第15話 少年編14

春子の方も少し気持ちが落ち着いたみたいだ。


沖での血の気を失った妻の顔は、恋人時代にさかのぼっても見たことがない。


目の前でズッコケるというマジボケも役にたったようでなによりだ。


しかし、全力で泳いだせいか疲れや眠気より正直腹が減った。


「何か、ホッとしたら、腹減ったなあ?」


「はい?」


「何それ?」


「こんな時によく食べれるねぇ!」


「泳いで運動したからなぁ。」


「何があっても、腹だけはへるねん!」


と隆一が半笑いでお腹をたたきながら言うと、


「腹へるねん!腹へるねん!」


と隆司がモノマネをする。


「もうー!」


「マネしてるやんか!」


と春子はあきれ顔。


何とも緊張感のない家族だ。

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