第16話 少年編15

春子はレジャーシートに座り、仕方なしにおにぎりとおかずの入った弁当箱を取り出す。


すかさず隆一が座りながらおにぎりを手にとりほおばる。


「もー!手ぐらい拭いてよ~!」


と春子に叱られる。


「だって腹減って死にそうやねんもん。」


「なあ~隆司。」


と隆一が同意を求めながら振り向くと、そこには昆布の入ったおにぎりを頬張りながら、もう片方の手で玉子焼きを持っている食いしん坊の我が子がいる。


それを見て隆一は、


「おい!」


と思わずツッコミを入れる。


隆司はキョトンとした顔で、ご飯粒を口元と頬につけてこちらを見ている。


その光景を見て、春子と一緒に笑い転げる。


それを見て、隆司もニッコリと卵焼きを頬張りながら微笑む。


さっきの事件のことなど微塵も感じさせない。


前田家にウザいぐらいの明るさが戻ったみたいだ。


これがこの家族の良いところでもあり、失敗を軽視してしまう悪いところでもある。


ただこの度の事は失敗というより直接命に関わる事なので、さすがの前田家でも、このあと誰も海に入ろうとはしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る