から確信に変わり、シャークは慌て出す。
モンスターのスピードが全く落ちる様子もなく、こちらへ向かって来ると言う事は、この船へ突っ込むと言う事だ。
まさに戦争で空軍が行ったと言う突撃隊の如く!!
バカな!?と、シャークは意味もなく、左右、行ったり来たり、そして、逃げ場もないと、その場に頭を抱え、しゃがみ込んだ。
ドガーーーーーーーンッッッッ!!!!!
バカデカいモンスターが、飛行船のデッキから、下へ貫けるんじゃないかと言う程、ぶち当たった!!
その衝撃で、船は大きく揺れ、何人かの船員が船から落ちたが、流石、最強の空賊の船は、それくらいでは、ビクともしない。
確かに、モンスターが突っ込んた所には、ポッカリ穴があき、シュゥシュゥと、煙が溢れてはいるが・・・・・・
暫く、船の揺れが治まるまで、誰も動こうとはしなかった。
シャークも、しゃがみ込んだまま、動かない。
これは夢なのだろうかと、考えているのだ。
このアレキサンドライトの船に、飛行機如きが、突っ込んで来た位で、傷一つ付く筈はない!!
ましてや、飛行機如きで、修理が必要な程の被害が出るなんて事、絶対に有り得ない!!
この船は、アレキサンドライトの!!
最強の!!
アレキサンドライトの!!
飛行船なのだから!!
だが、この音はなんだ?
この衝撃はなんだ?
この揺れはなんだ?
そして、ぶっ飛んで来た何かの破片で、掠った頬の傷。
この流れ出ているモノは血か?
辺りに漂うオイルのようなニオイ。
埃が舞い上がり、口の中が、ザラッとする。
夢ではないと物語る全ての五感。
だが、夢ではないのだと認めるのに、時間がかかる。
シャークは自分の船の旗が、飛行機によって、折れた事にも、眩暈を起こしそうになっている。
自慢の飛行船が、飛行機に!
数え切れぬ程の戦に勝ち抜いてきたアレキサンドライトの船が、飛行機に!
戦闘機でもない飛行機に!
このアレキサンドライトの船が!!!!
「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
立ち上がり、髪の毛を毟るように引っ張り、発狂するシャークの目の前に、ヨイショッと言いながら、現れたシンバ。
「小猿ぅぅぅぅぁぁぁぁああああああーーーーー!!!!! 貴様ぁぁぁぁああああ、今、どこから現れやがったぁぁぁぁああああ!?」
「小猿? オイラに言ってんのか? 見てたなら聞くなよ、この穴からだろ」
それは今、モンスターが開けた大穴だ。
「貴様かぁぁぁぁああああ!!!! あのデタラメな化け物みてぇな飛行機を操縦して来やがったのはぁぁぁぁああああーーーー!?」
「かっこいいだろう? モンスターってんだ」
「アホかぁぁぁぁああああーーーーーーッッッッ!!!! あんなもん、ぶち当てて来やがってぇぇぇぇええええッッッッ!!!!」
「あぁ、大丈夫、心配ねぇから」
「心配ないだと!?」
「あの位じゃぁ、モンスターは無傷だから。ほら、オイラも無傷だし」
と、ピョンと、飛んで見せるシンバに、シャークは、唇から血が流れる程、噛み締める。
もうシャークの頭の中には、小猿をどう殺してやるかと言う事ばかり。
只、殺すだけでは、この怒りは治まらない。
苦しませて、苦しませて、殺す方法をシャークは考え始める。
「シンバ!」
その声に振り向くと、ララが柱に縛られている。
「ララ!」
駆け寄り、ララの縄を解いてやると、ララはシンバにギュッとしがみ付いた。
「怖かった」
同じ背丈、いや、若干、シンバの方が低いので、何故か、ララに抱きしめられているように見える。
「悪かったよ、空賊が飛行機乗りのテリトリーで暴れるなんて、駄目だよな・・・・・・」
それはシンバのせいではないと、ララは首を振るが、シンバは、本当に悪いと思っている。本当に怖い思いをさせてしまった――。
「シンバ、モンスターは、おじいちゃんの飛行機よね?」
ララは、シンバから離れ、シンバを見る。
「あぁ、モンスター。凄いな、お前のじいちゃん」
「凄い?」
「あんな化け物を手懐けてたなんて。あれが愛用機って事は、普段から乗りこなしてたって事だろ? 有り得ねぇって」
「シンバも乗ってきたじゃない?」
「いや、途中から自動操縦にした。オイラにはレバーも重くて、速すぎて風も読めなくて、どうやって手をつけていいか、サッパリだった」
「だからブレーキかけれなくて突っ込んだの?」
「いや、あれは予定通り」
そう言ったシンバに、ララは、
「あれが一番怖かった!」
と、少し怒った顔を見せた。でも直ぐに笑顔になり、
「また助けてくれたね、シンバ」
そう言った。そして、ララはガムパスの方をチラッと見る。
その視線を辿り、シンバは、倒れているガムパスに走り寄る。
「オヤジ!」
「シンバか」
「目が、もう全然見えないのか?」
「いや、大丈夫だ」
「血だらけじゃねぇかよ、シャークにやられたのか?」
「シンバ、お前、オグルの飛行機をどうして?」
「あぁ、実は世界最速の飛行機乗り、リーファス・サファイアと知り合ってさ、ほら、賞金稼ぎの。まぁ、話せば長くなるんだけど、ソイツが、伝説の飛行機乗りのオグル・ラピスラズリの弟子だったとかで、だから、オグルって人の飛行機がたくさんある場所を知って、それで――」
「そうか」
「オヤジは、その伝説の飛行機乗りと、親友だったって本当か?」
「・・・・・・シンバ、お前はサードニックスから出ていけ」
「は?」
「破門だ」
「え?」
「空賊から足を洗え」
「なんだって?」
「空賊としての、シンバと言う名も捨てろ。サードニックスは終わりだ。お前は自分の好きなように名乗り、好きに生きて行け」
「何言ってんだよ、オヤジ!」
「儂はオグルとの約束を破った。飛行気乗りのエリアに、空賊は手を出さない、空賊のエリアに、飛行機乗りは来ない、そう結んだ契約を、儂は守れなかった」
「それはオヤジのせいじゃねぇよ!!」
「いいや、儂のせいだ。もう、儂は無敵を誇れる程、強くない。賊達を束ねられない。儂の目が光っている内は、どこの賊も、それなりに弁えていた。こうなった以上、儂はケジメを付けて、空賊時代を終わらせなければならない」
「ケジメは、シャークに付けさせる! オヤジと、オグルって言う人の約束だとしても、これはシャークが招いた事だ! 責任は、全て、シャークにある!」
「シンバ・・・・・・」
「オイラが、シャークにケジメを付けさせるから、オヤジは、いつものように、ドーンと構えて、見ててくれ」
「シンバ・・・・・・オグルの飛行機が現れた時、本当にオグルが生き返ったかと思ったぞ。アイツを知っている奴なら、皆、誰もがそう思っただろう、飛行気乗り共は、オグル復活に、空賊共に勝機を感じた筈だ」
「オヤジ、死なねーよな?」
「・・・・・・儂が死ぬ訳ないだろう」
「だったら! そんな話しするな! オイラは別に飛行気乗りに味方したい訳じゃねぇ! モンスターも、空賊のオイラに味方した訳じゃない! オイラは、シャークをぶっ殺してやりてぇだけだ! モンスターは、ララを助けたいだけだ! だから、オイラとモンスターは利害関係の一致って奴なんだよ!」
「・・・・・・」
「もうサードニックスには誰も残ってないとか言うなよ? オイラは、今も、オヤジの旗の下にいるんだ! そのオイラが、シャークをぶっ殺してやるよ、サードニックスの名でな!」
「シンバ、お前、大きくなったな。儂が最初に抱いた時、お前は泣かなかった。儂のこの面を目の前に、嬉しそうに笑い、瞳の色を変えた。今でもお前が赤ん坊だった頃の重さ、覚えている」
「くだらねぇ想い出話なんてすんな! オイラ達は、まだ終わっちゃいねぇんだから! いいか、オヤジ、オイラは空が好きだ。だから空賊は・・・・・・サードニックスは、未来永劫不滅だからよ!!!!」
シンバがそう言うと同時に、ララが、
「シンバ、もう、これ以上は、傷が更に開いちゃうから!」
と、自分の服を破り、
「血が止まらない、どうしよう・・・・・・」
と、小さな手で、一生懸命、ガムパスの傷口を押さえる。
「大丈夫だ、儂は、このくらいの血、散々、流して来た。それでも生き抜いた。それに息子が戦うんだ、死んでなどいられるものか! お嬢ちゃんは、誰なんだ? 何故、捕まっていたんだ?」
「もう喋らないで? お話は後でゆっくりしましょう? 安心して? 私は怪しい者じゃないから。私はラティアラ・ラピスラズリ。シンバの友達です」
「ラピスラズリ?」
オグルと同じセカンドに、ガムパスは問う。
「はい。私のおじいちゃんはオグル・ラピスラズリ」
「はっ・・・・・・ははは、そうか、そうなのか、オグルの・・・・・・そうか――」
と、ガムパスは笑いながら、涙を浮かべる。
もっとララの姿をちゃんと見ておけば良かったと、目が見えなくなった事を悲しみ、だが、生きている内に、親友の血筋の者と出会えた喜びを噛み締める。
「ララ、オヤジを頼む!」
シンバはそう言うと、シャークの元へ!
シャークは近付いて来るシンバに、
「お別れは済んだのか?」
と、態と優しい口調で尋ねる。
「別れ? それはテメェだろ、この世とオサラバする覚悟はできてんだろうな? それに、なんだ、その待っていてあげたかのような言い草は? オイラはテメェがオイラをどうやって殺すか考える時間を与えてやったんだ、言うなら、オイラが、尋ねるべきだろう? シャーク、もう足りない頭で考え終わったのか? それとも、もう少し待ってあげようか?」
「キサマァ!!!!」
「怒るって事は図星か?」
「フッ・・・・・・ふぁーっはっはっはっはっはっはっは!」
シャークは、空へ向けて大笑いした後、シンバをキッと睨み、
「貴様は、直ぐに楽にはしてやらん。まずは適度にダメージを与え、生け捕ってから、地獄を見せてやる」
そう言うと、グレートソードの刃をシンバに向けた。
シンバは、右手にジャマダハル、左手にマインゴーシュを構え、それは有り難いと思っていた。
シャークより、シンバは体力に自信がある。
持久力も瞬発力も、若い分だけ、上回る自信がある。
一気に決着をつけられるより、長期戦に持ち込んだ方が、有利だと考えたのだ。
只、力だけを振るう戦い方をされたら、シンバに勝ち目はない。
力の弱いシンバは押し潰されるのが目に見えている。
この戦い、うまく持って行かなければ、シンバは負ける!
風の流れをうまく読まなければ――!
シャークは、グレートソードを軽々と持ち上げ、シンバに、来い来いと人差し指で招く。
シンバの小さな身長と、シャークの馬鹿デカイ身長。
まるで蟻と恐竜のようだ。
余裕で招くシャークに、シンバは踏み込んだ。
長期戦に持ち込もうとは思っていても、直ぐに決着がつけられれば、それでいい。
シャークの喉目掛け、ジャマダハルを突き上げる。
勿論、そう簡単に決着がつく訳もなく、シャークは飛び掛って来たシンバを左腕で、簡単に払い除ける。
吹っ飛ぶシンバだが、直ぐにクルクルと回転し、再び踏み込む。
シャークはグレートソードの柄を右手で持ち、その逆刃を肩に乗せていたが、再び突っ込んでくるシンバに、グレートソードでジャマダハルを弾き返す。
弾き返されるのは計算の内、シンバは何度でも飛び掛り、ジャマダハルを何度も振り戻す。
カキンカキンカキンと鳴り響く剣が重なる音。
勢いのある戦い方をするシンバ。
それに比べ、ゆったりとした隙を見せるような動きのシャーク。
つまり、隙を見せても大丈夫という余裕のある戦い方をしているのだ。
だが、シンバは、只、勢いに任せている訳ではない。
シャークを動かせたいのだ。
もっと動かせて、疲れさせたい。
だが、全然、動いてくれないシャークに、シンバは考える。
そして、飛び掛らずに、シャークの長い足の下を滑るように回り込み、背後をとる。
シャークは、グルンと振り返り、シンバのジャマダハルを弾き返してきた。
これなら動くのかと、シンバはシャークの背後を狙う事にし、今度はシャークの背丈よりも高くジャンプし、シャークの背後へ回ろうとする。
シャークは、何のお遊びだろうと、シンバを目で追いながら、突っ込んでくるジャマダハルを受け流す。
一先ず、この遊びを終わりにし、次の遊びに移ろうと考え、シャークはグレートソードの刃をシンバの横腹に掠らせた。
少し掠っただけだが、服が破れ、シンバの横腹から血が流れ出す。
シンバの勢いが途切れ、横腹の痛さに、少しよろめき、その場を離れ、シャークを睨む。
「はははは、小猿よ、お前は痛さに弱いな。所詮、経験のないクソガキ。教えてやったろう? 人を殺す分だけ、自らの痛みなどなくなる。普通の神経が通わない体となる。いつか自分が化け物だと気付く。それが空賊と言う者だとな」
言いながら、ツカツカとシンバに近付いて来る。
「なんだ、もう降参か? 逃げるなら待ってやるぞ?」
「くっ!」
シンバは横腹の痛さのせいか、苦痛の声を漏らし、その場に跪いた。
そして、目の前がシャークの影で暗くなり、顔をあげると、シャークが嫌な笑みを浮かべ、シンバを見下ろし、グレートソードを高く掲げている。
瞬間、シンバはシャークの背後に回り込み、飛び上がった!
そして、シャークの背中にジャマダハルを突き刺す!
「ぐはっ!!!!」
「シャーク、テメェには、一度、痛みをもらったからな、やられるのは、百も承知だ。お前相手に、何度も苦痛の顔をする訳ないだろ。オイラの演技に騙されるなんて、お前こそ、まだまだ経験不足だな」
そうシャークの背後で囁き終わると、シンバはジャマダハルを引き抜いた。
血が噴射し、シャークは再び、嗚咽を漏らすと、2、3歩、前へとよろめき、だが、直ぐに普通に歩き出し、シンバを振り向いて見た。
シャークが振り向くのと同時に、シンバもシャークに向かって走り出していた。
そして、次のシャークの攻撃を読んでいたシンバは、鉤腕をマインゴーシュで弾き、
「そう何度も同じ手は食わない!」
そう言った。
シャークは鉤腕を外し、そこに仕込んである銃で、シンバを狙うつもりだったが、それができなくなった今、かなりの怒りを露わにした表情。
「鉤足にも何か仕掛けがあるのか? 用心しなきゃなぁ」
と、シンバは笑う。
背中に与えた傷は、かなりのダメージだ。
思いっきりジャマダハルを奥まで刺し込んだのだ。
短剣だと言っても、その刃は30cmはある。
それにジャマダハルは切るより刺す事に優れた剣。
他の短剣とは違い、堅い鎧すら貫通する。
つまり、どんなに鎧で身を守っていたとしても、どんなに強い筋肉を持っていたとしても、ジャマダハルは確実にシャークの背中から腹部に向かって、貫通していると言う事だ。
だが、血も噴射する程だったのに、最初のよろめきと嗚咽だけで、今、シャークは普通に立っている。
まるで何もなかったかのように。
それがプライドなのか、そのシャークの動じなさは、まさに最強。
シャークは、鉤腕が駄目なら、グレードソードしかないと、再び、ソードを振り翳し、シンバのジャマダハルと、激しい剣の打ち合いを始める。
大きなソードに、短剣のジャマダハルは弾き返されるばかり。
どれだけ、刃が重なり合っただろう、既に、シンバは、シャークの力に、ジャマダハルを握る手が、痺れ出して来ている。
このまま続けたら、手の感覚もなくなるだろう。
鉤腕に気を付けながらも、グレードソードから逃げるシンバ。
シャークは背中の傷が痛むのだろう、平然としているように見えるが、動きに鈍さが表れる。特にチョコマカと動くシンバは、今のシャークにとって、疎ましい。
ララは、ガムパスの傷口を押さえながら、シンバとシャークの戦いを、目の見えないガムパスの為に実況する。
ガムパスはララの説明と、風の流れで、二人の戦いを感じ、
「・・・・・・負ける」
そう呟いた。
「え? 負ける?」
「シャークが負ける」
「シンバが勝つって事?」
「・・・・・・あぁ」
だが、ガムパスの顔が、余り嬉しそうではない。
何故なら、シャークが倒れ、サードニックスの頭である自分が、この状態。
それは、本当に空賊時代が、幕が閉じると言う事だ。
無敵のサードニックス、最強のアレキサンドライト。その2大勢力がなくなれば、空賊は終わるだろう。
ガムパスは走馬灯のように、若かりし頃を思い出す。
空賊時代を終わらせる、それは、ひとつの時代を終わらせると言う事。
シンバは若い。
だから、時代が変わろうとする事の不安も恐怖もない。
只、自分が守りたいものを守ろうとしているだけの、純粋無垢な子供。
オグルは飛行気乗りとして、リーファスを育て、飛行気乗りの時代を継がせた。
ガムパスも空賊として、シンバを育て、空賊時代を継がせようと考えていた。
だが、シンバがオグルの飛行機MONSTERに乗って現れた時、ガムパスは本当にオグルが蘇ったのだと思った。
瞬間、オグルとの日々が蘇り、若い頃にタイムスリップした――。
昔、若かった頃は、戦争兵士だった。
あの頃は、あの頃で、どん底だったなぁと。
その後は、賊となり、空に出て、空賊となった。
親友は飛行機乗りとなって、お互い、別の道を歩んだが、お互い、空は好きだったなぁと。
〝いいか、オヤジ、オイラは空が好きだ。だから空賊は・・・・・・サードニックスは、未来永劫不滅だからよ!!!!〟
そう言ったシンバを思い浮かべ、ガムパスは、あぁ、そうだなと、口の中で呟く。
空を愛する者として、空に出たのに――。
空が近すぎて、そんな気持ちさえ、すっかり失せていた。
あの頃の気持ちを取り戻せた今なら――・・・・・・
「今、シャークが跪いた! シンバが止めを・・・・・・刺さない・・・・・・」
「なに!?」
ララの説明に驚き、声を上げるガムパス。
「あ、喋っちゃ駄目!」
「シンバは止めを刺さないだと!? 何故だ!?」
「あ! 危ない!」
「何が!? 何が起きている!?」
ララの説明だけでは、ガムパスには、わからない。
風の流れも、シンバへ向いている筈なのに、目が見えない事の焦りが、うまく感じ取れなくて、ガムパスは体を起き上がらせようとするが、体が言う事を聞かない。
何が起きているか、それは――
シンバはシャークに止めを刺さず、背を向けた。
それはシャークを信じたからだ。
グレートソードを振り上げ、力任せに振り落とすと、船の床に、深く突き刺さった。
奥までガッチリと入ってしまったソード。
それを引き抜く時間など、与える訳がない。シンバは、今だとばかりに、シャークの喉目掛けた!! 目掛けたが・・・・・・シンバは寸止めし、
「お前の負けだ、シャーク。旗を降ろせ、サードニックスに跪け!」
そう言った。
シャークは、もう駄目だと悟り、悔しさの余り顔を歪めたが、
「・・・・・・いいだろう」
そう頷いた。
全てを取り戻す事ができたと、シンバは少し気を緩めた。
この戦いで、シンバは、シャークと言う男を知った。
シャークのプライドの高さ、強さ、卑劣さ、恐怖――
そうなりたいかは、別にして、憧れる程、圧倒感のある男だと思った。
シャークを信じ、背を向けたシンバに、シャークはニヤリと笑い、鉤腕を向けた。
そうなる事を予測しなかった訳じゃない。
だが、シンバはその予感を裏切るくらい、自分にも何かを感じてくれたのではないかと、そう願った。
シンバも、わかっている。
シャークが終われば、空賊時代が終わってしまう。
ガムパスの状態も、理解している。
だからこそ、シャークに、終わってほしくなかった――。
シャークは、シンバと戦い、結局、何も感じなかったのか、それとも、これがシャークの遣り方なのだろうか――。
それも含め、シンバは背を向けた。
死を覚悟した訳じゃない、でも、自分の命と、シャークの終わり、どちらが時代を変えるのか!!
――そんなの、バカのオイラでも、わかっちまうんだよ・・・・・・
願わくば、シャークが、サードニックスに跪いてくれる事――。
今、シャークの鉤腕から放たれる鉛の弾。
だが、弾は放たれず、シャークの鉤腕は破裂した。
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
と、物凄い悲鳴をあげるシャークと、爆発した音に、シンバは、驚いて振り向くと、シャークは破裂した左腕を抱えるようにし、悶え苦しんでいる。
あんなたに、背中から血が噴射する程、短剣をぶっ刺しても、悲鳴を上げなかったシャークが、痛みに床を転がっている。
更に振り向くと、船のデッキに腰を下ろし、煙の出た銃を持ったリーファスの姿。
シャークの鉤腕の穴に、弾を撃ち放ったのだろう、なんと言う命中力。
「シャーク、男同士の1対1の戦いに決着が着いたってのに、背を向ける相手に、攻撃するなんて、そんな卑怯な事は許せねぇなぁ」
なんでこの男はいい所だけ持って行くのだろうと、シンバは思う。
「リーファス、いつからいたんだよ」
「オレか? オレはずっと見てたさ、神に値する男だろ?」
「ハッ! よく言うよ、それでカッコイイつもりか?」
「あぁ、オレはかっこいい男だ。だが、オレよりも、モンスターで現れたお前は最高にかっこいい」
言いながら、リーファスはシンバの傍に行き、よくやったなと頭を撫でる。
撫でるなと、リーファスの手を払いながら、内心、リーファスが生きていて良かったと、ホッとする。
「リーフおじさん! ブライトは? 大丈夫なの?」
ララがそう叫ぶと、
「あぁ! 心配いらねぇ、ブライトも無事だ。今はオレのもう一人の弟子が操縦してるよ」
と、ララに大声で答える。
「もう一人って、テメェの弟子はカイン一人だろうが!」
シンバが、そう言うと同時に、ブライトに乗ったカインが飛行船より高く飛び、シンバに手を振る。うまく操縦できているようだが、只、この辺りをグルグル回っているだけのようだ。
今は雨も降っていないし、風も強くはないので、カイン一人でも大丈夫なのだろう。
カインに操縦させ、リーファスはこのアレキサンドライトの船に降り立ったと言う訳だ。
全て、これで終わりかと思った時――
「セルト! 貴様、どこへ行っていたんだ! 遅すぎるぞ!!」
と、シャークが怒鳴った。
だが、直ぐに、そのシャークの怒鳴り声は、悲鳴に変わった。
シャークの肩からグチャグチャになった左腕を蹴り倒し、跪いていたシャークが、再び、床に倒れ込むと、セルト、更に、その左肩辺りを踏み潰した。
「遅すぎるだと? こっちは計算外だよ、シャーク。お前がやられるのは予想通りだったが、まさか、シンバに大したダメージを与えないで、お前が大ダメージに終わるとはね。いつから、最強と言われたシャーク様は、こんな無様になったんだ? 鉤腕になってから、弱くなったんじゃねぇのか? 大体、グレートソードを片手だけで振り回すから、狙いが定まってねーんだよ。バカ丸出しで、棍棒振り回すかの如く、力任せに動けばいいと思いやがって。鉤腕に銃なんて仕込む暇があったら、両手で、自分の愛用の剣のコントロールくらい身につけとけ!! クソが!! まぁ、お前はこれで終わりだ。アレキサンドライトは、俺のもんだな」
「俺のもん・・・・・・?」
シンバが、そう聞き返すと、セルトはシンバを見て、
「当然だろ、雑魚の小猿にここまでやられて、賊の頭でいられる訳がない。アレキサンドライトのキャプテンは俺だよ。なぁ? シャーク、そうだろう? なんなら、お前、このまま殺してやろうか?」
そう言うと、シャークの左肩を思いっきり蹴りつけた。
シャークは、ぎゃああああという物凄い悲鳴を上げ、地べたをゴロゴロと転がる。
「賞金稼ぎのリーファス。だよな? それは別名か? 飛行機乗りの方がいいか?」
セルトは、そう言って、リーファスを見る。リーファスは、どちらでもと、肩を竦めた。
「今の所、俺は飛行機乗りに興味はねぇ。シャークは、空も地も手に入れたがっていたが、俺は、大地にも興味ねぇ。バカと違って、自分に手に余るもんくらい、わかるんでね。俺は空賊のトップになりてぇだけだ。その為には、サードニックスを落とさなければならない。それには、そこにいるシンバを倒す必要がある。ソイツは、サードニックスを背負ってく男だからな。俺とシンバは戦う理由があるんだ。邪魔はしてほしくない。決着がつけば、この飛行気乗りのエリアから撤退する。大地にも手は出さない。俺が空賊としてトップになったら、勿論、飛行機エリアに、空賊は手を出さないという約束も、全ての空賊に守らせよう」
「・・・・・・空賊の言う事は信用ならねぇなぁ」
「心配するな、俺はアレキサンドライトと言っても、シャークに育てられた訳じゃねぇ。シンバ同様、ガムパスの下で、同じ旗の下にいた男だ。信用する、しないは、シンバと一緒にいるアンタなら、シンバを見て、わかるだろう?」
「成る程な。シンバ同様、頑固で、負けん気強くて、ヤンチャそうだな。だが、シンバが勝てばどうなる?」
「どうもならない。サードニックスの天下で、ソイツが、空賊の頂点って訳だ。だが、そうはならない。俺が負ける事は絶対にないからな」
考え込むリーファスに、セルトは、ハハッと笑うと、
「いいだろう、これは殺し合いじゃない、只の喧嘩だ」
そう言って、
「俺はソイツを本気で叩き潰すが、命までは奪わねぇ。その代わり、俺が勝利したら、リーファス、アンタが責任持って、ソイツを引き取ってくれ」
と――。
それは願ったり叶ったりだが、勝っても負けても、随分とコチラの条件がいいなと思い、何か、企んでるのではないかと、リーファスは思う。
だが、断るとしても、後々、もっと厄介事になる可能性もある。だったら、話にのってみるのも、1つの手だなと、
「よし、いいだろう、ここまで来たら、決着をつけるべきだ」
そう言ったリーファスに、
「ま、待ってくれ、オイラはセルトと戦いたくない!」
と、うろたえるシンバ。
リーファスは、しゃがみ込み、シンバの目線に合わせ、
「セルトって言うのか、あの勝ち気な若造は」
そう聞いた。
「セルトに、オイラは勝てない。今はその時じゃない。絶対に!」
「どうした? お前らしくないな、何を怖がっているんだ?」
「セルトは、オイラのアニキだった。セルトに戦い方も教わった」
「そうか。だが、お前は、あのシャークさえ、殺さずに決着つけたんだ。アイツは、勝ち気な性格してるだけで、シャークよりも強くはない筈だ。大丈夫だろ」
「セルトはオイラの全てを理解しているんだ、オイラに勝ち目なんてない!」
「誰が勝てって言った?」
「え?」
「アイツは、お前を殺さないと言った。そして、勝っても負けても、ここを撤退すると言った。とりあえずは、それでいいじゃねぇか」
「・・・・・・」
無言で俯くシンバに、リーファスは、セルトを見る。
セルトの瞳は、強く、真っ直ぐで、信念が感じられる。
賊にしておくには、惜しいなと、だが、セルトの考えが、悪なのか正義なのかさえ、わからない。わからないからこそ、戦って、白黒付けるべきだなと、リーファスは、
「心配するな、本当にお前がヤバそうになったら、助けてやるさ。だがな、真剣にやれ。相手の気持ちを踏みにじるような戦い方はするな。簡単に白旗をあげるな。勝たなくてもいい、負けるな。それが、お前がアイツにしてやれる事だ。いいか、大事なモノは命をかけて守る。それが男だ。大事なもんは手放すな、ずっと握り締めてろ。 でも奪われて、それをヘラヘラ笑ってられる奴は男じゃねぇ! 奪われたもんは、取り戻して来い!」
と、シンバの背中をトンと叩いた。
シンバは背中を押され、一歩、前へと出る。
リーファスは、頑張れよと手を上げ、背を向けると、ララの元へ行く。
――取り戻して来いって・・・・・・?
――何を取り戻せって?
――別にセルトは何も奪っちゃいねぇけど・・・・・・?
チラッとセルトを見ると、
「話し合いは終わりか?」
と、セルトもシンバを見る。
「・・・・・・オイラ達、戦わなきゃならないのか?」
「俺と戦うと負けるから戦いたくないのか?」
そう言われたら身も蓋もない。
確かに負けるだろう。
だが、だから戦いたくない訳ではない。
なら、何故、戦いたくないのか、その理由を述べろと言われても、述べれない。
何故だろう。
わからない。
セルトはダガーを抜き、構える。
シンバは不本意だが、右手にジャマダハル、左手にマインゴーシュを構えた。
セルトの優勢で、押されるシンバ。
結局、後退しながら、セルトに動きを読まれ、逃げてばかり。
何故、戦わなければならないのか。
どうして、大好きな人を諦めなければならないのか。
そう思った瞬間、シンバは気付いた。
諦めたくないから戦うのだと!
セルトを取り戻したい!
サードニックスに、セルトを戻したい!
セルトはアレキサンドライトなどと名乗る男じゃない!
そう気付いた瞬間、この戦いは負けられないと、シンバの動きに迷いがなくなった。
シンバが、一瞬だが、セルトの動きを捉え、マインゴーシュを突き立てる。
「いい動きになってきたな」
と、呟くリーファス。
「リーフおじさん、どうして止めなかったの? シンバ、あの人と戦いたくないのに」
「男ってのは、戦いたくなくても、戦わなきゃいけねぇ時があるんだよ」
「シンバが負けたらどうするの?」
「飛行機乗りになるんじゃねぇか?」
「シンバが勝ったら?」
「・・・・・・飛行機乗りになるんじゃねぇか?」
なにそれと、ララは呆れる
「おい、おいそこの! 男!」
「ん? オレの事か?」
と、振り向くと、ララを押し退け、ガムパスがリーファスに手を伸ばしている。
「おいおい、無茶するなよ」
「儂を起こせ」
「いや、だから、無茶するなって」
「いいから起こせ!!!!」
その迫力に、リーファスはフゥッと深い溜息。
ガムパス・サードニックス。
本当にこんな男がいるんだなと、自分よりカッコイイ男が、後何人いるんだ?と、リーファスは嫌になる。
ガムパスが若い頃に、出会っていれば、リーファスの運命は変わっていただろう。
実際に憧れだった存在で、夢にまで見た相手。
それに年老いてもカッコよすぎる。
オグル同様、ガムパスも、年寄りの癖に、自分の命を投げ出しても、自分の信念を貫く男。
今、深い傷を負っても、立ち上がろうとしているガムパスの事など知らずに、シンバとセルトは短剣を交えている。
互角かと思われるスピード。
いや、小さいシンバの方が風の抵抗がない分、一瞬だけ速い。
同等なチカラ。
いや、二刀流のシンバの方が、両手に入るチカラの分、大きい。
だが、経験値はセルトの方が断然上。
そして戦闘法はセルトの方が知力が高い分、攻撃を繰り出すのも速い。
なにより、シンバの動きは読まれている。
だがシンバは諦めない。
どうしてもセルトをサードニックスへ戻したい。
また一緒にサードニックスを背負いたい!
叶わぬ夢だなんて思わない!
取り戻したい!
セルトを――!
シンバのラブラドライトアイが光る。
風が見える。
セルトの次の攻撃が見える!
シンバはマインゴーシュで、セルトのダガーを弾き飛ばした。
そして、ジャマダハルで、セルトに狙いをつけた瞬間、信じられない大きなチカラがシンバを襲い、遠くに弾き飛ばされた!
セルトもシンバ同様、遠くに飛ばされ、二人、船のデッキの上、ぶち当たり、バウンドし、そのままズザーッと引きずるように、滑り込んだ。
何が起こったのか、わからず、クラクラする頭を振りながら、見ると――・・・・・・
「いい加減にしやげれ、テメェ等ぁ!!」
と、血だらけのガムパスがドーンッと立っている。
シンバもセルトも、ガムパスの大きな手で、平手打ちを食らったのだ。
「オヤジ?」
と、シンバとセルトは、同時に、驚きの声を上げる。
セルトも思わず〝オヤジ〟と呼んでしまっている。
「セルト、テメェ、いつ儂がテメェを破門にした? テメェはまだサードニックスだ! 儂の右腕だろうが!! そして、何れサードニックスを背負う男だろうが!! 下らん喧嘩をしとる暇があったら、サードニックスの旗を取り戻せ!! そしてサードニックスの船に、儂と一緒に戻るんだ!!!!」
「・・・・・・俺がサードニックスを背負う?」
「そうだ」
「それはシンバだろう?」
「シンバは破門した」
「ちょっ!? ちょっと待てよ、オヤジ! あれは気弱になっただけの戯言だろう? 本気じゃないよな? オイラ、シャークにだって勝ったんだぞ?」
「だからどうした。儂も、お前くらい若ければ、シャークの一人や二人、捻り潰せる」
「いや、それはそうかもだけど、オイラ、破門なんて納得いかねぇよ! なんでだよ、オイラの何がいけなかったんだよ!」
「シンバ、お前はもう賊から放れて、自由に生きろ。空の好きなお前だ、次の空へ行け」
「次の空ってなんだよ!?」
「そうだな、お前は飛行機に乗って、空を飛べ。あのオグルの飛行機を操縦できるなら、そうするべきだ」
「何言ってんだよ、言ったろ? 飛行機に乗って現れたのは、別に飛行機乗りの味方したい訳じゃねぇって! オイラは、飛行機乗りになりたい訳でもないんだって! サードニックスとして空の世界にいたいんだよ! 自由に生きていいなら、オイラをサードニックスとして、オヤジと一緒にいさせてくれよ!」
「それは駄目だ。お前は儂の手の中に収まるような奴じゃねぇ。それはずっと感じていたが、モンスターに乗って来たお前を見て、儂は更に感じた。お前はもっと大空へ向かうべきだ。お前は飛び立つべきなんだ。もっと光ある方へ!」
「なんだよ、それ、わかんねぇよ! オイラが全部! 全部、取り戻したのに!?」
「そうだな・・・・・・全部、お前が取り戻してくれたが、お前はいらねぇ」
「嫌だ!!!! オイラは一生、オヤジの傍にいるんだ! オイラはシンバ・サードニックスなんだ! オヤジ、いつものように、呼んでくれよ、オイラを!」
「今日から、お前をシンバ・サードニックスと呼ぶ者は誰もいねぇ。新たな名を、自分で付けろ」
シンバは、シワクチャの顔をして、涙を堪える。
セルトは黙っていたが、暫くして、その場を無言で立ち去った。
シンバは、涙を堪えるのに必死で、身動きとれずに、只、立ち尽くす。
「おい、我慢するな、こういう時は、泣くべきだ。泣いても、ガムパスにはわかんねぇよ、目が見えねぇからな」
と、リーファスが大声で、そう言った。
その声がシンバの体を突き抜けると、我慢していた涙が溢れ出た。
声を出して、わんわんと、泣き散らかした。
ララも、シンバの涙にもらい泣き。
今、どこかへ行って来たセルトが戻ってきた。
その手にはサードニックスの旗が掲げられている。
バタバタと風で揺れる旗。
ガムパスが、
「この風の音は儂の旗だな」
と、本当に嬉しそうな表情をした。
シンバも、涙を流しながら、サードニックスの旗を見つめる。
その旗の下に、もうシンバは戻れない――。
「おい、儂が、お前を捨てたと思うな? お前はサードニックスを旅立っただけだ。だから、いつだって、儂の旗の下、遊びに来い」
ガムパスはそう言うと、バターンと後ろへ引っ繰り返り倒れた。
無茶しすぎだとリーファスは額を押さえる。
今更、ジェイドの軍が、飛行機でやって来た。
「遅すぎだ」
そう呟くシンバに、
「しょうがねぇだろ、ずっと引っ込んでた空軍だ。直ぐに出動準備なんてできねぇだろ。でも、ま、来てくれたんだ、後の片付けは任せるか」
と、リーファスは、痛さで、途中から気絶したシャークを見る。
シンバは鼻を啜り、涙を腕で拭くと、
「リーファス、オイラに飛行機の乗り方をちゃんと教えろ」
そう言った。
「なに?」
「オイラに、飛行気乗りの技術を教えてくれって言ったんだよ。あのミッドナイトブルーの飛行機と、決着つけたいからさ」
「そうか。あの飛行機、お前にやるよ」
「いいのか?」
「あぁ、モンスターをここまで乗りこなされたら、やるしかないだろ」
「自動操縦で来たんだぞ?」
「それでもすげぇ事なんだよ」
と、リーファスはシンバの頭をグシャグシャに掻いた。
シンバはやめろと笑う。
いつの間にか、歯を出して笑うシンバがいる。
本当のシンバ自身を、取り戻したのかもしれない。
もうその名は名乗れないが――。
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